パブリック・リレーションズ

2005.05.02

パブリック・リレーションズ(PR)を成功に導くキーワード2.双方向性コミュニケーション(Two-Way Communication)

こんにちは。井之上喬です。

ゴールデン・ウィークもたけなわ、皆さん如何お楽しみですか?

さて前回、パブリックリレーションズ(PR)の定義を支えるキーワードは、「倫理観」「双方向性コミュニケーション」「自己修正」とし、まず始めに「倫理観」を紹介しました。きょうは「双方向性コミュニケーション」についてです。

コミュニケーションによる情報の流れは、一方向性と双方向性があります。一方向性は文字通り、情報発信者が相手に情報を与えることを意味します。双方向性は、情報発信者と情報受信者の情報のやり取りが双方向の形をとります。双方向性という概念は、コンピューターや電気通信の分野などでも盛んに使われています。

米国で歴史的発展を遂げるパブリック・リレーションズを、4つのモデルに分類したジェームズ・グルーニッグは、一方向性のコミュニケーションに対して、双方向性コミュニケーションを非対称性と対称性の2つに類型化しました。

非対称性の双方向性コミュニケーションは、組織体(情報発信者)がパブリック(ターゲット・一般社会)を説得、同意させるための手法で、パブリックからのフィードバックも発信された情報の効果を測るために用います。
一方、対称性の双方向性コミュニケーションは、情報発信者とパブリックの相互理解を目的とした手法で、双方が情報発信者兼受容者になり、フィードバックも相互理解促進のために用いられると定義しています。

両者とも情報流通は双方向です。しかし、前者は、情報発信者が有利となるように情報受信者に影響を与え、変容させていくのに対し、後者は、互いに影響を与えあい、双方が変容していく点に大きな違いがあります。よくあるケースですが、企業が極端な○○イズムを打ち出すときは非対称性モデルを使っていることになります。パブリック・リレーションズに最も適した手法は、後者、つまり、バランスのとれた対称性双方向性コミュニケーションにあるといえます。

パブリック・リレーションズは、最短距離で目的を達成する手法です。ターゲットとするパブリックと良好な関係を築くことが、結果的には、よりスムーズに目的を達成させることを可能にします。つまり、双方が互いを知り、倫理観に支えられ、双方が必要な修正を行い歩み寄り、双方にとって良い関係を醸成することが、パブリック・リレーションズを成功に導く鍵となるのです。

対称性の双方向性コミュニケーションを実現するには環境も大切です。西欧社会ではキリスト教の影響から、組織のヒエラルキーなどを超えて、個人として自由に意見交換できる土壌がありますが、日本の組織では、階層意識が強く、双方向性コミュニケーションの妨げになることもあります。個人の意識がフラットな状態で、つまり対等に情報交換、意見交換できなければ、グルーニッグが述べている双方向性コミュニケーションは成立しません。その実現には、階層意識を取り除き、意見を自由に言い合える環境作りが求められます。

対称性の双方向性コミュニケーションを可能にするもうひとつの要素が「自己修正」という概念です。私は、この対称性の双方向性コミュニケーションによる互いの変容に「自己修正」が機能として加わったときに、真の意味(21世紀型)のパブリック・リレーションズが実現すると考えています。異なった複数の個人や組織体が互いに良い関係を保つためには、こうした違いを受け入れ、修正することが自ずと必要になるからです。
来週は「自己修正」についてお話したいと思います。

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