趣味

2010.02.22

私の心に残る本31 『聖書に隠された成功法則』 〜究極の人生指南書が登場

『聖書に隠された成功法則』 松島 修著こんにちは、井之上喬です。
みなさん、いかがお過ごしですか?

さて今回は、最近発売されたばかりの松島修さんが書いた、『聖書に隠された成功法則』(2010、サンマーク出版)をご紹介します。著者の松島さんは、日本で最大規模の契約顧客数を誇る投資コンサルタント。有料・無料を合わせて約3万人のメルマガ会員をもち、最近の投資業界で盛んになっているFXを日本にいち早く紹介し、業界では第一人者といわれるビジネスマン。

本書では、松島さんが「聖書」に基づいた「成功法則」を解説しています。人類の大ベストセラーである聖書。2000年の1年間だけを見ても、世界中で配布・販売された数は約6億3300万冊(国際聖書協会)。聖書の解説書は数多くありますが、これまで「神」という存在には深く触れず、何か抽象的な存在に置き換えることで、教養として読み解かれている書籍は少なくありません。

しかし本書の特徴は、聖書解説の王道である神の概念にストレートに言及しつつ、宗教を排除した実践的な成功法則を紹介しているところにあります。著者のビジネス体験や時事的な話題も随所に盛り込まれ、地に足が着いたビジネス書ともいえます。

自分が「最高の存在」であることを知る

本書が昨今流行の自己啓発や成功哲学に対し、真正面から異議を唱えている点も新鮮で興味深いところです。
松島さんは、人間は神に似せて創造された傑作であり、「人間のステイタスは、神が創造したものの中で、最初から最高の地位にあるのです」と語っています。これは今の限界を突破し、これ以上ないほどの成功を遂げた姿こそが私たちの本来の姿である、という逆転的なセルフイメージですが、ここにこれまでの「成功哲学」書が唱えてきた「自己実現」との根本的な違いあると言います。

「自己実現とは、自分で定めた目標を目指すことです。神実現とは、すでに神があなたに与えている目的に向かって進むことなのです」(31頁)と、自己が設定した目標や理想を強調するあまり、「それに成り得ていない自分」という負のイメージが、成功を困難にさせると説いています。神により与えられた目的に向かって歩まず、自己判断で目標設定し、人が本来進むべき道を進むことなく目標を達成した場合、虚脱感に襲われることがあるとしています。根拠のない自己実現は「諸刃の刀」だと論じているのです。

自己が持ち合わせていないステイタスを獲得するのではなく、「(神から与えられた)本来のステイタスを回復するだけでよい」とするこの生き方を、松島さんは自己実現に対比して「神実現」と表現しています。

成功のコツは、本来の自分の姿を悟り、それと一致した自己実現へ歩みだすこと。松島さんは、これは自己実現ではなく、神実現であるとしています。また、世の中で考えられている1)金持ち→成功→幸福、という実現プロセスは間違いであり、1)幸福→2)成功→3)お金持ち、というプロセスこそが正しいと説きます。

また本書の中で松島さんは、「宗教」と「信仰」の違いに言及し、「聖書は宗教書ではない」と断言しています。そして、これまでの伝統的な聖書解釈から決して逸脱することなく、むしろそれらを大切に保持しながらも、「宗教と信仰は、一見似ていますがまったく異なるものです。宗教と信仰を簡単に分けるとすれば、宗教は人を束縛するものであり、信仰は人を自由にするものです」(199頁)と語っています。

そして信仰とは、神実現の土台となることを受けとめるべきだとしています。つまり、

  • 人は、それぞれ目的を持って神によって創造された
  • 人は、神に似せて創られた最高傑作
  • 人は、神から愛されている

ということを受け止めることだと述べています。
宗教性を排除して、聖書への純粋な信仰を描こうとしているのも興味深い試みといえます。

タイプ別の成功法則を探る

本書のもう一つの特徴は、中盤で詳しく紹介されている、「4つの生き物」というタイプ別成功法則です。「人それぞれ性格・資質・能力・感性などが違い、成功の道のりも違います。普遍化できる部分もあれば、タイプ別に分けて考えなければいけない部分もあります。」

これまでの一元的な成功哲学では、その手法が当てはまる人も、はずれる人もいましたが、本書では聖書に秘められた4つのタイプを紹介することで、誰もが成功できるタイプ別対応策を伝授しています。

そして、天使(ケルビム・セラフィム)の顔に描かれた1)「獅子」2)「雄牛」3)「人」4)「鷲」の4つの生き物を解説し、チェック・リストによる気質診断などで、楽しみながら自分の資質と才能、成功のためのポイント、陥りやすい罠、対応策などを分析してくれます。

最初の1)の「獅子」タイプは、外交型(リーダーシップ、親分肌、人の中で生き、人の必要を満たそうとする、人の愛を必要とする)。次の2)「雄牛」タイプは、目的志向型(わき目も振らずに目標に向かって直行する、目的達成のために人生をささげ費やす、集中力があるから受験勉強などが得意、目標設定し、達成すると達成感・幸福感を強く感じる)。

また、3)「人」タイプは、内向型(常に自分の内面を深く見つめる、感受性豊か、繊細な神経で周囲に心地よい気遣いができる、心が動揺しやすく、言動が情緒的)。最後の4)「鷲」タイプは、鳥瞰型(高い視点から物事を見る、常に将来的なことを見ながら行動できる、まだ見ぬ未来を予測し期待をする、型にはめられるのが苦手・協調が苦手)。

上記4つの生き物の気質は、人によってさまざまなブレンドがありますが、ほとんどの場合は、どれか一つの気質が色濃く出るようです。本書ではこの4つのタイプの組み合わせやビジネス事例などが書かれています。松島さんは、この4つの気質が統合された姿こそ理想的な人間像であり、その手本がイエス・キリストだと教えています。気質診断は、このURL(http://www.the-status.com/shindan1/)から簡単にチェックできますので試してみてはいかがでしょうか。

斬新な切り口と平易な文体で読者の知的好奇心を刺激する本書は、奥深さと分かりやすさを備えています。たとえば、世間の偽りの成功法則が一見すると聖書と良く似ていますが、その理由として「偽札には独自デザインはありません。それでは誰も騙されないからです。騙すためには、本物のお札に極力似せて作ります」と説明。

正しく見分けるためには偽札を研究するより本物の紙幣をしっかり覚えることが一番有効と薦め、「同様に、私たちが偽の成功法則に騙されないために一番よい防衛策は、本物の聖書に深く触れることです」と本物に触れることの重要性を説いています。

いま国際社会は、環境問題や金融問題、貧富格差、地域紛争、企業倫理の欠如などさまざまな問題に対する回答を模索しています。リーマン・ショックは私たちに、お金儲けに奔走した結果がもたらす人間性喪失の怖さを教えてくれました。松島さんの語る神実現の視点は、それらすべてに対する答えへの共通基盤とも言えるでしょう。

何が正しいのかを見分けていくため、今ほど「本物に触れる」ことが必要な時代はありません。松島さんは「自分だけでなくまわりの人をも幸福にできる人こそが真の成功者です。」と語ります。周りにも成功を波及させていくライフ・スタイルとストラテジーです。これはパブリック・リレーションズ(PR)における、リレーションシップ・マネジメント(良好な関係性の維持)の概念にも共通しています。パブリック・リレーションズを発展させることは、松島さんが提唱する神実現をスムーズに実践していくための大切な手立てとなるでしょう。

個人と社会のあるべき姿を見出すために深い示唆を与えてくれる一冊です。ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。

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