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2013.10.31

「日本蕎麦会議所」第1回大会を開催〜そば文化を世界に

先日、東京晴海で「日本蕎麦会議所」の設立大会が開催されました。
呼びかけ人は、「蕎麦春秋」編集長で元サンデー毎日編集長の四方洋(しかた ひろし)さん。そばの魅力を広くアピールすると同時に、実効性のある提案を行うために立ち上げたとしています。

食品をテーマにした組織に会議所という名称を付けたことに意外性とともに新鮮味を感じた私は、八重洲口にある京都大学経営管理大学院東京オフィスで、今期から始まった遠隔講義を終えた後、会場がある晴海に足を運びました。

蕎麦の普及を通して文化発信と友好を深める

四方洋さんとの出会いは30数年前、当時お世話になったヤマハの佐野雄志さん(取締役広報部長)が亡くなられたとき佐野さんの遺稿集を編集してくださっていた四方さんと取材でお目にかかったのがきっかけでした。

このキックオフには、全国蕎麦製粉協同組合理事長の黒子恭伸さん、北海道の日本最大そば農家の北村忠一さん、「小松庵」専務の小松孝至さん、京都ガレット「さらざん」主人橋本陵加さん、「早稲田環境塾」塾長(早稲田大学名誉教授)の原剛さん、立川中央病院付属クリニック名誉院長の田中昭二さんなどをはじめ、全国から約100名の方々が台風襲来のなか参加。

会場では、蕎麦愛好家でもある林芳正農水大臣から寄せられた長文のメッセージが読み上げられました。2020年の東京でオリンピック開催を機に、蕎麦がおもてなしの心で国際的な発展を遂げることを願う、と述べていたのが印象的でした。

日本蕎麦会議所の要綱には、まず、「日本蕎麦を愛する人は誰でも入会できる」とし、分野を超えて「蕎麦を熱く語り合う」と謳われています。また年1回の大会を開き、提言を行うとしています。

日本蕎麦会議所は以下の項目について議論し、大会のたびに提案をまとめ、各関係機関に要望するとともに、積極的に世論に働きかけるとしています。

  • 蕎麦の作付けを増やし、価格の安定、品質の向上を目指す。
  • 日本蕎麦の国際化につとめ、世界に向かって普及、拡大を目指す。
  • 日本蕎麦の消費量を増やし、メニューの多様化を目指す。
  • 大学、研究機関の研究を応援し、品種改良、栽培法、アレルギー、経営問題などの開発、解決を目指す。
  • メディアの協力により、健康長寿効果をPRし、若者から老人まで広く国民から愛される食品を目指す。

また日本蕎麦会議所の構成メンバーは、「そば栽培農家や研究者、そば店主、製粉、飲料など関連業者、そして消費者、地方自治体担当者、メディア関係者とし、何よりもそばを愛することと」と表示されています。

400年の歴史を持つ日本独自の「切り蕎麦」

文献では蕎麦は奈良時代に救荒作物として栽培されていたようですが、四方洋編集長によると、平安時代には京都でだんご状の蕎麦が食されていたようですが、現在のかたちの「そば切り」は、今から約400年前に長野の禅寺で始まったとしています。

その昔修行者はそばの実を袋に入れて命を繋ぎながら苦行に耐えたといいます。救荒食物として禅寺で作りつつけられてきた蕎麦には禅の精神である簡素さと奥深さが共存しているといえます。

400年の歴史をもつ日本独特のそば切りには、日本人の持つ繊細さ、器用さ、正確さ、忍耐力などが要求され、季節に合わせたさまざまな調理法があり芸術的な側面も持つようにみえます。

蕎麦粉を時間をかけて練り上げ、細切りにし、カツオだし、みりん、かえし(保存)などで味付けしたものを漆や陶の器に入れ箸を使い音を立てて食べる、そばは日本の食文化の極致ともいえます。

四方編集長は、「これまで蕎麦は五穀(米・麦・粟・豆・稗(ひえ)または黍(きび))の外にあり軽く見られ、困ったときの蕎麦として軽視されてきたが、近年蕎麦店は、京都の町屋や築数百年の農家や宮様の邸宅を移築した蕎麦店(千葉県村田茶屋:旧東久邇宮邸)、そして、そばバー、そばカフェ(京都、東京、軽井沢)などの新しいスタイルも現れるなど、さまざまな取り組みがなされている」と語っています。

蕎麦は世界180カ国で食されているものの、そば切りの技術は日本だけのようです。ユネスコの無形文化遺産に「和食」の食文化が登録される見通しが強まっていますが、そば食が重要な役割を果たすことが期待されています。

ちなみに、日本蕎麦会議所の入会金/会費は無料、入会時に登録だけが必要とされます。

四方さんとは偶然に自宅がご近所同志ということもあり、休みのときには近くのそば店でお昼をご一緒させていただくなどお話させていただいていますが、ダイエット中の私もだんだん蕎麦にはまっていきそうです。 四方さん、日本蕎麦会議所設立おめでとうございます。

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