こんにちは、井之上 喬です。
今年は1月21日が大寒。その前日は東京でも雪が降りました。大寒から2月4日の立春までは一年のうちで最も寒い時期とされていますので、健康管理には十分お気を付けください。
1月18日の読売、朝日、毎日の夕刊一面トップに、「東大、秋入学移行へ」の見出しが踊りました。
朝日新聞によると、これまで入学時期のあり方を検討してきた東京大学のワーキング・グループが、従来の4月入学を全廃し、海外で主流となっている秋入学への全面移行を求める素案を中間報告としてまとめたとするものでした。
秋入学への全面移行の必要性については、国際的な大学間の競争に対応し、学生の海外留学を促すことなどを理由に挙げています。
11大学と協議組織、5年前後で移行
今後、東大ではこの素案に対する学内の意見を調整し、今年度中に最終報告をまとめ、学内での合意が得られれば経済界など関係先への説明と一定の告知期間を経て、早ければ5年後に導入したい意向を示しています。
また1月21日の日経新聞朝刊一面トップに、同紙が行った全国22大学の学長への秋入学に関するアンケート結果を発表。
それによると「回答した18校のうち9割近い16校が秋入学移行に前向きな姿勢を示した」としています。
また浜田純一学長は、東大単独ではなく他大学と足並みをそろえて実施する考えを明らかにするとともに、有力大学との協議組織や産業界と大学側との協議組織を設けることも明らかにしています。
大学間の協議組織は、東大のほかに京大、阪大、東北大などの国立大学(9校)に加え、早稲田、慶応の11校に参加の打診を行っているとしています。
秋入学になると学生は、4月の合格発表から半年間、入学を待たされることになります。この「ギャップターム」をどう過ごすかということや企業の新卒採用、各種の国家試験とのタイミングのずれなどさまざまな課題もあり、調整は難航しそうです。
東大の発表を受け平野博文文部科学相は20日の閣議後の記者会見で、「大学改革の大きな試金石になる。(学内での議論を)前向きに見守っていきたい」。
続けて、「世界の国の7、8割は大学の入学・卒業時期が秋で、日本だけが4月だとこれだけグローバルに時代が動いている中で支障がある。秋入学は一つの方向性だと思う」とコメント。秋入学は経団連などの経済団体トップからの賛同もあるようです。
なぜ米・英の大学が優れているのか
東大の秋入学への全面移行の理由のひとつに国際的な大学間競争への対応を挙げていますが、このことについて興味深いデータがあります。
英国高等教育専門誌「Times Higher Education」は昨年10月、毎年恒例の世界大学ランキングを発表しています。8年連続でトップを飾っていたハーバード大学は2位となり、今回1位はカリフォルニア工科大学でした。日本の大学では、東京大学がアジア勢としてはトップにランクされているものの全体としては30位。
この世界大学ランキングの評価軸は、「学習環境(Teaching)」「研究成果(Research)」「引用数(Citations)」がそれぞれ30%、「イノベーション(Industry income)」が2.5%、「国際性(International outlook)」が7.5%となっています。
上位は、カリフォルニア工科大学やハーバード大学のほか、スタンフォード大学やケンブリッジ大学、オックスフォード大学など米・英の主要大学で占められています。
日本の大学は京都大学が52位、東京工業大学が108位、大阪大学が119位で東北大学が120位。私学では慶應義塾大学が301-350、早稲田大学は351-400の中にランク。
英語圏の大学へのスコアが高いのはいささか気になりますが、日本の大学の秋入学への移行は、こうした世界における日本の大学の実情を踏まえると避けて通れない問題のように思えます。
日本が一国だけで生きていけない以上、どのように国内外から有能で国際的な人材を養成・輩出するかは国の存亡に関わる問題。
早稲田大学の私の授業、「パブリック・リレーションズ論」を受講する学生も海外留学する際に戸惑うのは入学時期の違い。外国との秋入学を受身に捉えるのではなく前向きに捉え、その実現に努力することがいま求められているのではないかと考えています。
先日、長い親交のある友人からIESE(イエセ) Business Schoolのパンカジ・ゲマワット(Pankaj Ghemawat)教授が2月下旬に来日するという知らせを受けました。IESE は、スペイン発祥の世界トップ・クラスのビジネス・スクール。
IESE経営大学院については以前このブログでも紹介したことがありますが、バルセロナ、マドリード、ニューヨーク、ミュンヘン、サンパウロにキャンパスを展開し、グローバルでMBAやエグゼクティブMBAをはじめとする経営者育成プログラムを提供。
ゲマワット教授は最年少でハーバード大学の教授になった記録をもつビジネス戦略論の大家で、日本でも『コーラの味は国ごとに違うべきか』(2009、文芸春秋刊:原書名Redefining Global Strategy)の著者として知られています。
友人によると、ビジネス・スクールに留学する日本人の流れはここ5年の間で大きく変わり、かつて主流であったアメリカからヨーロッパにシフトしているようです。
面白いことに、IESEへの昨年の日本人留学者数、21名(10名は私費)は、欧米のビジネス・スクールの中で最大数になっています。
ゲマワット教授が来日中にお会いすることが出来れば、何故、非英語国のスペインから発祥したIESEへの人気が高まっているのか、またハーバード大学、カリフォルニア工科大学など米・英の大学が優れているとされる理由はどこにあるのか、どうして世界の人気がこれらの大学に集中しているのか、是非、尋ねてみたいと思います。
「日本の大学の秋入学」に対する私の考え方に多くの示唆が得られるのではないかと期待しています。