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2012.06.04

古くて新しいテーマ「幸福論」〜OECDの幸福度ランキングで日本は21位

こんにちは、井之上 喬です。

今週は関東地方も梅雨入りの気配ですが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか。

国際経済全般についての協議を目的とする国際機関OECD(経済協力開発機構:本部パリ)は、昨年から先進国や新興国を対象に国民生活の豊かさ、いわゆる幸福度(Better Life Index:BLI) を示す指標を発表しています。今年は加盟34カ国に非加盟のロシアとブラジルを加えたランキングを5月22日に発表しました。

トップは昨年に続きオーストラリアで、次いでノルウェー、米国がトップ3で、上位10カ国は北米や北欧などの国が占めました。日本は36カ国中、総合順位で21位という結果でした。

昨年11月、ヒマラヤの王国ブータンのワンチュク国王とジェツン・ペマ王妃が日本を訪問された際、東日本大震災の被災者への心温まる対応やお二人の仲睦まじさとともに国家標としている「国民総幸福量」(Gross National Happiness:GNH)という独自の考え方が話題となりました。

国民総幸福量は国民総生産よりも重要

この国民総幸福量の軸となるのは、「経済成長と開発」、「文化遺産の保護と伝統文化の継承」、「自然環境の保全と持続可能な利用」、そして「よい統治」の4つの概念です。

こうした4つの概念は、例えば文化遺産保護のための民族衣装着用や建築物へ伝統装飾を施すことの義務化、環境保全の面からはビニール袋などプラスチック類の使用禁止令などの施策に具現化されています。一方、教育費や医療費は無料で、手厚い社会福祉制度が整っています。

ブータンの1人当たりの国民総所得は1,920米ドル(2010世年界銀行)であるにもかかわらず、国勢調査ではブータン国民の約97%が「幸せ」と回答しています(外務省ホームページ)。

一方、OECDの指標は国民の幸福度を国際比較することを目指しており、国民生活と密接に関わる住居や仕事、教育、健康など11分野ごとの評価を数値化しています。

日本は、犯罪被害に遭った人の割合が少ないことなどから「安全」が1位、国民の読解力や計算力などが高いことから「教育」では2位と高い評価を得ています。

しかし、収入に占める住居費の割合が高いことなどから「住居」では25位、「生活の満足度」が27位、そして長時間働く人が多いことなどから「仕事と生活の両立」が34位と評価が低く、幸福度の総合順位で日本は21位となりました。

47都道府県幸福度ランキング

昨年末、法政大学大学院の坂本光司教授が指導する「幸福度指数研究会」から47 都道府県幸福度ランキングが発表されています。

さまざまな社会経済統計の中から、地域住民の幸福度を端的に示していると思われる「安全・安心部門」、「生活・家族部門」、「労働・企業部門」、「医療・健康部門」から40 の指標を抽出し、10 段階評価(1-10 点)により数値化したものです。

それによると、トップが福井県(10点満点で7.23)で、次いで富山県(7.20)、石川県(6.90)、鳥取県(6.63)、佐賀県と熊本県(6.55)、長野県(6.48)、島根県(6.35)、三重県(6.25)、そして新潟県(6.18)が10位という順番となりました。

東日本大震災と福島原発の被災を受けた福島県(5.73)は27位で、東京都(5.38)は38位、最下位は大阪府(4.75)となりました。

かつて政府が暮らしやすさの都道府県ランキングとして「新国民生活指標」を公表したものの、下位の埼玉県などからの反発を受けて中断したことがありました。今回のランキングも同様に各地で波紋を広げているようです。

最下位の大阪府では、橋下徹市長が論争材料にこのランキング結果を提示。35位の鹿児島県では「佐賀、熊本が5位なのに豊かな自然と歴史のある鹿児島がなぜ低いのか」と県議会で伊藤祐一郎知事が追及されたそうです。

また、経済同友会は各地で幸福度を研究しており、経済的豊かさを示す成長性、精神的な安らぎの安定性など3分野で指標化を目指すとのことです。

新たな「幸福度」の指標を設ける際にパブリック・リレーションズ(PR)的な要素も考慮すべきではないだろうかと思います。例えば、自治体の情報発信力と県民(道民、都民、府民)の情報受信力、つまり双方向性コミュニケーションがどのように機能しているかといった指標です。

「幸福論」(Eudaemonics)は古くて新しいテーマ。アリストテレス(B.C.384-B.C.322)は「幸福とは快楽を得ることだけではなく、政治を実践し、または人間の霊魂の固有の形相である理性を発展させることである」として幸福主義を唱えました。

また今日、「幸福論」と言えばヒルティの『幸福論』(1891年)、アランの『幸福論』(1925年)、ラッセルの『幸福論』(1930年)による3つの幸福論を指しています。

ヒルティは「神のそば近くあることが永続的な幸福を約束するとする宗教的幸福論」を、アランは「健全な身体によって心の平静を得ることを強調」し、ラッセルは「己の関心を外部に向け、活動的に生きること」を説いています(ウィキペディアより抜粋)。

こうした歴史的な幸福論者が、もし21世紀の世界に生きていたとしたらOECDの発表やブータンの国民総幸福量、そして法政大学の幸福度指数の研究に対してどのように評価するのか、興味のつきないところです。

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