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2013.07.25

第23回参院選で自民圧勝。〜安倍政権に求められる「自己修正」能力

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

第23回参院選は、21日(日)投票で即日開票されました。周知の通り自民党は、現行制度で過去最多の65議席(改選34議席)を得る圧勝で、公明党とあわせた与党で非改選を含めて参院の過半数(122議席)を超える135議席を確保し、「ねじれ国会」は解消されました。

民主党は改選44議席の半数にも届かず、過去最低の17議席にとどまりました。また、日本維新の会やみんなの党は伸び悩みました。

総務省は22日午前、参院選の投票率を発表。選挙区、比例代表ともに52.61%で確定しています。いずれも2010年の前回を5.31ポイント下回る低調な結果で、選挙区では1995年の44.52%、92年の50.72%に次いで過去3番目に低い水準にとどまったとしています。

また、今回の参院選からインターネットを活用した選挙運動(ネット選挙)が解禁となり、その活用法がさまざまな話題を呼びました。共同通信社の出口調査によると、「ネット情報を参考にした」は10.2%と全体的に低調であったものの、20代においては23.9%と若者に対するネット選挙の大きな影響力が窺えました。

「自己修正」の力を

参院選後の政局を伝える各紙の多様な報道の中で、私の目を引いたのは22日の朝日新聞(朝刊2面)で、「自己修正の力を」の見出しがついた曽我政治部長の署名入りコラムでした。

「私たちがこの朝、目撃することになったのは、戦後政治史にも稀(まれ)な一極集中の権力である。」に始まるこのコラムでは、安倍首相に数の力を正しく使う技術ばかりでなく、権力の行き過ぎや錯誤に思い至る自己修正の能力を研ぎ澄ますことが条件となるだろうと述べています。

そして、過去の政権交代の歴史を踏まえ、「数の力をたのんで政権党が緊張感を失えば、消費増税の先送りや野放図な積極予算を願う空気が広がりかねない。原発の再稼働や憲法改正、あるいは強硬外交を短兵急に進める動きも出てくるかもしれない。」と述べています。

また、「それを制御し、少数意見に耳を傾ける度量を示すことで、この四半世紀の政治不信の歴史を変えていくことができるかどうか。私たち朝日新聞もその成否に目を凝らしたい。」と結んでいます。

今回の選挙で圧勝した「安倍政権」が政治不信の歴史を変えていくことができるかどうか、その成否をウォッチするのはメディアだけでなく、世論でもある私たち有権者の責任でもあるはずです。

正しい自己修正は倫理観がベース

私は、これまで何回もブログの中で、パブリック・リレーションズ(PR)の定義について「個人や組織体が最短距離で目的を達成する、『倫理観』に支えられた『自己修正』と『双方向性コミュニケーション』をベースとしたリレーションズ(関係構築)活動である」と記してきました。

ここでいう「倫理観」は、最大多数のための最大幸福を提唱する「功利主義」と少数(マイノリティ)に手を差し伸べる「義務論」とが補完する形で成り立つ概念です。

つまり、数の力が強大になった場合に義務論的思考で抑制することの重要性を説いています。倫理観が正しく働かない環境では、双方向性コミュニケーションも成立しなくなり、その結果本来の自己修正も機能不全となります。

正しい自己修正は倫理観の働く双方向性環境の中で有効となり、相互理解のない意見の衝突は、自らの修正に至らず、国民や国家間の不必要な緊張の増長に繋がりかねません。

政権を取り巻くさまざまなステークホルダーとの良好な関係構築づくりを通してリレーションシップ・マネジメントが行なわなければなりません。

一極集中の権力を手にした安倍首相を諌めるキーワードとして、朝日新聞の紙面で「自己修正の能力」の重要性が取り上げられたことは喜ばしいことですが、国民だけでなく、諸外国との望ましい関係性を構築するためには、パブリック・リレーションズの機能の活用が鍵となるはずです。

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