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2015.06.04
2015年に大型M&Aが増える予感〜IoT、Industry 4.0などでさらに求められる企業のスピード感
皆さんこんにちは井之上 喬です。
6月に入り街の中の紫陽花が色付き出しましたね。もうすぐ季節は梅雨。今年もじめじめした天候が続くのでしょうか。
梅雨空とは対照的に、世界経済は欧米そして日本をはじめとするアジアでも安定成長を続けており、企業は好調な業績を背景に次の成長に向けた戦略的な企業買収(M&A)に積極的に取り組んでいます。
あのインテルが創業以来最大規模のM&Aを
特にIoT時代、Industry 4.0時代を前にIT分野でのM&Aには驚きます。先日も米国半導体大手インテルが、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)でザイリンクスに次ぎ業界2位のアルテラを167億ドル(1ドル120円換算で約2兆円)で買収することで合意したと6月1日に発表しました。このインテル創業以来過去最高規模となる買収案件には驚きました。
この買収は、パソコン(PC)向け半導体の需要が鈍るなか、インテルがIoT時代を見据えデータセンター向け半導体など利益率の高い製品への事業転換を図るため、行ったとの報道もありました。
半導体業界ではその直前に業界最大の買収案件として、米国アバゴ・テクノロジーズがブロードコムを370億ドル(同4兆4400億円)で買収することも発表、今後も安定成長が見込める半導体産業では業界での優位性を確保するための大型M&Aが続いています。
私が経営する井之上パブリックリレーションズのクライアント企業も、たびたび買収の噂の中で買収する側、される側でニュース報道に登場する機会が増えています。
そのほかにも2015年だけでも5月13日 にはVerizonがAOLを44億ドルで買収へ、4月16日 米セグウェイをシャオミ出資の中国企業ナインボット(九号机器人)が買収、4月15日フィンランドの Nokiaが仏Alcatel-Lucentを156億ユーロ(約2兆円)で買収、4月8日英国とオランダに本拠を置くロイヤル・ダッチ・シェルが英国BGグループの買収で合意、買収金額は702億ドル(約8兆4240億円)で石油業界では過去10年余で最大の買収となりました。
さらに4月7日には 米国フェデックスがオランダ物流大手TNTエクスプレスを44億ユーロ(約5700億円)での買収に合意したと発表しました。3月23日には中国国有化学大手の中国化工集団が伊タイヤ大手ピレリを71億ユーロ(約9200億円)で買収、3月1日にはオランダのNXPセミコンダクターズが米国フリースケール・セミコンダクターを買収することで合意したと発表するなど、3月以降でも枚挙にいとまがないほどです。
日本企業による主な買収案件としても、3月11日 ブラザーがロンドン証券取引所に上場する産業用印刷機大手の英国ドミノ・プリンティング・サイエンシズを10億3000万ポンド(約1890億円)で買収。
2月24日には日立製作所がイタリアの防衛・航空グループ、フィンメカニカの鉄道事業の買収で基本合意、2月23日には旭化成が米国電池材料メーカーポリポア社を買収、2月18日には日本郵政が豪物流トール・ホールディングスを6000億円で買収、2月10日にはキヤノンがスウェーデンのネットワーク監視カメラ事業会社アクシス社を買収するなどがあり、日本企業もグローバル戦略の中で積極的にM&Aに取り組んでいる姿勢が見られます。
M&Aの質的変化に注目
こうしたグローバルレベルでのM&Aラッシュをみるにつけ、いま世界は企業の生き残りをかけた企業買収を行っていることがわかります。
また最近の傾向として感じるのは、従来のようにM&Aを通じ売上げの拡大=マーケットシェアの拡大=成長、と言う側面だけでなく、今回のインテルのアルテラ買収のように、新しいビジネストレンドの中で競争力を強化しようとしていることです。
単純な売上げの追求ではない持続可能な成長のための技術力、開発力、創造力を自社に取り込む、つまり人的リソースを含めたM&AにIT業界を中心に軸足が移っているように感じます。
そしてM&Aに関する企業トップの決断のスピードもますます加速しているように感じてなりません。翻って日本企業はどうでしょうか。グローバルでのこのような流れにちょっと取り残されている気がしませんか。
M&Aが全てとは言いませんが、アベノミクス効果、株高円安傾向が続き企業業績が好調な今こそ、スピード感を持って5年後、10年後を見据えた投資が日本企業に必要ではないでしょうか。
スピーディな決断と投資を確実なものにするためにも、リレーションシップ・マネジメントを駆使したパブリック・リレーションズ(PR)が機能するはずです。