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2012.05.22

原発ゼロの今、エネルギー問題を考える 〜“シェールガス”は本当に革命を起こすのか

こんにちは井之上 喬です。
かなり蒸し暑い日が多くなり、最高気温が25度を超す夏日が東京でも記録されるようになりました。五月病の季節、体調管理には十分留意したいものです。

今年も夏の暑さが気になるところですが、夏場の需要期を控えた電力事情も気になるところです。
5月5日深夜に北海道電力の泊原発3号機が定期検査で発電を停止、日本国内のすべての原発が停止しました。1970年以来、42年ぶりとのことです。

高値でも輸入拡大のLNG

原発ゼロの状況を踏まえ、原発が再稼働しない前提で5月18日に政府は今年の夏の電力需給見通しと節電対策を発表。

節電の数値目標は、需給状況が最も厳しい関西電力管内では15%以上、九州電力管内が10%以上、北海道と四国電力管内が7%以上となっており、需給に比較的余裕のある中部、北陸、中国電力管内にも5%以上の節電目標を求め、需給に余裕が生まれた場合は関西に融通するとしています。

東北、東京電力管内の数値目標は設定されていません。また、関西、九州、四国、北海道電力の管内では需給がひっ迫し計画停電が避けられない場合を想定して、計画停電の準備を進めることにしています。

政府は節電対策と同時に、電力供給力を高める取り組みとして1000キロワット以下の小口電力の取引活性化をめざし、6月中にも「分散型・グリーン売電市場」の創設も正式に決定しました。

工場などの自家発電の余剰電力を電力会社が買い取りやすくし、電力不足を少しでも緩和しようとの狙いです。

その一方で、昨年の福島第一原発事故以降、電力需要を賄うために天然ガス(LNG)や石油、石炭などを燃料とする火力発電所の稼働率が上がっていますが、そのなかでもLNG火力発電所が二酸化炭素の排出量が比較的少ないことから、原発代替電源の主役になっているようです。

財務省の貿易統計で見ても2011年度(平成23年度)のLNG輸入量は8318万トン、前年度比で実に17.9%の伸びを示しています。輸入先はマレーシア、オーストラリア、インドネシア、ブルネイ、ロシアからが中心でこの5カ国で輸入量の約80%を占めています。

価格も当然のことながら上昇傾向で、2011年4月の輸入平均価格が100万英国熱量単位(BTU)当たり約13ドルであったものが、12月には18ドルという高値で購入しているということで、エネルギー源安定確保の面で大きな懸念材料になっているとも言えます。

米国での石油化学大型投資復活はシェールガスに

そんな中で最近、メディアで注目されているのが“シェールガス”です。多くのメディアが、シェールガス革命と題し取り上げていますが、シェールガスとは泥や砂が固まってできる頁岩(けつがん=シェール)にとじ込められた天然ガスで、米国で特殊な水の高圧注入で岩盤を砕き回収する技術が確立し、2008年ごろから生産が本格化し今では米国の天然ガス生産量の20%超を占めるまでになっています。

五大陸にまたがる推定埋蔵量は世界の年間消費量の約60年分に達するとも言われているようです(日本経済新聞などの解説を参照)。

そしてシェールガスの生産急増で米国の天然ガス価格が、2012年4月には100万BTU当たり2ドルまで下落しているというから驚きです。

その恩恵で米国では家庭のガス料金の値下げが実現、また産業界では圧倒的な価格競争力を背景に、シェールガスに含まれるエタンを原料とした大型の石油化学投資が復活し雇用創出にも大きな期待が寄せられているようです。

大型の設備投資を決めた1社に米石油化学大手のダウ・ケミカルがあります。テキサス州フリーポートで年産150万トンと世界最大規模のエチレンプラントを2017年操業開始予定で建設すると発表しています。

日本経済新聞の記事の中からダウ・ケミカルのジム・フィッタリング副社長の興味深いコメントを紹介します。「シェールガス革命が“本物”だと判断したのは10年の暮れ。それからわずか2カ月で投資計画をまとめ、2011年4月に発表した」。

なんという経営のスピード感でしょうか。
エネルギー問題に苦しむ日本にとって、この圧倒的に価格が安いシェールガスを日本にも、とする動きも急速に高まっているようです。

三井物産、三菱商事、住友商事などの大手総合商社、東京ガスなどがシェールガスの日本への輸入で基本合意したと発表していますが、米国政府が認可に対し慎重な姿勢を見せているようです。
4月末の日米首脳会談でも野田総理の対日輸出要請に対しオバマ大統領は大統領選挙への影響もあるのか明言を避けたとの報道もあります。

一方では、シェールガスの採掘時に発生する地下水の汚染などの環境問題も指摘されていますが、2000年代に登場したばかりの新エネルギー、シェールガスの米国の動向が注目されます。

シェールガスの開発が始まっている中国、アルゼンチン、南アフリカなどの動きも注視したいところです。
エネルギー問題は、わが国にとって古くて新しいそして永遠のテーマかもしれません。原発ゼロの今こそ、より現実的なエネルギー問題に関する国民的な議論とともに、政府の大胆なエネルギー政策と積極的で戦略的なエネルギー外交を望みたいものです。

たまたま日曜日(5/20)のテレビ朝日「報道ステーションSUNDAY」で、元東京都職員で若干31歳の鈴木直道夕張市長が開発を試みる、石炭層から採集される炭層ガス(天然資源のメタン)の可能性について紹介されていました。

この夕張市の試みに対して番組取材を受けた経済産業省のお役人が、まだ経済性がみえない、と冷ややかなコメントを発したのにはがっかりさせられました。

原発無きエネルギー源を自前で開発することは国家戦略上重要なこと。再生エネルギーの開発も含め日本が取り組まなければならないのは代替エネルギー源の必死の確保です。

喫緊のエネルギー問題を国家的な課題とし、大きな運動にしていくためには、パブリック・リレーションズ(PR)は欠かせない手法です。

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