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2020.06.15

新型コロナ禍でもDXで好調なプラットフォーマー企業
~経済活動と新型コロナ対策をいかに両立させるか

皆さんこんにちは井之上喬です。

関東甲信地方などに梅雨入りが宣言された6月11日、東京都は新型コロナウイルス感染拡大の警戒を呼び掛ける「東京アラート」を解除しました。

解除と併せて12日、休業要請の緩和行程を3段階で示したロードマップに基づくステップ3にも移行しました。接待をともなう飲食店やライブハウスなどの営業を19日から認めることになり、これをもって東京都の休業要請は全面的に解除となります。

しかし、経済活動と新型コロナウイルス対策の両立には、様々な困難がともなうことは避けられません。これからは、新型コロナウイルスと上手に付き合っていくことを前提に、それぞれの業種、分野での事業継続に向けた工夫が不可欠になりますね。

経済活動と新型コロナ対策の両立を

世界の各地で、経済活動が再開され始めましたが、まだまだ不安定です。株価も、ナスダック総合指数が過去最高値を更新するかと思うと翌日には急落するなど、ジェットコースターのように乱高下しています。

ちなみに世界の時価総額ランキングのトップテンを見ると、5月末時点では以下のようになっています。カッコ内は、国名、2020年5月末の時価総額、2020年1月末のランキング(10億ドル以下切り捨て)です。

  • 1位:サウジアラムコ(サウジアラビア、1兆7440憶ドル、1位)
  • 2位:マイクロソフト(米国、1兆3890億ドル、3位)
  • 3位:アップル(米国、1兆3780億ドル、2位)
  • 4位:アマゾン(米国、1兆2180億ドル、4位)
  • 5位:アルファベット(米国、9770億ドル、5位)※グーグルの持株会社
  • 6位:フェイスブック(米国、6410億ドル、6位)
  • 7位:アリババ(中国、5660億ドル、8位)
  • 8位:テンセント(中国、5010億ドル、9位)
  • 9位:バークシャー・ハサウェイ(米国、4510億ドル、7位)
  • 10位:ジョンソン&ジョンソン(米国、3910億ドル、11位)

ちなみに、日本勢はトヨタ自動車が5月末時点では時価総額1760億ドルで42位(1月末は1960億ドルで41位)でした。トップ50社のなかで日本企業が1社だけというのも淋しい限りですね。日本の凋落を残酷なまでに示しており、日本経済そして産業界の抜本的な改革が求められています。

このランキングを見てお分かりのように、2019年12月にサウジアラビア国内の証券取引所で新規上場したサウジアラムコを別格とすると、「新常態」やBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)に総称される、米中のデジタル社会のいわゆるプラットフォーマーが上位を占めています。

6月12日の日本経済新聞では、財務指標をランキング形式でまとめた「決算ランキング」の記事で、同様の傾向を指摘しています。2020年1~3月の世界の純利益増加額での上位には、コロナ後の「新常態」でも強固な寡占ビジネスを築き上げた米国のプラットフォーマー企業が並んだと分析。確かに、2位のイーベイ(電子商取引)、3位のフェイスブック(SNS)、6位のマイクロソフト(ソフトウェア)など、デジタルトランスフォーメーション(DX)の大きな流れに乗った企業が、新型コロナウイルス禍の中でも高い収益を上げています。

さらに、そのDXの流れを最先端の半導体技術で支える半導体ファウンドリーの世界トップ企業、台湾積体電路製造(TSMC)が、純利益増加ランキングで5位に入っていることも注目に値します。

急拡大のビデオ会議システムの光と影

新型コロナウイルスの感染拡大で生活様式は大きく変化し、ビジネスの世界でもテレワークが一般的になりました。私も毎日のようにオンラインのビデオ会議システムを活用しており、世に一気に普及した感があります。

例えばマイクロソフトのビジネス対話アプリ「Teams(チームズ)」は、新型コロナ感染拡大前は1日の利用者が2000万人程度だったのが7500万人まで急増したといいます。新型コロナ感染防止のための外出制限・自粛で、世界的にテレワークが拡大したことが急速な利用者の増加に結びついたと、米マイクロソフト社の第3四半期の決算を伝える各メディアの報道記事は伝えています。

ビデオ会議システムはTeamsのほかにも、Cisco Webex Meetings(Cisco Systems)、Zoom(Zoom Video Communications)、Skype Meet Now(Skype)、Google Meet(Google)、Slack(Slack Technology)など数多くのシステムがあります。それぞれ、多様な新機能を付加しながらテレワーク需要拡大を背景に進化、普及しています。

その一方で気がかりなことも報道されています。一日の会議参加者数が3億人を超えるZoomが、中国当局の要請に応じて、米国在住の人権活動家へのサービス提供を一時中止したことが明らかになった、と伝えられました。

経緯は、人権団体が5月末に天安門事件に関するシンポジウムをZoomで開催したところ、翌週に数日間、サービスが使えなくなったとのことです。シンポジウムの参加者は多くが中国からで、中国では天安門事件に関する発言はインターネット規制の対象になっているため、当局が対応を要請したというものです。米国内では、この要請を受け入れてサービス提供を一時中止したZoomの弱腰に対し、批判が高まっているようです。

Zoomは創業者が中国出身で、開発の多くを中国で行ってきた背景があります。以前もセキュリティの課題が取りざたされたことは、多くの皆さんもご存知ではないでしょうか。

米国と中国の対立は、貿易分野だけではなく、私たちの身近なハイテク分野にも影響していることを痛感したニュースでした。

5Gが普及し、インターネットを介し様々な情報が一気に大量に世界を駆け巡るハイパーグローバリゼーションが進行するなかで、ビデオ会議やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、便利なコミュニケーションツールとなっています。しかしそれさえも、大国間の政治、経済の狭間で揺れ、影響を受けるのは避けられないのが現実です。

世界各地で、分断と対立が新たな社会課題として表面化しています。そんな中、マルチステークホルダーとの良好な関係構築を通して目的を達成するパブリック・リレーションズ(PR)にとって、真実を伝えるための最新のコミュニケーションツールはなくてはならないものです。

だれもが情報の発信者になれる時代。だからこそ、そのコミュニケーションツールが大国や企業間の思惑でゆがめられることが無いよう、パブリック・リレーションズ(PR)の専門家として注視していきたいと思っています。

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