趣味
2008.04.11
心に残る本 15 大川従道の『非まじめ牧師のジョーク集』
笑いは動物のなかで人間にしかできない行為です。 先日、笑いに焦点を当てて書かれた本を戴きました。それは『非まじめ牧師のジョーク集』(2007年、朝日新聞社)。手にとってみると、これがなかなか面白い。ページをめくる度に「クスッ」と笑いがこぼれてくるのです。
しかも各ストーリーの中で物事の核心がみごとに突かれています。中にはドイツやアメリカ、イギリスなど様々な民族性を取り上げたジョークもあります。 本書は、読み進むうちに世界の常識も勉強できるコンパクトで役に立つ本です。
「恵みのツケと罪のツケ」
本書の著者は、会員1000名以上を擁する大和カルバリーチャペルの大川従道牧師。大川牧師は、説教の冒頭で、必ずといっていい程ジョークを連発。この本には彼の素直な気持ちで表現されたジョークが63の話にまとめられています。
大川牧師は、どうしてここまで笑いを大切にするのでしょう。初めて集った人でも人間の壁を越えてひとつになることができる。大川牧師は、笑いにはそんな力があるからだといいます。どんな状況にある人でも笑いで救われる。これは本当のこと。全てのこだわりから解き放たれた瞬間、人は笑います。人間的な枠組みを超えた印しが笑いそのものなのです。
面白かったのは、「孫もマゴマゴ」という箇所。「恵みのツケと罪のツケ」のたとえ話です。中近東のある場所に「お代は、あなたのお孫さんにツケられます」と張り紙をしたバーがありました。そこに一人の男が訪れ、心行くまでお酒を楽しみます。
バーを出るときその男は、「代金は孫にツケといてくれ」といいます。するとバーの店主は「100ドル戴きます」と来ました。そのわけを尋ねると、「ええ、今夜の代金はお孫さんに付けさせていただきましたが、これはあなたの祖父様の分です」とやりかえされたというジョークです。
旧約聖書では、「私を愛し、私の戒めを守るものには、恵みを施して、千代に至る。しかし、罪は父の罪の子に報いて、3、4代に及ぼす(出エジプト記 20:5-6)」と記されています。
このように大川牧師は、軽やかな笑いを挟みながら、私たちに人生の正しい道とは何かを教えてくれています。
「互いの違いを楽しみなさい」
「理想的なヨーロッパ人」も思わず笑いがこぼれました。これは欧州のそれぞれの国民性をジョークにしたもの。「ドイツ人のようにユーモアがあり、イギリス人のように料理が上手で、フランス人のように運転が静かで、イタリア人のように規律正しく、….」と永遠に続くジョークです。
これはお互いのイメージを全て裏返しに表現したジョーク。このジョークは互いを笑い合うためのもの。 大川牧師は、「他人を茶化すときには自分も笑いの対象にすべき」として、お互いを笑う時にはまずは自らを笑う事から始めようといっています。
私たちがパブリック・リレーションズの活動を通して様々な人とコミュニケーションをする場合でも、ジョークが弛緩剤になることはよくあること。大笑いで互いを笑い合えたら、双方の相違点からくる違和感など吹き飛んでしまうのは確かです。大川牧師の「互いの違いを楽しみなさい」とする言葉を心に留めておき、どんな時でもジョークが言える余裕を持ちたいものです。
このように大川牧師は、時にはおやじ風のジョークも交えながら、本当に大切なものは何かを私たちに語りかけています。150ページ足らずの薄い本ですが、春の温かい日差しを浴びながら、この本をゆっくりと味わってみてはいかがでしょうか。あなたの顔もいつの間にか笑顔になっていることでしょう。