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2014.07.17

「土用の丑の日」を前に 〜漱石の『虞美人草』や『彼岸過迄』にもウナギが登場

こんにちは、井之上 喬です。

先日何年かぶりで浜松に出張し、駅前の鰻屋でランチをとりました。大学卒業後すぐに就職した日本楽器(本社浜松:現ヤマハ)時代に通った浜松。そこで覚えたウナギの味は、さまざまな想いと共に私のなかに深く浸透しています。

今回のブログでは、大好物でもあり、日本の夏の風物詩ともなっている「ウナギ」について書いてみたいと思います。

日本では「土用の丑(うし)」の日に、暑い時期を乗り切る栄養をつけるためにビタミンA・Eや栄養が豊富な「ウナギ」を食べる習慣があります。土用とは、暦の立春・立夏・立秋・立冬のそれぞれ18日前の期間のこと。そのなかで十二支が丑の日を「土用の丑の日」といわれているようです。夏だけが有名ですが、実は年に4回以上あることになります。

夏の「土用の丑の日」が有名になったのは、江戸時代の発明家・平賀源内(1728-1780)が鰻屋さんから相談を受けたことに由来するといわれています。

そのころ丑の日には「う」のつくものを食べると夏負けしないという言い伝えがあり、それにならって「丑の日にはうなぎを食べよう」というキャッチコピーの広告を軒先に張ったところ大繁盛。他の鰻屋も真似するようになり、消費が拡大したとのことです。

まだ少し先のことですが、今年は7月29日(火) が「土用の丑の日」に当たります。

「ウナギ」好きの人に朗報

先月、ニホンウナギがIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「絶滅危惧種」に指定されたというニュースが流れました。

日本で食べるウナギのほとんどは、冬から春にかけて日本や中国などの河川にやって来る天然の稚魚(シラスウナギ)をいけすで育てたものです。この養殖に使う稚魚が、「絶滅危惧種」に指定されたことと矛盾するようですが、今年は天然の稚魚が多く収穫されたそうです。

昨年まで4年連続の不漁で養殖池に入った稚魚の量(日本と中国、台湾、韓国の合計)は各年とも20-40トン程度でしたが、今年は80トンに急増。昨年まで値上がりしていたスーパーのかば焼きや専門店のうな丼、うな重が安くなる可能性があるようです。

現在、稚魚やかば焼きなどの製品を合わせ、日本人が食べるウナギは半分以上を輸入に依存しているとのこと。ウナギ好きな日本人の国内需要を高めていくため、専門家によるウナギの生態を研究、調査する動きも熱心につづけられています。

2009年、東大などがマリアナ諸島付近で天然ウナギの卵31個を世界で初めて採取。この採取は、サハラ砂漠に落ちた1個のビーズ玉を見つけるくらいの偉業と世界を驚かせました。

続いて2011年7月には東京大学や九州大学、オランダ・ライデン大学などで構成される国際研究チームは、太平洋のグアムから西に200キロメートル以上離れたマリアナ諸島付近で天然ウナギの卵を大量採取することに世界で初めて成功。こうしてウナギの謎に満ちた生態が少しずつ解明されています。

日本文学と「ウナギ」

浅草田原町に店を構えるウナギ専門店「奴鰻」(現在「やっこ」)の創業は、今から約200年前の寛政年間(1789-1800)に遡るといわれます。文政7年(1824年)に発行された『江戸買物独案内』に「奴鰻」の名が記される老舗中の老舗。当時は徳川将軍でいえば十一代家斉(1773-1841)の時代で、江戸では東洲斎写楽の浮世絵が話題になっている頃でした。

「奴鰻」は古くから浅草に店を構えていることもあり、小説・エッセイ、時代劇などに何度も登場しているようです。

文豪、夏目漱石(1867-1916)の小説『虞美人草』に、「ある人に奴鰻を奢ったら、お蔭様で始めて旨い鰻を食べましたと?」といった一節があります。

また、『彼岸過迄』という小説には、「わざと門跡(もんぜき)の中を抜けて、奴鰻の角へ出たと」いう一節が見られます。

「奴鰻」は、明治時代に活躍した小説家、劇作家として知られる岡本綺堂(1872-1939)の小説『権十郎の芝居』、『半七捕物帖』などにも登場します。岡本綺堂は、お店にもよく食事に通い、ウナギが大好物だったとか。

『権十郎の芝居』という小説では、「奴鰻」で食事をするシーンが書かれ、「鰻めしが六百文、大どんぶりで……」と当時のうな重の値段まで詳しく描写されています。

浅草生まれで、大正から昭和にかけて活躍した俳人、小説家、劇作家の久保田万太郎(1889-1963)の住居は「奴鰻」の斜め向かいにあり、大の鰻好きだったという万太郎氏は、「奴鰻」に足しげく通っていたようです。文学者ではありませんが勝海舟やジョン万次郎もお客さんだったとのこと。

以前は世界でとれるウナギの7割を日本人が食べるといわれていたほどの、ウナギ好きな日本人ですが、ほどほどの予算で美味しいウナギが、気兼ねせずに食べられる日の訪れを期待しています。

ウナギといえば、岡山理科大の先生が海水でも淡水でもない、第3の水をつくりだし、ウナギの養殖に成功し研究を続けています(他の海水魚も可能)。大のウナギファンとしてもこの8月に現地の研究所を訪問することを楽しみにしています。

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