パブリック・リレーションズ

2010.01.18

CESから読む新しいグローバル化の潮流 〜世界最大のコンシューマ・エレクトロニクス・ショー

こんにちは井之上 喬です。
世界的な寒波が襲来していますが、皆さんいかがお過ごしですか?

井之上パブリックリレーションズ(井之上PR)は、おかげさまで2010年に設立40周年を迎えます。海外企業とのビジネスが比較的多く、これまでもさまざまな国際的な企業へのパブリック・リレーションズ(PR)のカウンセリングや外国政府・自治体による貿易・投資促進キャンペーン、またグローバルな各種展示会などの企画・運営そしてオンサイト・サポートなどで実績を残しています。

そのなかで世界最大の家電見本市である、インターナショナル・コンシューマ・エレクトロニクス・ショー(CES)の開催母体の米国家電協会(CEA)に対しても、日本市場向けのPRコンサルテーションや開催期間中の現地へのメディアツアーの実施など幅広いサービスを提供しています。CESは毎年1月初めに米国ラスベガスで開催されていますが、今回は、新年早々現地入りした井之上PRスタッフからの報告も含め、年初のこの一大イベント(CES2010)から新しいグローバル化の流れを探ってみたいと思います。

民生機器は日本メーカーの牙城?

今年のCES2010(1月7日-10日)は、主催者の発表で米国をはじめ海外100カ国以上から2,500社を超える出展社数で、そのうち約300社が新規出展し展示総数は2万点以上。また業界関係者だけを対象としたこの見本市の見込み来場者数は前年並みの11万人(実数発表は5月)。出展社の会場では風力発電による電気を使用するなど、CES2010は世界的に関心が高まっている「環境にやさしい見本市」をテーマに開催されました。

今年は、バンクーバー冬季オリンピックやサッカーワールドカップを控え、電機各社が3Dに対応したフラット・パネル・デスプレイTV(FPD-TV)の最先端製品を展示、先陣争いをしています。民生機器の代表選手であるFPD-TV市場は、パナソニック、シャープ、ソニーなどの日本メーカーがこれまで業界をリードしてきましたが、LED(発光ダイオード)TVにも力を入れるサムスン電子(写真左下)やLG電子など韓国勢が世界規模で販売を伸ばし2009年のシェアでは韓国勢に対し日本勢は大きく離されたと業界のアナリストは分析しているようです。

秋葉原の大型家電量販店などの店頭には日本メーカーの大型FPD-TVが所狭しと並んでおり、2009年末商戦でもエコポイント効果もあり台数ベースで前年同月比65.5%増、金額ベースでも42.7%増と好調だったようです(BCN調べ)。日本にいるとFPD-TVの牙城は日本メーカーが守っていると思いがちですが、CES2010では韓国勢に加えHaierやHisense、TCLなど中国メーカーが昨年とは比べ物にならないほど大きなブースを出展していました。

関係者によると、「昨年10月に開催されたCEATECでは見られなかった光景」。ここでも中国勢の躍進が肌で感じられました。HisenseのCEOはCES2010のキーノート・スピーチ(基調講演)の一角にマイクロソフト、インテル、フォードなどのCEOと並び登場していました。ちなみに日本メーカーのトップのキーノート登場はなかったようです。


CES2010

新規分野で覇権を確実に

CES2010の目玉は何と言っても3D(3次元)TV。CES2009でも兆しは見られましたが今年は「3D元年」といわれるように、3次元立体放送に対応した3Dテレビが一気に開花しようとしています。特に前述のFPD-TV市場で韓国勢にシェアを奪われた日本メーカーは、3次元対応の薄型テレビでの先陣争いに乗り遅れまいとの意欲が強く感じられました。

CES2010で展示・発表された製品を見ても、パナソニック、東芝、ソニーなどの製品は業界をリードする技術を集積したもので、新しいビジネス創出の可能性を大いに感じさせるものでした。これまで世界の新規市場をリードしてきた日本メーカーですが、果たしてこのまま順調に、新しい分野である3DTVで世界をリードすることができるのでしょうか?

井之上PRのスタッフの一人が、「日本メーカーに期待することは何か?」とCEAの幹部に質問を投げかけたときに返ってきた答えは次のようなものだったそうです。「日本メーカーは技術的にも優れている。業界で今後も重要な役割を果たしていくだろう。しかし、日本メーカーを目標にしてきた韓国企業などと比較すると、マーケティング力が劣っている。」と両者間のマーケティング力の差を指摘し、「例えば韓国メーカーは、FPD-TVの販売に関して米国、欧州などそれぞれの地域で徹底的なマーケット・リサーチを行い、その結果を細かいところに反映させ、デザイン変更を行なうなど成功に導いている。日本メーカーは技術だけではなく、マーケティングに立脚した製品開発にもこれまで以上に注力する必要があるのではないか。」

日本が高度成長を支えたときに語られていた、「良いものを作れば売れる」といった神話はもうすでに遠い過去の話です。これからはマーケティングを強化し、日本市場だけでなく中国をはじめインド、ブラジルなど新興国を含めた世界市場をターゲットとしたビジネスを展開していかなければ、日本の大手といえども生き残れなくなる、厳しい時代の到来が目前に迫ってきています。
日本メーカーは現在、3DTVで技術的には世界をリードしているといわれていますが、これをビジネスとして拡大してくためには、ハード面だけでなく3Dコンテンツなどの充実が不可欠。そして日本企業が苦手とする国際標準化の問題にも直面するはずです。

新規ビジネスを成功に導くためには、必要な要素は国籍を問わずさまざまな企業・団体と積極的に連携し、それらを取り込み競争力を強化する。グローバル・ビジネスでは当たり前のことですが、英知を集めて新しいビジネス分野を日本企業主導で創出して欲しいものです。なんとしてもこれ以上のジャパン・パッシングは回避しなければなりません。

日本企業にはアライアンスを組むにせよ、国際標準化を実現させるにせよ、強力なパブリック・リレーションズ(PR)なしには実現できないことを理解する必要があります。なぜなら競争原理が働くところでパブリック・リレーションズは大いに機能するからです。

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