パブリック・リレーションズ

2007.03.16

CSR(企業の社会的貢献)、いま求められる貢献とは?

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか?

近年CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)が注目されています。 一般的にCSRとは、企業が社会的責任を積極的に果たすことで、企業利益を追及すると同時に地球環境の保全や社会全体の持続的な成長を可能にする取り組みを指します。

企業の社会的責任(Social Responsibility)の概念は1920年代、欧米の教会を中心に行われた、武器やギャンブルなどに関わる企業への不買運動や投資抑制運動が原点であるといわれています。

日本では70年代、公害問題を契機に企業の社会的責任が注目され、80年代のバブル期には利益還元策としてメセナ(芸術・文化支援活動)が盛んに行われました。21世紀を迎えると、地球規模での深刻な環境問題やエンロンやワールドコムなど相次ぐ不祥事による企業統治や企業倫理の重要性が盛んに叫ばれるようになりました。近年この流れを受けて企業におけるCSRへの関心が高まり、本格的取り組みをおこなう企業が増加しています。

本業を活かした社会貢献

このように企業の社会への関わり方は時代と共に変化しています。マーケティングの世界的権威、フィリップ・コトラー(Philip Kotler)は、その著 Corporate Social Responsibility (JohnWily&Sons, Inc. 2005)でCSRを次のように定義しています。

「企業の社会的責任は、経営資源を投入した自主的なビジネス活動を通して、地域社会の発展のために取り組むべき責務である」

つまりコトラーは、CSRは企業が本業を活かしその枠組みの中で自主的に実現すべき社会貢献であるとしています。さらにコトラーは、CSRの手法を6つのカテゴリーに分類。広範囲で曖昧になりがちなCSRを明確に示し、効果的な活動の実施を促しています。

1.社会問題の認知度をあげる活動
2.社会問題に関連したマーケティング
3.コーポレート・ソーシャル・マーケティング
4.コーポレート・フィランソロピー
5.地域社会へのボランティア活動
6.社会的責任を果たす事業活動
  (以上、翻訳井之上喬)

一方、CSRの概念と共に登場したSRI(Socially Responsible Investing: 社会的責任投資)。SRIは、社会的責任を果たす企業に投資する発想から生まれた投資方法。現在のSRIは、財務的評価に加え社会や環境への貢献度を積極的に評価し投資することを指します。なお、CSRとSRIの詳しい記述は紙面の都合により割愛しますが、拙著『パブリック・リレーションズ』に詳述してあります。

CSRで壊れいく地球を救う

今年に入り、NYのベンチャー投資家である私の友人、ピエール・デュポン氏が、クリーン・エネルギーだけに投資対象を絞ったベンチャー・ファンドを立ち上げました。先日来日し、日本の関連するベンチャー企業経営者や大手企業のクリーン・エネルギー関係者と積極的に会合を持ちました。

彼の活動は、今後、地球環境保全分野のビジネスが注目されるなかで、そのトレンドを先取りするものであり、環境保全のための社会貢献活動であるとも言えます。まさにデュポン氏の活動は、本業を通して社会に貢献する理想的なCSRであるともいえます。滞在中に、この分野で活躍する日本の関係者と意見交換する彼の表情は本当に輝いていました。

この数年、環境悪化に起因するとみられる異常気象が世界中で相次いで報道されています。地球温暖化や資源枯渇など、地球環境の破壊は悪化の様相を呈しています。10億という単位の巨大な人口を抱える中国やインドの経済活動の活発化は、地球資源の消費や大気に甚大な影響を与えているといえます。地球環境の破壊が想像を絶するスピードで進行する中、企業や組織は持続可能な発展を地球規模で考え、自主的な環境経営活動を強いられる状況に追い込まれています。

効果的なCSRを行うには、様々な要素を統合し問題解決に向けて包括的かつ継続的に取り組む、パブリック・リレーションズ的な発想が必要となります。そこでの実務家の役割は、組織体とパブリックとの間に立つインターメディエータとして、組織体に対して正しい活動を行う支援を提供することにあります。
また、企業や組織が個人の集合体であることを考えれば、個人もCSR的な意識や発想を持ち自主的に行動することが求められます。私達の住む美しい地球を救うのは、この星からたくさんの恵みを享受している私たち自身であるべきです。

有史以来、人類が繁栄を謳歌し続けるのか、または滅び行くのか、その分水嶺にある21世紀。私達はCSR的な活動を個人の問題として捉え、一人ひとりが努力しなければならない時代に生きていることを認識しなければなりません。

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