皆さんこんにちは井之上喬です。
早いもので激動の2024年も残り3カ月になりました。3月会計年度の皆さんには10月は下半期のスタートの月ですが、同時に2025年に向けた大事な準備の期間になりますね。
私が代表理事・会長を務める一般社団法人日本パブリックリレーションズ学会は、2021 年 11 月に発足し、5つの研究会のほかに特別研究会が、皆さんのご支援を得て現在も順調に活動を進めています。
パブリック・リレーションズの視点で捉える
学会の活動の中核の一つに、次世代に向けた特別研究会「失われた 30年検証研究会」があります。
目指したのは、日本の競争力がこの 30年間になぜ衰えてしまったのか、そして今後、どうすれば再び世界の主役となれるのかを考えることです。2022 年 6 月に設置し、NHKや民放、大手新聞社などマスメディア各社から、政治、経済、社会、国際、科学技術など多様な分野をカバーする論説委員、編集委員、デスククラスの方々を中心に 20人余りの参加を募り、講演者には政府の政策責任者、政治家、研究者、専門家などを招きました。
検証する分野は多岐にわたりますが、プロジェクトのスタート時から共通する視点は、パブリック・リレーションズ(PR)の重要性を再確認することです。私が提唱するパブリック・リレーションズとは、他者との関係作り、つまり、倫理観をベースに、それぞれと双方向のコミュニケーションを取り、必要に応じて互いに変化・修正(自己修正)を行う良好な関係構築活動(リレーションシップ・マネージメント)を通じて、目標へと最短距離で到達することです。
この大切さは、対個人でも、国という大きな社会組織の中でも変わりません。政策や方針は作って下に伝達すれば終わり、ではありません。国民や企業、団体と意見を交わしながらそれぞれが変わり、良い関係構築を行いながら議論、立案して実行に移す。この作業を不断に積み重ねることで目標は早期に達成されます。
この地道な取り組みが、過去をみると不足していたと思えてならないのです。現場を熟知する政策責任者や専門家と、一般市民に伝えるメディアの人たちとが、この視座から共に振り返ることで、次の 30 年に向けた日本再生のシナリオを探る。それを報告書にまとめ、政策提言することが設立当初から最終目標に定めていました。
42名のヒアリング講師
第42回の講師、自民党の石破茂氏と。写真左はチーフリサーチャーの関口和一氏
ヒアリングにお招きした講師の方々は42名。第1回の東京大学教授の伊藤元重氏にはじまり42回の石破茂氏まで、ご講演をいただいた先生方を下にご紹介します。講師の方々には、改めて、お忙しいなか貴重なお時間を調整いただいたことを感謝申し上げます。(登壇順、カッコ内は専門分野)
伊藤元重氏(経済)、藻谷浩介氏(社会)、寺脇研氏(教育・行政)、関口和一氏(IT・情報通信)、中曾宏氏(財政・金融)、青山俊樹氏(行政・国土交通)、マーティン・ファクラー氏(ジャーナリズム)、林伴子氏(男女共同参画)、伊藤公雄氏(ジェンダー論、男性論)、パラノビチ・ノルバート氏(少子高齢化対策)、黒川清氏(日本社会論)、金子勝氏(経済学、財政学)、奥正親氏(少子化・地方自治)、松江秀夫氏(経営)、小宮山宏氏(科学技術・工学)、小川和久氏(防衛・軍事)、藤田幸久氏(日米比較政治)、藤崎一郎氏(外交)、山下一仁氏(農業)、鈴木宣弘氏(農業・行政)、神津里季生氏(労働)、宮内義彦氏(経営)、千本倖生氏(経営)、アレン・マイナー氏(経営・日米ベンチャー比較)、東郷和彦氏(国際関係・外交)、伊藤穣一氏(IT)、孫崎享氏(国際関係・外交)、辻哲夫氏(厚生労働)、白川方明氏(金融・財政)、中野剛志氏(経済産業)、長有紀枝氏(政治学)、佐々木毅氏(政治学)、落合陽一氏(起業家・AIメディアアーティスト)、施光恒氏(政治哲学)、福原秀己氏(文化・経済)、小堀眞裕氏(政治)、下村健一氏(ジャーナリズム・広報)、今村聡氏(医療)、野田佳彦氏(政治・立憲民主党)、川端清隆氏(元国連本部)、柳澤 協二氏(防衛・外交)、石破茂氏(政治・自由民主党)
学会の「失われた30年検証研究会」のページにも一覧を掲載しています。
講演後、石破氏と参加者との懇親会
より良い社会に向けての実装を考える
ヒアリングを通して行った「失われた30 年」の検証研究は現在、取りまとめを急ピッチで進め、次の30年に向けた日本再生への提言として年内にも書籍の発行を計画しています。
2024年は、1月の台湾総統選挙で幕を切った「史上最大の選挙イヤー」と言われています。そして11月5日には米国大統領選挙が行われ、世界中がその結果に注目しています。
日本でも、自民党の総裁選挙、立憲民主党の代表選挙が行われましたが、何とこの研究会でご講演いただいた石破茂氏が自民党総裁選に勝利し102代目の首相に就任、一方の野党第1党である立憲民主党の野田佳彦氏も、党代表に就任しました。
39回目研究会で、立憲民主党・野田佳彦氏による講演
ともに両党の代表となったお二人に講演を頂いたことに、偶然とは言えない何か大きなご縁を感ずるとともに、この検証研究が、今後の日本を良い方向に導く一助になればパブリック・リレーションズ(PR)コンサル冥利につきます。
戦後80年、今の世界ほど政治的にも経済的にも分断と対立が進み、混迷の度合いを増している時はないと感じています。加えて地球温暖化による異常気象も世界中で頻発しています。
平和と民主主義が無くては機能しないパブリック・リレーションズ(PR)にとって、この状況は大袈裟ではなく危機的であると感じています。地球環境問題への取り組みも、待ったなしの厳しい状況であることは言うまでもありません。
新しい世界秩序のなかで、日本の果たす役割はますます重要になっています。日本がその役割を果たすために、パブリック・リレーションズは必要不可欠です。そのために、研究会が導き出した提言を広く伝え、一つでも多く実現・実装されるよう、今後も取り組んでいきます。
パブリック・リレーションズ(PR)の手法を活用し、世界規模の多様な社会課題の解決に取り組む。次世代の人たちのためにも、世界のためにも、今がその時だと強く感じています。