パブリック・リレーションズ

2010.02.01

『体系パブリック・リレーションズ』を紐解く 20 〜プレスとの協働のためのガイドライン

こんにちは、井之上喬です。
もうじき立春。春の足音が聞こえる時節になりましたが
皆さんいかがお過ごしですか?

今週は、『体系パブリック・リレーションズ』Effective Public Relations (EPR)第9版の邦訳:ピアソン・エデュケーション)をご紹介します。EPRは米国で半世紀以上のロングセラーを記録するパブリック・リレーションズ(PR)のバイブル的な本で、日本語翻訳メンバーには私も加わりました。

今回は、第10章「メディアとメディア・リレーションズ」(井上邦夫訳)の中から「プレスとの協働のためのガイドライン」を紹介していきます。メディア・リレーションズはパブリック・リレーションズのコア・コンピタンスです。メディアとの良好な関係性をいかに構築していくかは、パブリック・リレーションズの実務家にとって世界共通の課題。このガイドラインはこの課題に対して大いに示唆を与えてくれています。以前このブログで「良好なメディア・リレーションズのためのガイドライン」についてお話ししたことがありますが、その続編的な内容となります。

10項目のプレス対応ガイドライン

本書で、元CBSニュース記者で長くカウンセラーを務めているチェスター・バーガーは報道機関について「しばしば不公平で、理不尽で、悪いことがある。しかし、彼らは我々の友ではないにしても、国家の最大の友であり、我々はそれに感謝しなければならない」と語っています。また彼は、健全なパブリック・リレーションズの実践の原則に基づき、プレス対応のためのガイドラインを以下のように提案しています。

  1. 組織体の利害ではなく、パブリックの利害の観点に立って話す。
  2. ニュースを読みやすく利用しやすくする。
  3. 引用されたくない発言は、話してはいけない。
  4. 最初に最も重要な事実を述べる。
  5. 記者と言い争いをしない。冷静さを失わない。
  6. 質問のなかに攻撃的な言葉や不快な単語が含まれていたら、それを繰り返さず、さらに否定してもいけない。
  7. 記者が直接的な質問をしたら、同様に直接的に返答する。
  8. スポークスパーソンが質問に対する回答を知らないときは、端的に「私は知らないが、調べて回答しましょう」と言う。
  9. たとえ傷つくとしても真実を述べる。
  10. 記者にニュースだと思わせることができない限り、記者会見を開いてはいけない。

私の会社(井之上パブリックリレーションズ)の業務にも「スポークス・パーソンのためのメディア・トレーニング」プログラムがあり、そのテキストには上記と共通する内容が盛られています。どれも大事なことですが、私は特に「真実を述べる」ことが何にもまして重要だと思っています。

この点について本書では「悪いニュースはすぐに消滅する、メディアはそれを見逃すだろう、と一瞬でも考えてはいけない。(中略)実務家は、そのニュースや報道される方法についてコントロールできる余地を残さないだけでなく、防衛的であってはならず、事実を隠蔽しようとしたとか、メディアに暴露されたといった嫌疑をかけられないようにしなくてはいけない。」
そして、「これは最も難しい。なぜならば、実務家の仕事は悪いニュースをメディアから締め出すことだと見ている経営トップの人々を納得させなければならないからである」と記しています。

また、ガイドラインの最初に列挙されている、「組織体の利害ではなく、パブリックの利害の観点に立って話す」こともこれからのパブリック・リレーションズにとって重要なことです。なぜならこれからの組織体は、その活動がパブリックにも受け入れられることが求められており、実務家はクライアントの利害だけを近視眼的に考えて行動することは許されないからです。これらに共通するものは「倫理観」といえます。

メディアに精通した経営トップが求められる時代

また、本書では実務家がニュース・メディアのジャーナリストと良好な関係性を構築し、維持していくためには何よりも相手から信頼されることが重要であるとアドバイスしています。

しかし実際に私たち実務家のもつ情報の一部には秘匿義務が課せられていたり、また個人情報保護のため、あるいは、競合するビジネス環境における情報の財産的価値のために開示できないケースも多々あります。

この点に関しては報道機関の情報ニーズと実務家との関係は対立する関係でもあります。こうした環境の中でジャーナリストの信頼を得ていくことは並大抵なことではありません。スポークス・パーソンとして、あるいはメディア・リレーションズのマネジャーとして活動するすべての人々にはメディア・トレーニングが必要だと本書は語っています。

一方で人々に報道機関との付き合い方を教えていることが背徳行為だとの非難が彼らからあがっています。こうした声に対して本書ではロジャー・エールスがジャーナリズム・セミナーで述べた次のようなコメントを載せています。

「我々は常に真実を述べるようにクライアントに助言する。しかしながら、私を最も困惑させることは、あなた方(ジャーナリスト)はジャーナリズム・スクールで質問する方法を学んでいる一方で、それらの質問の答えかたを学ぼうとする人々の権利について否定することである」。エールスのこの言葉には大いに納得できるものがあります。

メディア・トレーニングを行う意義について本書は「我々の自由社会は自由な報道が中心的役割を果たすため、メディアに精通した経営トップが求められる時代なのである。報道機関と直接対応する経営陣を助けるために準備されるメディア・トレーニングは、パブリック・リレーションズ部門の責任であり、良好なメディア・リレーションズを構築して維持するための不可欠な投資となる」と結んでいます。

ほとんどの人は、鳩山首相やオバマ大統領と会ったことがありませんが、彼らがどういう人物なのか私たちは知っています。それは新聞、TV、雑誌などのディアを通して知っているからです。メディア・リレーションズの重要性はここにあります。そして健全なメディアを支える基盤は「倫理観」なのです。

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