パブリック・リレーションズ

2006.12.30

パブリック・リレーションズの認識が高まった2006年

こんにちは、井之上喬です。
いよいよ年の瀬を迎えました。あわただしい時間を過ごされている方も多いと思います。
今年は皆さんにとってどんな年だったでしょうか。

2006年の日本は、経済的には、本格的にデフレを脱却したとみられ、いざなぎ景気を超えて史上最長といわれる景気拡大に突入しました。一方、政治的には9月、5年5ヶ月ぶりに小泉政権から安倍政権へと政権が交代。新政権は「成長なくして財政再建なし」をスローガンに、「美しい日本」実現のための取り組みを示し、国民からの期待が高まった年でした。

不祥事に始まり不祥事に終わった

しかし好景気と新政権への期待を裏切るかのように、2006年もパブリック・リレーションズの欠如が露呈した数々の不祥事に明け暮れたといえます。

政界では、タウン・ミーティングでのやらせ問題や政府税制調査会長の辞任、そして国会議員の政治団体による不適切な会計処理の発覚などにより、 安倍内閣への支持率は発足直後の63.9%から3ヶ月で40%台にまで急落。首相による今後の舵取りを不安視する声が高まっています。

官界では、防衛施設庁の官製談合事件に始まり、岐阜県庁の裏金事件、そして福島、和歌山県に続き宮崎県でも談合事件が発覚。県のトップである知事が次々と辞任に追い込まれました。
ビジネス界では、会計や監査に関する不祥事が繰り返されました。ライブドアの堀江貴文前社長や村上ファンドの村上世彰前代表が証券取引法違反容疑で逮捕。金融庁はライブドアの監査法人であった中央青山監査法人に対し、業務停止を命じました。つい一週間前には日興コーディアルグループによる不正会計問題が表面化し、首脳陣の退陣劇が繰り広げられたばかりです。

一連の不祥事は、倫理観双方向性を持ったコミュニケーションそして自己修正の欠如がその要因となっていることは疑うべくもありません。そして、これらの3つの要素を抱合するパブリック・リレーションズが根本的な問題解決には必要とされることが、少しずつ認識されるようになったことは大きな前進であったと思います。

広報担当首相補佐官の意味

その象徴的な例が、安倍政権発足と同時に首相官邸機能の強化の一環として、首相補佐官(世耕弘成 広報担当)が設置され、広報体制が拡充されされたことです。就任演説で安倍首相自ら広報機能の重要性を訴えました。この広報担当首相補佐官の設置はメディアで大々的に報道され、 国民の広報(パブリック・リレーションズ)に対する認識はかってない高まりをみせ、その機能が注目されるようになりました。

安倍内閣の様々な不祥事発覚への対応にはいろいろな問題があるにせよ、首相就任直後、険悪な日中関係の修復に素早く動いたり、銀行からの政治献金の申し入れを断るなど、世論を反映した行動をスピード感を持っておこなおうとする意思が見られます。これらの対応姿勢は大いに評価されるべきことだと考えます。この点で、会計や監査に関する不祥事が繰り返されたために、コンプライアンスに関するルールを素早く改正したことも評価できることだと思います。

このように、パブリック・リレーションズは日本社会ではまだ機能しているとはいい難い状況にはあるものの、2006年はパブリック・リレーションズが社会に必要とされる概念であることが理解され始めた年だったといえます。

この1年のメディア報道を振り返ると、北朝鮮問題を始め、複雑化する世界における多くの問題や紛争は絶えることなく起こっています。日本国内でも数字上は好景気であるにもかかわらず、貧富の二極化やいじめに対する問題など、暗いニュースが日々伝えられていたように思います。

混迷の時代にあって、各方面からパブリック・リレーションズの必要性が叫ばれています。グローバル時代を生きるパブリック・リレーションズ実務家の役割は、 民間レベルにおいては日本企業のグローバル化を手助けする戦略やソリューションを提供し、 国家レベルでは国際社会へ向けた強力な情報発信の担い手となることにあるといえます。またプロフェッショナルとして、 内外の活動をとおして世界の平和と繁栄に貢献することも極めて重要な使命といえます。

このような大きな役割を持ったパブリック・リレーションズが更に日本で認知されるよう、来年もパブリック・リレーションズの実務家、研究者として、皆さんと一緒に見つめ考えていきたいと思います。

本号は2006年最後のブログとなります。この一年間ご愛読ありがとうございました。
それでは皆さん、良い年をお迎えくださいますよう。

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