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2025.12.30
激動の2025年を振り返る
〜これからも「パブリックリレーションズを通じて、平和で希望のある社会づくりをめざします」
皆さんこんにちは井之上喬です。
早いもので2025年も残すところあとわずかになりました。
皆さんにとって2025年はどんな一年だったでしょうか。
2025年を表す漢字は「熊」でした。秋田県など東北地方を中心に、かつてないほど多くの熊の出没と人身被害があったことを改めて思い出します。亡くなられた方や怪我をされた方々に、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。
少子高齢化や温暖化が、里山の環境維持や自然の生態系に大きな影響を及ぼしているのが一因ではないかと気をもんでいます。
2025年の世界を振り返って
2025年を私なりにまとめてみますと、政治的には米国第2期トランプ政権発足にともなう国際秩序の変動が加速した年でした。また、経済的にはトランプ関税問題などの不確実性の中で成長は緩やかになり、テクノロジー分野では生成AIや量子コンピューター、ヒューマノイド(人間型)ロボットなどが着実な進化を遂げました。
世界の政治情勢はどうだったでしょうか。戦後80年が過ぎ、国際的なリーダーシップの欠如と国家間の亀裂、各国内部の分断がますます進んだ年でした。
米国ではトランプ大統領の第2次政権が始まり、移民への厳しい対応や関税の引き上げといったトランプ流のディール外交を展開しています。その結果、戦後続いてきた米国主導の国際秩序は不安定化し、リーダー不在の混沌とした世界が広がっています。
個人的には、政治の世界で損得勘定重視のディール手法を大っぴらに振りかざし、企業のオーナー社長のように独断的な政策決定をしたり、あるいは突然に変更したりと、民主主義の根幹に関わるような政治に違和感を感じています。
国や民族の対立では、ウクライナの侵攻やガザの紛争は長期化し、和平への道も難航しています。さらに、米中関係に象徴される大国間の対立も顕在化しました。
日本に目を移しましょう。第2次世界大戦の終戦80年に加え、昭和100年となる節目の今年、日本史上初の女性首相となる高市早苗内閣が10月に発足しました。画期的ではありますが、その船出は、国会での台湾有事に関する発言で日中関係が悪化するなど、不安材料を抱えたものとなりました。
経済面では、日本の名目GDPは世界第4位ながら、5年後にはインドやイギリスに抜かれ6位に転落するとの予測も発表されました。「失われた30年の検証」なしには、人口減少や社会インフラ・システムの老朽化問題、社会保障費の増大といった構造的な課題が引き続き、経済の重荷となることが懸念されています。
注目はテクノロジー分野です。ChatGPTの登場から3年弱で生成AIは飛躍的な進化を遂げ、その勢いは止まることなく続いています。AIはビジネスや社会構造に大きな変革をもたらし、企業の競争力や働き方が大きく変化する1年になりました。
総じて、2025年は政治的、経済的な課題に直面しつつも、生成AIに象徴されるテクノロジーの力強い進歩が社会を前進させた、変化の大きい一年だったと思います。
東奔西走、パブリックリレーションズと私の活動
2025年は井之上パブリックリレーションズ創立55周年の節目の年であり、私自身にとっても、公私ともに新たな挑戦と多くの素晴らしい出会いに恵まれた一年でした。四季折々の活動と、そこで感じた想いを振り返ります。
【1月】 原点回帰と始動
14年目を迎えた京都大学経営管理大学院でのパブリックリレーションズ最終講義に向け、年明けの仕事始めと同時に西日本行脚を始めました。福岡を皮切りに愛媛県の母の郷里・上島町弓削島や西条市、そして京都と、8日間の旅路でした。
とりわけ西条市立丹原西中学校では、生徒たちがパブリックリレーションズを駆使し街灯設置を実現した事案に触れ、次世代への希望と教育の成果に胸が熱くなりました。
