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2020.01.24

50回目のダボス会議、テーマは「ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界」
〜パブリック・リレーションズ(PR)が社会課題解決に機能

皆さんこんにちは井之上喬です。

日本では大寒が過ぎ一番寒さが厳しい季節を迎えましたが、お隣の中国では春節の休暇で、約30億人もの大移動が始まりました。日本にも多くの方が中国から来日されることでしょう。湖北省武漢で発生した新型肺炎は、急速な広がりを見せており、中国内外で警戒態勢が敷かれています。まずは、手洗いや人混みを避けるといった、インフルエンザなど感染症を防ぐ基本的な衛生管理の励行が大切とのこと。食事や睡眠にも気をつけながら、健康の維持に留意しましょう。

若者も参加するダボス会議の変貌と意義

世界経済フォーラム(WEF)の年次総会「ダボス会議」が1月21日から24日までスイス東部のダボスで開催されています。

世界118カ国から首脳や企業経営者など約3000人が参加する会議で、50回目となる今年は「ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界」がテーマです。

温暖化に象徴される世界の環境問題や気候変動、世界経済の減速やグローバル化による貧富の格差など、世界が抱えるさまざまな社会課題にどう取り組むかが話し合われています。

最近のテーマは、国際連合のSDGs(持続可能な開発目標)に関連した環境問題、格差にフォーカスする傾向があります。その中で、若い世代の参加も促進しているようで、テレビでも徒歩でダボスを目指す若者の姿が映し出されていました。

今回は活動家も若者が多く参加しており、1月21日の朝日新聞夕刊では「グレタさん だけじゃない」との見出しで「変化を起こす10代の10人」をWEFの資料から抜粋して紹介していました。

ご存知のグレタ・トゥンベリさんなど10人の中には、私が監修した中高生対象のパブリック・リレーションズ(PR)の考え方を学習するためのテキスト「パブリック・リレーションズfor School」にも登場する、インドネシアのバリ島でプラスチックごみを無くすNGOを立ち上げ活動しているメラティ・ワイゼンさん(19歳)も参加しています。

これら10代の活動家が世界のさまざまな課題解決にどのようなメッセージを発信するか、注目しています。

日本の格差の壁を打開するパブリック・リレーションズ(PR)

今回のダボス会議の大きなテーマにもなっている格差問題については、ある日本の政治家が、先日参加した朝食会で触れていました。 彼が取り上げていたのは「日本の格差の壁」です。教育の格差、雇用の格差、男女の待遇格差がその例です。

教育の格差については、高学歴社会ニッポンの考え方は幻想で、教育費が米国などに比べ高く、現実は金持ちが良い教育を受けられるといったことが当たり前の風潮になっていること。(参考資料:ベネッセ「年収によって変わる? 教育格差」)

雇用の格差は、2017年におけるOECD加盟国36カ国のなかで、日本の就業者1人当たりの労働生産性は21位、トップのアイルランドの約半分となっており、それは、非正規雇用労働者の導入が裏目に出たと分析していました。(参考資料:日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2018」)

また、男女の待遇格差では、日本は女性の社会進出がまだまだ遅れていること、もし欧州並みになれば経済成長率は4%増になるとのIMFの「女性が日本を救う」調査を引き合いに出していました。(参考資料:厚生労働省「女性の活躍推進が求められる日本社会の背景

そしてこのような格差の拡大が生み出すのは、忖度に代表される日本の閉塞感が蔓延する「空気の壁」と指摘しました。その結果として引きこもり100万人時代(参考資料:厚生労働省「ひきこもり支援施策の方向性と地域共生社会の実現に向けて」)を招いてしまった。さらに、格差の壁が作り出す空気の同調圧力が、日本の活力を削ぐ結果になっていると指摘していました。

このような難しい社会課題を解決し、閉塞感を打破するためにも今必要なのはパブリック・リレーションズ(PR)であると私は考えています。

日本の政治課題についてはここでは触れませんが、まずは与党・野党の立場を超え、本当に国民のための政治を行わなければ、日本はこの閉塞感から抜け出すことができず、若い世代が魅力を持てない、活力のない国になってしまうことは、どなたにも同意して頂けるのではないでしょうか。

ダボス会議での若い世代の参加に代表される新しい現象の背景にあるものは、政府、企業などのさまざまな組織体がメッセージを発信して、良好な関係を構築する必要のあるステークホルダーが拡大しているという、大きな流れだと思うのです。

例えば企業にとっては、これまでの株主至上主義から脱し、株主、投資家に加え顧客、従業員、取引先、そして潜在顧客などのマルチステークホルダーと良好な関係を構築することが、持続可能な企業運営につながっていくでしょう。

これこそパブリック・リレーションズの本来の姿である、マルチステークホルダーとのリレーションシップ・マネージメントであると考えます。

この実践は、さまざまな社会課題の解決につながり、ひいてはSDGsの目標でもある、「誰一人として取り残さない持続可能なよりよい社会の実現」に結び付くと考えています。

前回のこのブログでも触れましたが、私は幼児教育のためのきずな絵本出版、中等教育のためのテキスト制作、大学やビジネススクールでの講義を通じさまざまな年代の皆さんにパブリック・リレーションズの考え方を知ってもらえるような取り組みを実践しています。

結果としてパブリック・リレーションズ(PR)の考え方を持つ方が一人でも増えることが、社会課題を解決しよりよい社会を実現する原動力になると確信しています。

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