アカデミック活動

2012.12.03

グローバルビジネス人材育成を考える〜京都大学経営管理大学院のシンポジウムから

こんにちは井之上 喬です。早くも師走に入り、寒さも一段と厳しさを増してきましたが、皆さんお元気ですか。

先日(11/19)、「グローバルビジネス人材育成を考える」をテーマに京都大学経営管理大学院が主催するシンポジウムが開催されました。会場は、京都大学芝蘭会館の稲盛ホール。

グローバルビジネス人材育成に関してわが国の産・学・官が、グローバル社会における事業活動を新たな次元に引き上げ、その対応力を抜本的に強化するために大学が果たすべき役割、とりわけ経営専門職大学院におけるグローバル人材育成のための課題を議論することを目的としたものでした。

このシンポジウムに私が副会長を務めるグローバルビジネス学会が共催した関係もあって、私はパネルディスカッションのコーディネーターを務めることになりました。

(写真 敬称略:左から澤井、田中、安間、筆者、北山、式部、林の各パネリスト)

質的変換期を迎えた大学教育

シンポジウムは、京都大学の徳賀芳弘経営管理大学院長の開会挨拶にはじまり、文部科学省の板東久美子高等教育局長による「グローバル人材と大学教育の役割」、国際協力銀行の奥田碩総裁が「グローバル化時代のビジネス」、そして京都大学の森純一国際交流推進機構長が「ナレッジエコノミーと大学のグローバル人材教育」をテーマにそれぞれ基調講演を行いました。

板東さんは、「主体的に学び考え、どんな状況にも対応できる多様な人材育成のため、大学の機能を再構築し、大学教育の質的転換を図るためのガバナンスの充実・強化が不可避だ」と指摘。

奥田さんは、「武士道精神に学び、国際社会で尊敬される正しく強い日本人になれ」と強調。
森さんは、「新しい大学院教育」や「海外大学との協働コース」、「学生の海外派遣」、「産業界との連携」など7つの施策を具体的に提示しました。

次いで私がコーディネーターを務めるパネルディスカッションが始まりました。

異なった背景をもつ6人のパネリスト

パネリストには各界を代表して、三井住友銀行の北山禎介会長、米州開発銀行 の式部透顧問、JETROの林康夫顧問(元同理事長)、国際協力銀行の安間匡明経営企画部長、三井物産の田中浩一代表取締役常務執行役員、そして京都大学の澤井克紀経営管理大学副院長の6名に参画いただきました。

冒頭はバックグラウンドの異なるパネリストに、グローバル人材の育成に関する課題についてそれぞれの立場で自由なコメントをいただき討議を進めました。

北山さんは、金融業のグローバル人材育成として高度な金融の知識、語学力、文化、宗教に対する理解と内なる国際化への対応が必要であるとし、コミュニケーションのツールとしての英語力やタフで異質な集団を育てるためのプログラムをカリキュラムに入れる必要があると語っています。

式部さんは、政府間国際交渉や国際機関の職員の資質として、英語力、専門知識、相手との信頼関係を構築するために人間力や交渉能力が必要とされ、実務経験をOJT (on the job training)をとおして積み重ねることが重要としています。

林さんは、今後中小企業が世界をリードすると予測し、わが国中小企業のために日本全体で国際ビジネスに対応できる人材ストックが重要となることを強調。大学生には在学中の海外留学が望まれるといった見解が示されました。

安間さんは、ポスト・マージャーの強化や製造業で新興国と厳しい競争に晒されている分野でのマーケティング力の強化を訴えました。新興国との関係では信頼関係の構築が重要であり、とりわけ民間企業への理解が必要とされることを強調。

田中さんは、三井物産では異なる文化、宗教の理解のある人材が欲しいと自社の求める人材像についての考えを示し、同社の通年採用の約40%が外国籍であることを明らかにしています。

経営管理大学院で教鞭も執る澤井教授は、グローバル人材に求められる素養は、教養であるとし、外国人と会話を弾ませる、相手の言動に対する幅広いレスポンスが必要であるとしています。同時に、専門性を一つでも持つことで応用力や人間力をつけることができると指摘しています。

このパネルディスカッションにおける「グローバル人材として求められる要素」は、高度な専門知識と語学力に加え多様な文化や価値観、宗教観に対する理解力や適応力、精神力、コミュニケーション力、ユーモアセンスが挙げられ、また国際交渉を担う人材に対しては、特に実務経験の重要性が強調されました。

これらのスキルを統合し、グローバルなビジネス・シーンで優位性を高めていくためにはパブリック・リレーションズ(PR)の素養をもつことがいかに重要か、基調講演やパネルディスカッションを通して、私は改めて実感しました。

パネルディスカッションの冒頭で私は、グローバル社会の中でパブリック・リレーションズはビジネス遂行するためのインフラストラクチャーであると強調しました。

なぜならば、多様性が求められるグローバルビジネス環境では、自己を主張できる豊な人間力ある人材が求められているからです。パブリック・リレーションズは、目的をスムーズに達成するために必要な、「倫理観」、「双方向性コミュニケーション環境」、そして、必要な際の「自己修正能力」の3つの要件で成立します。これらはグローバルビジネス人材に不可欠な基本要素といえます。ダイバーシティは双方向性環境の中で有効となり、相互理解のない異文化間の衝突は、自らの修正に至らず、国家間の戦争にさえ発展しかねません。

つまり、さまざまなステークホルダー(パブリック)との良好な関係構築づくりを通してリレーションシップ・マネジメントが行なわれなければならないからです。

パネルディスカッションの後には、京都大学経営管理大学院の小林潔司経営研究センター長からの報告「アジアビジネススクール開講によせて」が続き、2013年4月に東京で開講する「アジアビジネス人材育成講座」の概要も紹介されました。

午後1時30分にスタートしたこのシンポジウムは、教育制度の改革や各大学の生き残りをかけたさまざまな試み、経済界や国際社会との協働などについて熱い議論が交わされ、その余熱が残る中で澤井克紀副大学院長の閉会挨拶を最後に6時に終了しました。
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井之上喬著「パブリックリレーションズ」(2006年3月、日本評論社刊)は、おかげさまで2012年5月30日付で第6刷が発刊されました。ご愛読ありがとうございます。
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