パブリック・リレーションズ

2009.03.07

迷走する政治〜政治システムを変えるチャンス

こんにちは井之上喬です。
皆さんいかがお過ごしですか?

3月3日、小沢一郎民主党党首の第一公設秘書が、政治資金規正法違反の容疑で逮捕されました。資金管理団体をめぐる違法献金事件で小沢代表が検察との全面対決を宣言するなど、多くの問題を抱えた自民党から舞台は一転して小沢代表と民主党に変わったかの様相を呈するものの、その後の政府高官発言で、与党自民党の捜査関与の可能性について批判が高まり複雑な事態に進展しています。

1982年、中曽根首相誕生から2008年9月麻生政権誕生までの25年と10カ月あまりの間で、実に15名の首相が誕生・交替しています。特に小泉政権後の政治は迷走状態にあるといえます。今回は日本がこの問題に今後どのように取り組むべきかについて考えたいと思います。

問題は自民党から民主党へ移るのか?

今回の逮捕劇は、麻生政権の支持率が10%を割りかねない危機的状況にあった与党自民党を勢いづけたかのようにみえますが、政局は自民党から一転して小沢代表と民主党に移ったのでしょうか?小沢氏を支持する民主党執行部は苦境に立たされる中、政治不信は増大するばかりです。

しかし3月5日、政府高官による「自民党議員に波及する可能性はないと思う…」発言で、民主党の鳩山由紀夫幹事長は6日、今回の逮捕劇に疑念を呈しています。つまり、自民党には及ばないことを政府筋が明かにしていることは、政府筋と検察の間で何らかの約束事(できレース)が存在しているのではないかと指摘。その後メディアは、2つの政治団体が小沢代表の資金管理団体「陸山会」以外にも、自民党の二階経産相、尾身元財務相、森元首相にも献金していたことを取り上げ混乱状態。

特に政府の捜査関与の可能性については批判が高まる一方。問題の政府高官が官僚トップで元警察庁長官の官房副長官であることも判明し、官僚との全面対決を目指す民主党への意図的な行為の可能性が指摘されています。

現在の官僚システムを変えようとする民主党、一方、維持する側に立つ政権与党の自民党の対立構造を考えたときに、選挙に向けて両党が臨戦態勢にあるこの時期、「発信源が官僚トップ」とする話が事実だとすれば、心底ゾーッとするものを感じます。

企業・団体献金全面禁止へ

現在、共産党以外の政党は「政党交付金(国会議員5名以上、もしくは国政選挙での得票率が2%で国会議員最低1名在籍)」を受け取っています。議会制民主政治における政党機能の重要性にかんがみ、平成6年の選挙制度及び政治資金制度の改革と軌を同じにして、国による政党への助成制度を創設したもの。

平成20年9月12日付けの総務省の発表資料には、平成19年度の寄付収入の内訳は、政治団体の寄付が152億円で最も多く、以下、個人の寄が48億円、法人等の寄付が39億円の順で個人の寄付は全収入の約5分1とまだ少ないのが現状。毎年の政党交付金は国民の税金で賄われており、その総額は直近の国勢調査人口に250円を乗じて得た額を基準として予算で定められ、年間約300億円。

企業と政治の癒着は古くからある話。企業や団体献金は法整備上完全なものにするには多くの問題があるようです。企業とのしがらみを断ち切るためには思い切って企業・団体献金を廃止することも重要な選択肢といえます。

その場合、期待されるのは個人献金。米国の大統領選でオバマ陣営は、インターネットでの個人からの小口献金で、2年間に米国選挙史上最大の6.5億ドル(約650億円)を集めたことが明らかにされています。この数字は、史上初の黒人大統領がSNS大手のフェイスブックなどを通して学生など若者層から史上最大の募金を行った結果の数字。

日本で政治家個人への個人献金で簡便な方法として考えられている、クレジット・カード支払いの現状は楽観的ではありません。知り合いの政治家によると、個人の政治家にとって、クレジット会社と交渉し決済システムを構築しても、それに見合うだけの献金がなく、ほとんどのケースでカード支払いは行われていないとのことです。それでは思い切って各政党が、共同で登録された政治家への個人献金を受け付ける決済システムを構築し、政治家個人に負担がかからないようにしたらどうでしょうか。今後真剣に考えるべき問題かもしれません。

また思い切って政党交付金を国民一人あたり倍の500円に増額したらどうでしょう。政治の透明性が飛躍的に増し、企業との癒着で使われる不要な税金が大幅に節約できものと考えます。

私たちは変化の中にも現実的で表面的なものに振り回されることなく、大切なものを保持しなければなりません。大きなうねりの中にも動くことのないポイントがあるはずです。そこに本質をみつけることができます。「思想と技術」を伴ったパブリック・リレーションズ(PR)は、不動の本質を見失い迷走させることなく、混迷の中にあっても、確信に満ちた変革を成し遂げることを可能にするはずです。

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