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2021.04.28
日本の男女格差はいつになったら改善されるのか
~国際標準のジェンダーギャップ指数で156カ国中120位、G7で最下位の現実直視を
皆さんこんにちは井之上喬です。
まもなくゴールデンウイークが始まりますが、コロナウイルスの感染再拡大により4月25日から3度目の緊急事態宣言が東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に発令され、2年続けて我慢の連休を過ごすことになりそうです。しかし、同じ状況でありながら街中やオフィスでは人影が減ることはなく、明らかに去年とは違う光景が映し出されています。
感染収束の切り札となるワクチンについて、国は全対象者に必要な数量を、遅ればせながら9月中に供給可能との見通しを示しています。国に対しては、多少のリスクは負っても先手先手で対策を実施することを要請するとともに、われわれも国民も最低限の防御をこれまで以上に一人一人が心がけるよう、呼びかけたいと思います。
データが示す「女性後進国」日本
75年前の昭和21年(1946年)4月10日は、戦後初めての衆議院議員総選挙が行われ、日本で女性が初めて参政権を行使した日です。約1380万人の女性が初めて投票し、加藤シズエさんなど39名の女性国会議員が誕生しました。
今では75年が経ちましたが、政治分野での日本の男女格差は依然として大きいままです。世界各国の議員たちでつくる列国議会同盟(IPU)の3月の発表によると、各国の議会では女性議員が占める割合が全体で25%を超え過去最高となるなか、日本の女性比率(衆議院)は9.9%と、193カ国中166位です。
日本と同時期に女性参政権を実現したフランス、イタリアと比べてみましょう。フランスでは議会(国会)に占める女性議員は39%、閣僚では男女同数が実現しています。イタリアでも、女性議員は35%、女性閣僚が36%です。日本は、閣僚の割合(10%)もあわせ、低さが際立ちます。
世界の政財界のリーダーが集う「ダボス会議」を主催する国際機関である世界経済フォーラム(WEF)が3月末に発表した、国別に男女格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数2021」でも同様の結果です。日本は、調査対象の世界156カ国中、120位(前年は121位)でした。主要7カ国(G7)では引き続き最下位でした。特に、衆院議員の女性割合が低いことなど、政治参画における男女差が順位に影響したようです。
ジェンダーギャップ指数は、経済、教育、医療、政治の4分野14項目のデータで、各国の男女の格差を分析した指数です。純粋に男女の差だけに着目し、評価を行っているのが特徴です。
2030年のジェンダーギャップ解消に向け
WEFがこの指数を発表しているのは、ジェンダーギャップ(性別による社会格差)を埋めることは、女性の人権の問題であると同時に、結果として経済発展にとっても重要だとの立場からです。それでも日本が今年も低位のままなのは、経済と政治の分野のスコアが改善されないことに要因がありそうです。経済は117位(前年は115位)、政治は147位(同144位)で、この2分野がともに100位以下と他の足を引っ張っているとの指摘は多いです。
ジェンダーギャップ指数の「政治的な意思決定への参画」分野の評価で使われる項目は、国会議員(衆院議員)の女性割合(140位)、女性閣僚の比率(126位)、過去50年の女性首相の在任期間(スコア0、76位)の3つです。
具体的には、衆院議員の女性割合は9.9%、閣僚の女性割合10%。女性首相はまだ誕生していないのは、皆さんもご存じの通りです。
日本では「政治分野における男女共同参画推進法」が2018年に成立し、政党が男女の候補者を均等にする努力義務が課せられました。しかし、実際には与野党ともに、均等には程遠い状態です。施行後初の国政選挙であった2019年の参院選でも、候補者の女性割合は28.1%でした。
性による格差の解消は、国際連合で2015年に採択された持続可能な開発目標(SDGs)にもうたわれています。目標の5番目「ジェンダー平等を実現しよう」です。
世界のSDGs達成度ランキング2020で、日本は116カ国中17位で2017年の11位から下降傾向です。日本の課題は「ジェンダー平等を実現しよう」に加え、「パートナーシップで目標を達成しよう」(目標17)などの得点が従来から低いことです。サステナブル・デベロップメント・レポート(持続可能な開発報告書)では、経済格差や高齢者の貧困などの是正への取り組みが後退していることも指摘されています。
SDGsは2030年の目標達成に向け「行動の10年」に入っています。
ジェンダー平等の推進は、女性だけでなく高齢者、ハンディキャップを持った方々も安心して仕事ができる環境の実現につながり、さらにイノベーション(技術革新)や日本経済の活性化の起爆剤ともなると考えています。
ジェンダーギャップの解消に欠かせないのは、目指すべき方向を皆で共有し、それぞれが柔軟に自己を変えていく(自己修正)ことです。そのためにはさまざまな人との対話(双方向コミュニケーション)を通し、慣れてしまって見えていないことに気づく(倫理観)。組織としてだけでなく、個人のレベルでの取り組みも欠くことはできません。ここにも、パブリック・リレーションズ(PR)の考え・手法が大きく役立つことは、皆さんにもおわかりいただけると思います。