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2016.09.30
世界ランキングに見る日本の競争力〜やはり革新性がキーワード
皆さんこんにちは井之上 喬です。
来週から10月。神無月ともいわれ出雲大社に全国の神様が集まって1年の諸々の事を話し合うため、出雲以外には神様が居なくなる月の意味という古来の言い伝えもありますが、各地の神社ではで収穫を祝う例大祭が行われます。
東京は雨模様の日が多いのですが、すっきりした秋空のもと日本伝統の行事に触れる良い機会ですね。
世界競争力ランキングは8位に後退
ダボス会議主催で知られる世界経済フォーラム(スイス)は9月28日、2016年の世界競争力ランキングを発表しました。それによると残念ながら日本は8位で、前年の6位から順位を下げてしまいました。
調査対象は138の国・地域で、ランキングを見ると1位は前年と同じくスイス、2位がシンガポール(前年2位)、3位米国(同3位)、4位オランダ(同5位)、5位ドイツ(同4位)、6位スウェーデン(同9位)、7位英国(同10位)、8位日本(同6位)、9位香港(同7位)、10位フィンランド(同8位)となっています。
アジアでは他に台湾が25位、マレーシアが26位、韓国が28位、そして中国が28位と上位にランク入り。
日本経済新聞によるとこの背景として、2007年から終始5位以内に入っていた「技術革新」が8位に下降。投資家保護や企業倫理を含む「制度」が16位に3つ低下したことが響いたようです。
日本の総合順位の低下は東京電力・福島第1原子力発電所事故の影響が反映された2012年以来4年ぶりで、技術革新に含まれる小項目では「企業の研究開発投資」「研究機関の質」「産学連携」などで評価が下がったとしています。
また制度では、企業倫理や投資家保護に加え、知的財産の保護や政治家への信頼も落ち込んでいるとしていますが、企業倫理の欠落した東芝問題や知財戦略が脆弱な日本企業の諸問題がそれらの要因にあるのではないかと思います。
一方で同新聞は、「金融市場」は19位から17位へと上昇し、金融サービスの利用時の費用負担や、資金調達へのアクセスが順位を上げているとしています。
また「マクロ経済環境」は前年の121位から104位と大幅な上昇を示しているものの、「公的債務の大きさが足を引っ張る構図は変わらない」と日本の国際基準での評価を解説しています。
個人的には技術革新の評価が下がっているのには驚きましたが、投資家保護、企業倫理などでの低い評価が全体のランクを下げたのではないかと残念ながら納得してしまう部分もあります。パブリック・リレーションズ(PR)に求められる重要な要素である「倫理観」がキーファクターとなっているともいえます。
Fortune誌の「世界を変える50企業(Change the World)」で伊藤園が18位になったというそんな中でちょっとうれしいランキングもありましたので紹介します。
2016年9月1日号Fortune誌の「世界を変える50企業(Change the World)」ランキングで日本企業が2社ランク入りしています。
1社は伊藤園で、日本企業では最高の18位、もう1社はパナソニックが39位にランクされています。
伊藤園は企業のCSR活動が当たり前になるなか、継続的かつ戦略的にCSR活動に取り組んでいる代表的な企業。その中核的な役割を果たしているのが常務執行役員CSR推進部長笹谷秀光さんです。
フォーチュン誌の選定基準は、重要な社会課題へのインパクト、業績、革新の程度で、伊藤園が経営戦略の一環として社会課題に独自に取り組む「茶産地育成事業」、「茶殻リサイクルシステム」などが高く評価されたとのことです。
ランキングされた企業は以下のURLを参照ください。
http://beta.fortune.com/change-the-world
Fortune誌選定理由「日本の混迷する農業セクターに新たな雇用創出」とし、ています。以下にその理由をそのまま紹介します。
「日本最大の緑茶飲料メーカーである伊藤園にとって、環境保全はゆるぎない信念である。この売上高4000億円の清涼飲料メーカーでは、2001年から茶産地育成事業に取り組んできた。この事業は、日本では耕作放棄地が40万ヘクタールもあるが、同社ではその活用と就農者の増加を図るものである。 地域の自治体と農家との契約により、伊藤園は栽培技術を提供し、1,000ヘクタールの緑茶原料用農地を確保してきた。また、伊藤園では、年間49,000トン発生する茶殻をダンボールなどに再利用している」
と事業をベースとした社会との新しいかかわり方を創出し継続的な取り組みを行っていることを評価しています。
日本伝統のお茶文化が、今やシリコンバレーをはじめ海外ではクールな日本文化として急速に普及しているのもうなずけますね。
取り上げた2つの世界ランキングに共通するものは何でしょうか。私は“革新性”だと考えています。
技術の革新性だけでなく、ビジネス、社会とのかかわりなどの革新性、常に社会を意識しながらサステナブルに変わり続け新しい企業価値を創造する。難しいことですが挑戦する価値は大いにあると思います。
常に外部環境に変化を読み取る、パブリック・リレーションズ(PR)がここにも求められています。