パブリック・リレーションズ

2008.05.31

リンデンラボ社フィリップ・ローズデール会長初来日〜セカンドライフ(SL)の未来を語る

こんにちは井之上喬です。
もう6月、雨模様の毎日ですが、皆さんいかがお過ごしですか?

先日、インターネット上の3次元仮想世界「セカンドライフ」を運営する米国リンデンラボ社の創設者フィリップ・ローズデール会長が来日しました。来日の目的は、日本市場の視察および、東京ビッグサイトで開催されたアジア最大級の仮想世界イベント「Virtual World Conference & Expo 2008」で基調講演を行うため。また期間中、政府機関、放送、教育、技術、ソリューション・プロバイダー、エンターテイメントなどセカンドライフ内の様々な分野で活躍されている方々をお招きし、ローズデール会長との意見交換会(ラウンドテーブル)も開催されました。

小学校でコンピュータ製作、高校で起業

リンデンラボは、私の経営するPR会社井之上パブリックリレーションズの顧客企業。セカンドライフの日本社会への浸透のために、昨年8月からPR業務を受託しています。世界会員数も1年前は約700万人だったものが今は倍の約1400万人と堅実にその数を伸ばしています。

フィリップはコンピュータが大好きな少年。小学校4年で既に基板を組み立てコンピュータを製作。高校2年には、コンピュータのソフト会社を起業していたといいますから技術的センスだけではなく商才もあったようです。

ここでは、先に紹介した日本滞在中の2つの主要イベント(本文最後の、関連情報参照)についての説明を省きますが、滞在中にローズデール会長が発した明確なメッセージを3つほど紹介します。

1つは、インターネットは国境の概念を払拭したが、言語の壁は残っている。Web上では外国人同士が、英語、ドイツ語、ロシア語、日本語などで同時にコミュニケートができないが、セカンドライフ上では言語を共有できない人でも60名が同時に時空間を共有できる。

2つ目は、将来はかってのインターネットがそうであったように、技術革新によって利用がより簡便となり、オープンな環境でのユーザビリティの向上(ex:携帯電話からの利用やマウスだけでの操作)による利用者の大幅な拡大が見込める。他のメタバース(仮想空間)とのアバター(化身)の相互乗り入れも実現し、10年後の利用者は現在の100倍になりWebを追い越すだろう。

3つ目は、SL上の成長段階を示し、初期には遊びやさまざまな創造活動を喚起し、次に教育機関による活用(現在全SIMの約15%を占める)を促し、そして最後に企業内ツールとしての活用を含めた、PR、マーケティング、eコマースなどのさまざまな利用が拡大していくとしています。

ローズデール会長と筆者

リアルタイムで世界の人々と友達

上に挙げた3つのメッセージの中で、私の興味は特に最初の、SL上における異なった言語でのリアルタイム・コミュニケーションに向かいました。確かにこれまでのインターネットは、英語、ドイツ語、ロシア語、日本語などそれぞれ独立した言語空間を持っており、双方が共有できる環境にはありません。それぞれの言語によるコミュニケーションはグループ化されたり限定されています。

これに対してセカンドライフの場合、言語に頼ることなくコミュニケーションが図られるようになっており、3次元映像とエンターテインメント性を強調することで言語障壁を乗り越えられるよう工夫されています。いわば、ファッションや音楽、身振り手振り(ゼスチャーやアニメーション)、そして創造活動などによってリアルタイムで時空を共有することができるわけです。SL内で聞こえるサウンドにしても3次元で遠近感を持ち、前後、左右から聞こえてきます。

ローズデール会長自身、セカンドライフを自ら体験し最も感動したこととして、来日前に日本の「togenkyo(桃源郷)」というSIM(島)で翻訳ツールを入手し、日本人とチャットを果たしたことだとしています。この翻訳ツールはユーザーが開発し無料で配布しているもので、「これがセカンドライフの素晴らしさと」語っています。

時空間をリアルタイムで共有できることにより、情報伝達手段は従来のインターネットと比べ異なったものとなります。単に映像や文字だけの伝達だけではなく、仮想空間ならではの相手とのリアルタイム・コミュニケーションを可能とし、買い物であれば、訪問する店舗の店員(説明員)との会話を通して、顧客である化身が3次元で陳列されている商品への理解を深めたり、購買決定を容易にすることができます。つまり、現実と同じように双方向コミュニケーションによる疑似体験ができるというわけです。

ローズデール会長のメッセージで2つ目の、技術革新が普及スピードの鍵を握るとする話も興味深いものでした。彼は現在のバーチャル・ワールドはまだ発展途上にあると述べています。

これは私自身の体験ですが、インターネットの実用を初めて目の当たりにしたのは1990年に所用でパリに出張したとき。英国人のビジネスパートナーが市内のホテルの壁に突き出した電話回線でeメールを使っていたのを不思議な感覚にとらわれて見ていたことを覚えています。その頃日本は、インターネットの名前は耳にするものの、ビジネスはもとより一般でもほとんど使われていませんでした。インターネットの世界的本格普及は、95年「ウインドウズ95」の発表とその後のブロードバンドの普及。利用者は飛躍的に拡大し、その数は現在10数億人。

セカンドライフにおける日本人のアクティブ・ユーザー(月1時間以上)の月間平均滞在時間は、世界平均の50時間に対して70時間と圧倒的に多く、世界上位20カ国の中でトップ。

現在IBM本社ではさまざまな試みが行われています。具体的には、企業の会議はSL上で成立するとし、機能向上によりゼスチャー表現がより容易になることでコミュニケーションが深化するとし、自社内で世界会議や新製品の説明会、ショップの設置(eコマース)を行うなど積極的にビジネス活用の実践と研究に取り組んでいます。

ちなみに社名のリンデン(Linden:菩提樹)は創業時の会社がサンフランシスコのLinden Streetにあったことに由来しています。フィリップは4人の子供(2男2女)の父でもあり家族思いで、そのスタイルは極めて自然体。オープンで明るい性格は、セカンドライフのコンセプトそのものです。自宅は、現在の会社へ歩いていけるほどの所にあるようですが、日本製オートバイで毎日通勤。毎朝7時にはオフィスに出勤しているようです。

セカンドライフが一般へサービスを開始して5年。現在さまざまな分野での取り組みが見られます。慶応大学では、手足の不自由な人が脳波を使ってセカンドライフ(仮想世界)のなかで散歩・会話できる、世界初の実証実験を成功させたり、内閣府では、災害時の訓練教育をセカンドライフ上で様々な疑似体験により効果的に行う取り組みを検討するなど、多方面の方々が利用しています。

わずか3日足らずの滞在でしたが、ローズデール会長のセカンドライフへのゆるぎない自信と、世界を結ぶその未来が、人類にとって有益なものとなるであろうことが感じられ、日本社会への普及に新たに心を引き締めながら彼を見送りました。

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<関連情報>
Virtual World Conference & Expo 2008:
http://virtualworld-conference-expo.net
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2008/05/29/19742.html
ラウンドテーブル:
http://www.secondtimes.net/news/japan/20080530_roundtable.html
http://www.keio.ac.jp/pressrelease/080526_2.pdf

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