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2016.06.16

新元素の名称を「ニホニウム」と決定〜アジアで初めて命名権を得ていた113番の新元素

皆さんこんにちは井之上 喬です。

梅雨入りをしたものの降水量が少なく、首都圏の水がめである利根川水系のダムの貯水率が低下しているため、流域の1都5県は本日(16日)から10%の取水制限を行うことになりました。今のところ生活に大きな影響はありませんが、節水への協力が求められています。

さて、理化学研究所の森田浩介グループディレクター(九州大学教授)らが発見し、昨年12月に日本だけでなくアジアでも初めてとなる命名権を得ていた113番の新元素の名称が「ニホニウム」と決定し、発表されました(6月9日)。

テレビ、新聞などマスメディアで大きく報道された113番「ニホニウム」と同時に他の三つの新元素の名称案(115番モスコビウム、117番テネシン、118番オガネソン)も公表され、現在発見されている118番まですべての元素(特定の原子番号をもつ原子によって代表される物質種)の名前が出そろったことになります。

新元素ニホニウムの英語表記は「nihonium」で元素記号は「Nh」となります。

科学力の底上げにつなげたい

発表したのは、各国の科学者を代表する国内組織の連合である国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry、IUPAC)で、国際本部は、スイスのチューリッヒ。

「ニホニウム」は森田氏らが2004年に30番の亜鉛の原子を83番のビスマス原子に衝突させ、核融合を起こすことで作ったといわれます。

原子力のエネルギーにもなる92番のウランまでは自然界に存在しますが、93番以降の元素は、人工的に作る競争が繰り広げられているようです。113番は米国とロシアの共同チームも発見を報告していましたが、IUPACは実験精度の高さなどから理研を発見者と認めたとのこと。

今回の発表について森田氏は「人類の知的財産である周期表に日本の発見した元素が載ることは大変光栄だ」とのコメントを寄せています。

周期表については、「元素の物理・化学的性質は,その原子番号の増加とともに周期的な変化をくりかえしていくという化学の根本的な法則。これを表の形で表したものが周期表である」と世界大百科事典は紹介しています。

これまで元素の発見と命名は、近代科学が発祥した欧米諸国の独壇場だったようですね。欧米やロシア以外の国による命名は今回が初めという画期的な出来事。基礎科学における日本の研究能力の高さを示すものです。

見つかった新元素そのものは、すぐに何かに役立つものではありません。しかし、基礎科学の研究成果は発見当時には思いもつかない恩恵を後になってもたらすことがしばしばだといいます。

例えば日常生活に不可欠な全地球測位システム(GPS)は、アインシュタインの一般相対性理論がなくしては実現しなかったともいわれているようです。

ノーベル賞より難しい命名権獲得

「命名権獲得はノーベル賞より難しい」と指摘する専門家も多いようです。1895年にX線の発見の功績により1901年、第1回ノーベル物理学賞を受賞したヴィルヘルム・レントゲン以来、2015年度までに874の個人と26の組織がノーベル賞を受賞しています。

内訳をみると1位がアメリカ合衆国(339)、2位イギリス(110)、3位ドイツ(82)で日本は7位(22)となっています。

これに対して113番目に初めて日本が命名権獲得したという事実に鑑みても、「命名権獲得はノーベル賞より難しい」ということが実感できます。

113番の新元素が日本名を冠した「ニホニウム」と命名されましたように元素の名称は国や地名、科学者の名前などにちなんで付けられることが多いようです。

新元素の発見チームに命名権を与える組織である前述のIUPACにおいても命名には国や地名などにちなむといった歴史的なルールがあり、語尾の音は「イウム」となる例が多いといいます。

国名や地名に由来する名前ではドイツにちなんだゲルマニウム(原子番号32)のほか、フランシウム(87)、アメリシウム(95)などが挙げられます。

偉大な科学者に敬意を表して付けられたのはキュリウム(96)、アインスタイニウム(99)などがあります。今回の113番元素でも、日本の原子核物理を切り開き、元素発見にも挑んだ理研の仁科芳雄博士にちなんで「ニシナニウム」にするのではという予測もあったようです。

世界の先端研究は優れた頭脳を引き寄せ、次代を担う科学者が育つ素地ともなります。このノーベル賞より難しいといわれる命名権獲得が日本の科学力の底上げに繋がることを期待しています。

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