パブリック・リレーションズ
2008.04.04
PRパーソンの心得 22 灯台のような光を放つ人
こんにちは、井之上喬です。
みなさん、いかがお過ごしですか。今年も4月を迎えました。満開の桜に囲まれ、新社会人として巣立つ人。あるいは新しい職場でスタートを切る人も多いかと思います。
早いもので、井之上ブログも今号で創刊3周年を迎えます。2005年4月、当時はまだブロガーの数も限られていました。今は誰でもブログを書く時代。個人発信型のサイトが社会の隅々にまで普及しています。
情報過多の時代。人々は溢れる情報の中で混乱し、「どの方向に向かって前進すればいいのか」自らを見失っているようにみえます。そのような時にも状況に揺さぶられず、最良の方向を示すことのできる人とはどのような人なのでしょう。
「風が吹けば桶屋が儲かる」
「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、風が吹いたら、その効果の連鎖の結果、桶屋が繁盛するという意味。ある事柄から思わぬ結果が生じるというたとえ話です。この思わぬ結果を先んじて読むことができれば、波のように押し寄せる変化の中でも、先を見据え前進することが可能となります。
変化を読む場合、リアルタイムでできるだけ生の情報を様々な角度から収集することに注力すべきです。縦軸としては、例えば企業状況などの現象的な情報、横軸は、その背景や周辺情報などの状況的な情報、これらの縦横に渡るきめ細かい情報を収集すること。これで物事を俯瞰する素地が整います。
そして、この情報氾濫の時代には、データをどう読むかが事態の明暗を分けます。その基本は意外にシンプルです。私心を無くして物事を素直に見据えてみること。集めた情報を当事者の個人や組織、そして、それを取り巻くパブリック全体の視点で俯瞰してみることです。感覚が研ぎ澄まされ、頭の中に蓄積された情報と張り巡らされたアンテナが動き出します。ここで様々な角度から原因を眺め、導かれる結果について知恵を働かせてイメージしてみます。すると、データには見えないものが見えてきます。風が吹いたときに、思いもよらない事象のつながりや解決法、そしてその行方が連鎖の結果みえてくるはずです。
自分の羅針盤を持つ
混乱の中でも動じることなく正しい道を見極める。これを一貫して行なうには確固たるベースがどうしても必要です。そのために自分なりの羅針盤を手に入れること。
良心や倫理観といった判断基準。これらはどのような行動をとる場合にも私たちに大いなる英知を与えてくれます。ここに志という逆境にもぶれない強い目的意識をプラスする。これらの要素をバックボーンとして自らの中に持ち、自分を律する強さと一貫性を築いていかなければなりません。
また同時に大切なのは公の意識。「自分がどんなことで社会に貢献できるか」という事を自分なりに追求して考える事。そして自分の立場でできることを実行していくことです。
PRパーソンで言うなら、クライアントや所属する組織とそれらを取り巻くパブリックの利に資するような解を求め続ける。そしてそれぞれのパブリックに対して何が適切であるかを真摯に考え、それを形にすることです。これは社会をより良い方向にリードしていくことと同義で、PRパーソンの使命でもあります。つまりPRパーソンには、個人や組織体が適切な方向へ導くサポートを提供することで社会をリードしていくことが求められるのです。
ドイツの詩人ゲーテの言葉、「人々のあるべき姿を見て接し、彼らがなりうる姿になるのを助けてあげなさい」という意識。PRパーソンにはこのような心構えが必要なのだと思います。
いま世界は混乱のなかにあります。迷い続けている私たちを導くために、暗闇に輝き続ける灯台のような光。いま社会に必要なのはこのような光を放つ存在です。皆さんには、社会との関わりの中で常に鍛錬し、自分の周囲が揺らいだとき彼らに正しい位置を指し示すことのできる、灯台の光のような存在になって欲しいと願っています。
3年間にわたり、160回のブログを発行させていただきました。様々なテーマを皆さんとシェアできたことを非常に嬉しく思います。今後ともパブリック・リレーションズに関わる問題や時事問題など、皆さんと一緒に考え、将来を見つめて行きたいと思っています。今後ともご愛読の程、よろしくお願いします。