趣味
2009.06.15
私の心に残る本27 松下幸之助著 『道は無限にある』
こんにちは、井之上喬です。
先週、本州に梅雨入り宣言がありましたが、みなさん、いかがお過ごしですか。
かつてない混迷の時代にあって、さまざまな難題が身にふりかかる今日、私たちは困難な状況にどう立ち向かい将来へつなげていくべきなのでしょうか。今回は、松下幸之助が著した『道は無限にある』(2007年、PHP研究所)をご紹介します。
本書は、1975年出版されて以来ロングセラーとなった本が新装発刊されたものです。70年代前半は、第一次オイルショックのあおりを受けて、日本経済が苦境にたたされた時代でもありました。 本書では、松下さんが数々の経験を通して、読者に激しく変化する状況に翻弄されることなく生きるためには何が必要かを力強く語っています。
どんなに世の中が乱れても
「人生においては迷うこともある。迷わなければならない。迷うからこそ、道をはずさずに進んでゆける」
ゼロから出発し、松下電器(現・パナソニック)をグローバル企業に築きあげた松下さんも、初めから全てが順風満帆であったわけではありません。 むしろ、その道筋は困難の連続でした。創業初期には、明日支払うお金がないということも度々で、大晦日に、夜中まで集金に奔走することもあったといいます。
しかし松下さんは、「困難に直面すれば新たな道が生まれる」という信念を崩しませんでした。松下さんは、難しい局面においても諦めず、新しい道が開けるまでやり尽くすという姿勢で取り組み、松下電器を世界企業にまで育て上げたのです。
松下さんは、その極意を次のように述べています。
「志を失わないことが大切なのです。どんなに困難になっても志を失わずして、そうして敢然と受けるべきものは受け、くじけずして進んでいくということが、やがて自力再建という姿をもたらすのではないかと思うのです」
松下さんは本書で、このように長い経営者人生において何度も困難を越えるうちに、苦難を乗り越えることが楽しくなってきたとも語っています。
つねに喜びをもって
「人間というものは、気分が大事な問題です。気分がくさってくると、立派な知恵や才覚を持っている人でも、それを十分に生かすことができません」
松下さんは生涯にわたり、スピード感を持って、あらゆる方向に向かって進化発展のために努力していく姿勢を貫きました。その根底には、つねに「限りなく進歩していくという過程を楽しみ、喜び、それを感謝するという姿」がありました。
松下さんは苦しいとき、普通の人なら不平不満に陥るところを、むしろ困難がやってきたことに感謝し、それをどうしたら楽しめるか、どうしたら喜べるかということに集中しました。そうすることで、松下さんは喜びに満ちた人生を自ら実践していたように思えます。
松下さんは、苦しみを喜びに変える狭間にこそ、成長のチャンスやビジネスのチャンスが隠されていることを本能的に知っていたのでしょう。そして、松下さんは、そこに花を咲かせるための努力を一切惜しみませんでした。
また松下さんの言葉の中に、横綱の話を例にしながら、日ごろの訓練を怠らないように語っているところがあります。横綱のように、1分間の土俵での勝負のために毎日2時間も3時間も稽古をつんでこそ勝負にも勝つことができるとしています。また毎日の訓練があるからこそ、チャンス当来のときにも力が発揮できると説いています。パブリック・リレーションズ(PR)実務家の心にしみこむ言葉です。
困難な時代をいくたびも乗り切った松下さんの言葉には、時代を超えた説得力があります。一度手にとってみては、いかがでしょうか。