弓削島では、従兄弟との語らいを通して故郷への想いを確認し、 また西条高校ではグラウンドに立って野球に明け暮れた中学時代を回想。初心に帰る貴重な時間を過ごしました。
【4月~7月】 アカデミアと節目の刻
4月から始まった北海道大学での講義(ほぼ毎週)に加えて、北海道・深川市ではパブリックリレーションズ教育について市長や教育委員会の方々と意見交換をしました。
北の大地と産業の未来。北海道には日本の未来の姿を見ることができます。
北海道大学では、アカデミアとビジネスの融合を目指して宝金清博総長が積極的な取り組みを進めています。それを通じて、北大発ベンチャー企業へのアドバイスや、講義で知り合った方々との様々な意見交換ができました。地方にいてこそ強く感じるのは、地方創生の必要性です。新たに、北大の先生方と「地方創生パブリックリレーションズ研究所」設立を構想するに至りました。
新緑の眩しい5月、そして梅雨のない6月には増毛町や函館の企業を訪問しました。7月には北大での最終講義に合わせて北千歳の国産半導体の開発・製造拠点 ラピダスの建設現場を視察し、日本の半導体産業の再興に思いを馳せました。
そして7月4日、井之上パブリックリレーションズは創立55周年を迎えました。皆様の長きにわたるご支援に、改めて深く感謝いたします。
【8月】 地方の現実と新たな働き方
人生初のリモートワークツアーとして、京都から瀬戸内、四国、広島、福岡へと約3週間の旅へ。盟友・千本倖生氏とも合流し、地方活性化について膝を交えて語り合いました。
さらに、香川県知事や愛媛県知事、西条市長、広島大学学長との会談からは、地方が抱える問題や急減する人口問題など、貴重な現地情報を得ることができました。特に人口問題については、行く先々のコンビニエンスストアで従業員の大半、場所によっては全員が、アジアからの就労者で構成されていることに強いショックを受けました。少子高齢化も進む人口問題は何とかしないといけませんね。
日本の風景の裏で進行する、深刻な人口減による過疎化や人手不足は、まさに国家存亡の危機です。「失われた30年」の克服がいかに急務であるか、東京ではなく地方の現場でこそ痛感できた、貴重な夏でした。
【9月・10月】 友との再会、音楽の歓び
60年越しのセッション-恒例の「ナレオパーティー」には小泉純一郎元総理もご臨席くださいました。ハワイアンミュージックとの出会いは高校3年の夏で、当時の早稲田大学ナレオハワイアンズのヴォーカリスト小出茂さんと60余年の時を経て同じステージに立ち、ビブラフォンを演奏できたことは、まさに奇跡のような喜びでした。
政治への提言-経済誌『財界』のインタビューを通じ、不安定な政治状況に対して、国家経営の視点からパブリックリレーションズの必要性を説きました。
【10月・11月】 北の大地で問う日本の未来
北海道視察と講義-秋の深まりとともに北海道各地(空知・美唄など)を訪問。廃校を活用した企業などを視察し、東京では見えにくい地方の人口減少という「静かなる有事」を肌で感じました。
次代への継承-北海学園大学での講義では、学生たちへ向けて、この国難を乗り越えるための「パブリックリレーションズ視点」を熱く語りかけることができました。
行く先々で温かく迎えてくださった皆様、そして地方に散る教え子をはじめ、志を共にする多くの友に、心より感謝申し上げます。年末には、待望の専門書(共著)「The Handbook of Innovations in Strategic Communication」も届きました。
また、日本パブリックリレーションズ学会が進めている「失われた30年報告書」の英語版は、翻訳がようやく終わり、年初からはロンドンで最終編集作業が始まります。この春には英語版が発刊できそうです。
学びと実践に終わりはありません。 2026年もマルチステークホルダー・リレーションシップマネージメントであるパブリックリレーションズを通して、平和で希望のある社会づくりをめざします。
今年も井之上ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございました。
2026年が皆様、そしてご家族にとって、素晴らしい年になるよう心よりお祈り申し上げます。