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2013.03.04

今日の一句「雛祭り、『なでしこ銘柄』に泣き笑い」〜国を挙げて女性の活躍の場を作ろう

皆さんこんにちは井之上 喬です。
この原稿を書いている今日は3月3日の「雛祭り(ひなまつり)」。古くから女の子のすこやかな成長を祈る節句の年中行事として身近な存在となっています。

今年の冬は例年にも増して雪が多いようですが、お雛さまのあと1カ月も過ぎれば桜の季節、春はもう目の前です。

なでしこ銘柄トップ17社は?

雛祭りを前にした2月26日、経済産業省は東京証券取引所と共同で「なでしこ銘柄」を初めて選定し発表しました。

なでしこ銘柄とは、東証1部に上場している企業を対象に業種ごとに、女性が働き続けるための環境整備を含め、女性人材の活用を積極的に進めている企業を選定しています。

選定の方法は、女性のキャリア支援、仕事と家庭の両立支援の2つの側面からスコアリングを行い約70社を選び、さらに株主資本利益率(ROE)などの財務面も加味し評価しているとのこと。スコアリングは日本総合研究所が実施していますが、スコア自体は非公開となっています。

それではなでしこ銘柄17社を紹介しましょう。

マルハニチロホールディングス(水産・農林業)、積水ハウス(建設業)、アサヒグループホールディングス(食料品)、東レ(繊維製品)、花王(化学)、住友ゴム工業(ゴム製品)、旭硝子(ガラス・土石製品)、大同特殊鋼(鉄鋼)、住友金属鉱山(非鉄金属)、ダイキン工業(機械)、日産自動車(輸送用機器)、ニコン(精密機械)、東京急行電鉄(陸運業)、KDDI(情報・通信業)、豊田通商(卸売業)、ファーストリテイリング(小売業)、三井住友ファイナンシャルグループ(銀行業)の17社です。

皆さんはこの顔触れを見てどのように感じられますか。ある程度限定された範囲での業種ごとの評価であり、スコアも非公開なので、「あの企業は入っていないの?あの会社よりうちの会社の方が進んでいるよ?」と感じる方もいらっしゃるではないでしょうか。

ご意見はごもっともですが、経産省のニュース・リリースにも書いてあるように「女性の活用は、ダイバーシティ経営を進めるうえでの「試金石」として、企業のイノベーション促進、グローバルでの競争力強化に貢献すると考えられています」。

女性の活用が株価を上げる?

さらに「本取組は、女性活躍を推進する企業のすそ野を広げるという点で、経済産業省が今年度より進めている『ダイバーシティ経営企業100選』との相乗効果が期待されています」とのこと。

ダイバーシティ経営企業100選の表彰式は3月22日に予定されていますが、遅きに失したとも思える一連の取り組みが掛け声倒れになることなく、継続性をもって実施され日本企業の間に定着することを望みたいものです。

なでしこ銘柄に関連した報道で、パブリック・リレーションズ(PR)的に見てちょっと面白かった2つをご紹介します。

2月27日の日本経済新聞の朝刊(26日の電子版にも同様の記事)の『「なでしこ銘柄」にファストリなど17社』と2月28日の東洋経済オンライン『「なでしこ銘柄」笑った会社、泣いた会社』です。

日本経済新聞の記事は、17社の2011年末と比較した株価騰落率の順に掲載しています。それによると1位がファーストリテイリングの78.3%、2位が三井住友ファイナンシャルグループの72.1%、3位が豊田通商の69.4%と続いており、17社のうち11社が日経平均株価上昇率34.8%を上回っており、なでしこ銘柄の市場の評価は高いとしています。

1位のユニクロがそうですが、女性の積極的な登用が新たな商品戦略などを通し結果として企業の収益向上に貢献していることを証明しています。
一方の東洋経済オンラインですが、「意外な顔ぶれとなった」で記事が始まっています。

その理由として「異業種のものを比較することは難しいとして、1業種1銘柄というシビアな選択となっている。この結果、女性の登用に積極的とされる業種で有名企業が次々と落選する結果となった一方で、意外な特殊鋼や非鉄銘柄が入るサプライズが生まれた」とし、東洋経済が実施しているCRS企業調査との比較をしています。

それによると女性役員数のランキングを参考に落選したサプライズ企業としてローソン、資生堂、ブリヂストンなどの名を挙げています。

ハイレベルな戦いになったと思われるのが小売りセクターで、ローソンとファーストリテイリングの差はROEでは、と分析していました。

個人的には17社の中に、三井住友ファイナンシャルグループが入っていることに納得感を持っています。これまで京都大学や日経新聞主催のシンポジウム、そして私の早稲田大学での授業などでご一緒させていただいた三井住友銀行会長の北山さんが、ことあるごとに力説しておられたのが外国人登用と女性登用の重要性についてだったからです。

いずれにしても日本企業成長のキーワードの1つがダイバーシティ。その中でも最重要課題が女性の登用であることはこのブログでも再三述べてきました。
女性幹部が極端に少ない日本企業の特殊性を変え、世界標準に早く到達するための政策の実行を政府に強く求めたいと思います。

お嬢さまイメージが強い雛祭りが、逆の意味で女性を特別視することを助長させるものではないことを願います。

今回の「なでしこ銘柄」キャンペーンのように、パブリック・リレーションズの有効な手法を使い、国民的な理解の向上を図ることも車の両輪として重要なことだと思います。

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