皆さんこんにちは、井之上 喬です。
国内主要大学の学長、理事長を対象に日本経済新聞社が実施したアンケート調査では、世界で活躍できるグローバル人材の育成に大学が本腰を入れている様子が強く窺える結果となっています。
回答者の半数近くが10年後に学内からの海外留学生数が3割以上増えると予想していることが分かりました。一方で海外からの留学生についても同様に回答者の3分の1が3割以上の増加を見込む結果となっています。
2010年の日本から海外への留学生数(大学・大学院)は景気低迷に伴う家計の悪化などの影響により、ピークの04年(82,945名)に比べ3割減の約5万8000名まで落ち込んでいます。
アジア各国から米国の大学への留学者数(出所:Institute of International Education, 2008/2009)を例にとると日本の29,264名に対して韓国が75,065名、中国が98,235名で最大はインドの103,260名となっています。
海外留学経験をもつ人材は、海外市場の開拓を急ぐ産業界を中心に採用ニーズが高まっており、今後、世界に開かれた教育を巡る競争が大学間で激化しそうです。
今回のブログでは、世界の大学に関するランキングを発表しているイギリスの教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』からのデータを2つほど紹介します。
東大がアジア首位守る
『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』から今年の「世界大学ランキング」が10月2日に発表されました。
このランキングは、大学の研究論文の引用頻度や教員スタッフ1人当たりの学生数など、13の要素を基に順位づけを行うものです。
東京大が23位(昨年27位)と昨年から4つ順位を上げてアジア首位の座を守りました。上位200校に入った日本の大学は5校で昨年と同数でした。
東大以外の日本の4校は、京都大が52位(昨年54位)、東京工業大が125位(同128位)、大阪大が144位(同147位)、東北大が150位(同137位)。
同誌は、ランクインした日本の5校のうち東北大を除く4校が昨年より順位を上げていることに触れ「日本の大学の国際的地位を高めようとする政府の取り組みの成果を示している」と分析しています。
米カリフォルニア工科大が3年連続でトップ。2位は英オックスフォード大と米ハーバード大が同順位で続いています。米スタンフォード大が4位となるなど、上位10校は全て米国と英国の大学だったことが特長的でした。
アジアでは26位にシンガポール国立大、43位に香港大、44位に韓国のソウル大、45位に中国の北京大がランキングされました。特に東アジアで順位を上げる大学が目立つ一方、欧州の大学の多くが苦戦しており、同誌は「欧米からアジアへの勢力シフトの傾向は続いている」と結んでいます。
グローバル企業CEOの出身大学
もう一つは、『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』の大手グローバル企業トップの高等教育機関における出身者数のランキングで、同誌初の試みとなります(9月5日発表)。
このランキングは、米経済誌フォーチュンの世界企業500社に入っている企業の最高経営責任者(CEO)が卒業した大学や学位を取得した大学などを調査し、ランキングしたもの。また、経営する企業の売り上げ規模なども加味されています。
1位は25人のCEOが卒業した米ハーバード大。東大が2位の13人で続き、アジアでトップとなりました。日本からは慶応大(9位)、京都大(18位)、早稲田大(20位)、中央大(27位)、一橋大(43位)など9校がベスト100校にランクインしています。
文部科学省は、グローバル人材育成の体制を強化するため、国公私立大学30校を「スーパーグローバル大学」に指定し、重点的に支援する方針を固めています。
英語による授業の拡大や外国人教員比率の向上を財政面で支援し、「世界大学ランキング」上位100位内に10校以上が入ることを目指しているようです。現在100以内に入っているのは、東大(23位)と京都大(52位)のわずか2校。
国が予算を付けて英才教育を主導することに反対する意見も聞かれます。私は、これまでの教育分野におけるグローバル化の遅れを早急に挽回して、先進諸国や新興国と伍していくためには止むを得ない施策ではないかと思っています。
また、「スーパーグローバル大学」のカリキュラムには、「個」を強化し、「人間力」を高めるばかりか、さまざまな相手と良好な関係構築づくりを行うリレーションシップ・マネジメント、つまり目的を最短距離で達成する手法であるパブリック・リレーションズ(PR)の導入が重要ではないかと考えます。