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2014.06.26

電子出版市場1000億円を突破、2018年には3000億円超に急成長〜KADOKAWA・ドワンゴ経営統合に象徴されるコンテンツ業界の潮目

皆さんこんにちは井之上 喬です。

東京の電車を日々の通勤、通学で利用すると、日本人にとっては当たり前になっていますが、海外の皆さんからすると奇妙な光景に遭遇します。そうです車内では、10人中、ざっと7?8人の方がスマートフォン(スマホ)やタブレットを使い当たり前にさまざまな情報に接しています。

一昔前はどうだったでしょうか?人ごみの中、新聞を窮屈そうに折りながら紙面に目を通したり、小さくなって雑誌を読むのが当たり前でした。ここ数年のデジタル情報端末の普及には目を見張るものがあるとともに、情報収集の方法もすっかり様変わりした感があります。

電子出版市場と出版市場の明暗

6月24日の日本経済新聞には「電子出版1000億円突破 昨年度 コミックが市場けん引」との見出しの記事がありました。

それによるとインプレスビジネスメディアの調査では、2013年度の電子書籍、電子雑誌を合計した電子出版市場は、前年度比約32%増で初めて1000億円を突破し1013億円となったそうです。

特にコミックの伸びが市場をけん引したとのこと。さらに調査では2018年度には電子出版市場が3000億円超に急成長すると予測しています。

スマホや電子書籍専用端末などの普及が、引き続き電子出版市場の成長を支えていくと予測しています。そういえば、有隣堂、三省堂などの一部書店では電子書籍の店頭販売を実験的に始めた、と言う記事も最近ありました。

お客は店頭のプリペイドカードを購入、カードの裏にはスマホで読み取って電子書店サイトに接続するためのQRコードと暗証番号が印字してあるそうです。どこかの会社のサービスに似ていますね。

電子出版市場の急成長に対し出版業界は構造不況業種と言われて久しいですが、日本出版販売調べでは2012年の出版社3676社の総売上は2兆312億円で、この12年間で4割近くも売上が減少。

出版社数は約4000社と言われてきており出版社数も漸減していますが、それ以上に売上が大幅に落ち込んでいるのがわかります。

このような電子出版市場の急成長と出版市場の縮小が続くなか、今年4月に改正著作権法が国会で成立、2015年1月1日に施行されることになりました。

改正の大きなポイントは急拡大する電子出版市場で急増する海賊版対策で、これまで紙の出版物にしかなかった出版権を電子書籍に対応した出版権の整備を行うこととし、作家だけでなく出版権の設定を受けた出版社も差し止め請求できるようになります。これにより海賊版を減らすとともに、電子出版市場の健全な成長と普及を促すのを大きな狙いにしています。

ちなみにインターネット上の海賊版被害は日本書籍出版協会(書協)などの推計によると、2011年は少なくとも270億円、このうちコミックは224億円。

改正著作権法は、電子書籍にも出版権を設定できるとする一方で出版の義務として「原稿の引き渡しを受けてから6カ月以内に出版、またはインターネットによる電子出版を行う」と定めています。つまり出版社は、紙の出版、CD-ROMなど記録媒体による出版、そしてインターネットによる電子書籍を手掛けなければならなくなります。

場合によっては紙の出版はK社、CD-ROMはS社、電子書籍はR社と言う形もあり得ますが、作家が紙もCD-ROMも電子書籍にも対応できる出版社から本を出すことを望むのは明らかで、出版業界の再編が一気に進むのではとみる業界関係者も多いようです。

改正著作権法が成立した4月25日、中小出版社で作る日本出版社協議会(出版協)は、声明を発表しています。その中には「紙媒体と電子媒体の出版権が、出版者に一体的に付与されていないため、アマゾンなどの巨大な電子配信業者によって電子出版市場が支配される道を開いた」など、日本の出版文化を防衛するためにも見直しが必要と政府に要求しています。

世界のコンテンツ流通ビジネスに挑む

このような大きな流れのなか、5月に出版大手のKADOKAWAと動画配信大手ドワンゴが10月に経営統合することを発表し、6月21日に行われたKADOKAWAの株主総会ではドワンゴとの経営統合に関する議案が承認されました。

統合による持ち株会社KADOKAWA・DWANGO(角川・ドワンゴ)の社長に就任するKADOKAWAの佐藤相談役は「両社の強みを活かし、世界に日本のコンテンツを発信していく」と抱負を述べた、とのことです。

KADOKAWAは書籍、映画のイメージが強い会社ですが、出版社のM&Aや若者向けのゲーム制作、アニメ、ライトノベルなどにも積極的に取り組んでいます。

一方のドワンゴは、2007年に開始した「ニコニコ動画」に生放送機能やイベントの融合など新しいサービスを次々に導入、約4000万人が利用する国内最大級の動画サイトを運営しているのはご存じのとおりです。

以前ドワンゴの川上会長とお会いしたことがありますが、会話の中、「ITで先を見通す鋭敏な感性と洞察力を持ち合わせた人」と強い印象を持ちました。川上さんがこのプロジェクトをどのように牽引していくのか今から楽しみです。

両社の統合により新会社は、サブカルチャーを中心にコンテンツを内製しながら、自前のコンテンツ流通基盤で供給する手法を考えており、5月の記者会見でKADOKAWAの角川歴彦会長が強調した「日の丸プラットフォーム」を通じ、世界市場でグーグルなどに対抗していくことになりそうです。

アマゾン、グーグルなどの世界の巨人に比べると小さな存在かもしれませんが、チャレンジをいとわない企業文化を持つ両社の統合は、単にクール・ジャパンの推進と言った次元ではない日本の優れたさまざまなコンテンツを世界に向けて発信できる大きなきっかけになるのではとワクワクしながら期待しています。

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