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2012.11.05

人類に警鐘を鳴らす「2つの時計」〜福島原発事故が時間を進ませる要因に

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

2012年12月22日に世界が終末を迎えるという噂をご存知だったでしょうか。欧米などでは、マヤ文明の暦(こよみ)が今年の12月22日で終わっていることを根拠に、「2012年人類滅亡説」がまことしやかに流布されていました。

中米グアテマラにある9世紀初期のマヤ文明遺跡の壁画に、月や惑星の周期を計算したマヤ最古のカレンダーがあるのを米ボストン大学などの研究チームが発見。これを精査した結果、「終末を示すような計算結果は見当たらなかった」と今年5月11日付の米科学誌「サイエンス」に同チームからのリポートが掲載され、噂はサッと消えたようです。

世界経済の崩壊や地震、台風、ゲリラ豪雨など世界規模の異常気象などさまざまな問題が噴出している現代社会での危機感が、こうした噂を生んだのかもしれません。

「環境危機時計」は22分進んで9時23分

環境破壊による人類滅亡の時刻を12時とすると、今は9時23分。09年から3年連続で戻っていた「環境危機時計」の時刻が、再び進み始め、昨年の9時1分から22分進んだことになります。

環境危機を示す時刻は零時1分から12時の範囲で示され、時間が進むほど不安度が高まります。不安度の目安は、「ほとんど不安はない」のが0:01?3:00、「少し不安」が3:01-6:00、「かなり不安」が6:01?9:00で「極めて不安」が9:01?12:00。したがって現時点は、「極めて不安」な領域に入っていることになります。

この「環境危機時計」(the Environmental Doomsday Clock)は旭硝子財団が1992年から、各国の政府関係者や研究者など世界の有識者に地球環境の悪化にともなう人類存続の危機の程度を時計の針に例えてアンケートを行い、この結果を集計し毎年秋に報告書をまとめ発表しています。今年は88カ国1096人からの回答をもとに報告書が作成されました。

危機を示す時刻が最悪だったのは08年の9時33分。今年の9時23分は、08年、07年(9時31分)に次いで過去3番目に悪い時刻となりました。その要因として、気候変動が最も多く21%を占め、次いで水資源が12%、環境汚染が11%、そして生物多様性の減少と人口増加がそれぞれ9%の順となっています。

今回は、東電福島第一原発事故後の原子力発電に対する意識についても聞いています。原発については67%が「反対する市民が多くなった」と回答。

かつて原発は、発電する際に二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化問題に対してプラスに作用するという認識がありました。しかし、福島第一原発の事故から1年が経っても放射能による環境汚染の懸念は解消しておらず、原発への見方が厳しくなっています。

もうひとつ、皆さんもよくご存知の「時計」を紹介しましょう。

「世界終末時計」は1分進んで残り5分

「世界終末時計」(Doomsday clock)は、人類の滅亡(終末)を午前零時に設定し、その終末までの残り時間を「零時まであと何分」という形で象徴的に示す時計です。

毎年1月の上旬にこの時計を管理する科学誌『Bulletin of the Atomic Scientists』(BAS)から午前零時までの残り時間が発表されます。実際に分針を動かすのは、ノーベル賞受賞者を含めた科学者の協議に委ねられているそうです。

同誌は1945年、マンハッタン計画で原子爆弾の開発に参加した米シカゴ大の科学者らが創刊。2年後に終末時計がつくられ、当時は午前零時までの残り7分だったそうです。

今年の発表では、核兵器拡散の危険性が増大したことや、福島原発事故などを背景に時計の分針が1分進められ、滅亡時刻とされる午前零時まで残り5分となりました。

これまで滅亡時刻とされる午前零時に最も近づいたのが、アメリカとソ連が水爆実験に成功した1953年で分針は2分前を示しました。

逆に最も遠のいたのが、ソビエト連邦崩壊とユーゴスラビア社会主義連邦共和国解体が続いた1991年で分針は17分前に。

今年は地球環境問題に対して国際的な関心が高まった1992年の国連環境開発会議(地球サミット)から20年の節目の年にあたります。ちなみに「環境危機時計」はこの年に生まれています。

「世界終末時計」は1947年から65年の長きにわたって終末への時を刻んでいます。

人類存続の危機にかかわるこれら「2つの時計」が、世界に伝えようとしているメッセージについて、私たちパブリック・リレーションズ(PR)の実務家を含め、各国政府機関やNPO、企業はもっともっと認識すべきだと、いまさらながらに強く感じています。

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