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2015.11.05
第44回東京モーターショー2015から〜自動車からハンドルがなくなる、免許証が不要?!
11月に入って寒さも一段と増してきた感がありますが、皆さんお元気にお過ごしでしょうか?
「第44回東京モーターショー2015」は10月29日(木)に始まり、11月8日(日)までの11日間、有明の東京ビッグサイトで催されています。
今回の東京モーターショーでは、「きっと、あなたのココロが走り出す」(”Your heart will race.”)をテーマに、世界一のテクノロジーを集めたモーターショーを目指し、乗用車、商用車、二輪車、車体、部品・機械器具、自動車関連サービスとSMART MOBILITY CITY 2015を含む総合ショーとして開催されています。
世界11カ国から合計160社が参加し、国内全ての乗用車・商用車・二輪車メーカー14社15ブランド、海外メーカー16社26ブランド(乗用車・商用車・二輪車)が出展しています。
マスコミの報道を通して既にご存知の方も多いと思いますが、今回のモーターショーでは人が運転しなくても走る「自動運転車」が展示だけでなくデモ走行に同乗して最新技術の体験もできるなど、大きな話題を呼んでいます。クルマ好きな方は、この週末に東京ビッグサイトへ出かけてみてはいかがでしょうか。
事故率の圧倒的な軽減
東京モーターショーは、10月29日からの一般公開に先立って10月28日にはプレス向けにプレビューが行なわれました。当夜、日産のカルロス・ゴーン社長がテレビ朝日「報道ステーション」に生出演して自動運転について熱く語っている様子を目にしました。
日産の技術によると、自動運転は2020年、5年後の東京オリンピックが開かれる年に実用化が可能だといいます。番組では実際に自動運転のデモ運転の様子が流れ、運転席にはハンドルに代わって液晶画面があって、運転席のデザインは一変していました。
ゴーン社長は、自動運転の利点について次の二つのことを強調していました。
一つ目は圧倒的な事故率の軽減についてです。自動車事故の90%は人為的なミスといわれています。自動運転車にはAI(人工知能)が搭載され、前方は200メートル、後方70メートル、そして左右は30メートルまで認知して、判断されるといいます。
もちろん信号も認知され、このAIによって人間が運転する場合に比べて事故率は圧倒的に軽減されるだろうとのこと。
私の長年の友人で、MIT時代に人工知能研究(博士)に関わっていた、デビッド・シーゲル氏(現Two Sigma会長)は、人工知能こそがヒューマン・エラーに起因する問題の解決をしてくれると会うたびに熱っぽく語っていたことを思い出します。
そして二つ目は、運転手が不要になること。未成年や運転免許がない人で車を利用できるといったことも強調していました。
自動運転によって通勤の往復2時間がビジネスや読書に費やすことができ、映画も観ることもできます。居酒屋でお酒を飲んだ帰りに自動運転で家まで無事に帰ることができ、時間を有効に使えるといった内容でした。
ゴーン社長は、もちろんそのためには法改正やサイバー攻撃対策、地図整備などクリアにすべき多くの課題についても言及しました。
かつてUSC Annenberg Strategic PR Centerが発表したGAP?(Public Relations Generally Accepted Practices Study)によると米国CEOが企業の成功に貢献する重要な機能として、マーケティングや法務、財務などよりもパブリック・リレーションズ(PR)が第一に挙げられています(拙書『パブリックリレーションズ』第1版より抜粋)。
プレス向けプレビューの後にテレビ出演した自動車メーカーの経営トップは他にはなく、「報道ステーション」に生出演して自動運転を熱く語るゴーン社長を目にして、パブリック・リレーションズを何よりも重要視するCEOの姿勢が見て取れました。
「ロボタク」の登場
米国グーグルは2009年から自動運転車の無人実験を始め、既に300万キロ公道を走行し無事故だったと伝えられています。
ラッシュや渋滞が少なく、日本とは道路事情が異なりますが、逆に訴訟社会とも呼ばれている米国においては、運転事故に対する賠償責任などのリスクも大きいはずです。こうした環境の中で、300万キロ無事故というのは評価に値することだと思います。
アップルも、カリフォルニア州内にある軍事基地の跡地で自動運転の走行を始める可能性があると、最近、米国で報じられています。
アップルやグーグルだけでなく自動運転化を目指す自動車市場は、様々な企業の市場参入を促しています。日本においてもベンチャー企業のロボットタクシー社、通称「ロボタク」が東京オリンピックまでに実用化を目指しているとのこと。
「ロボタク」は東京駅→新国立競技場といった限定されたルートであれば、2020年の早い時期に運用が可能だとしているようです。
2020年。そんなに遠い先ではありません。オリンピック競技以外にも水素カーや「ロボタク」が走る回る東京の景色が見られるとしたら、今から楽しみなことですね。