アカデミック活動

2012.05.28

「しなやかな標準化」とは〜グローバルビジネス学会 第一回セミナーが開催

こんにちは井之上 喬です。

先日、「グローバルビジネス学会:Society of Global Business(SGB)」のセミナーが開催されました。

このセミナーは学会が毎月一回行う会員向けの勉強会で、4月にスタートした学会にとっては第一回目のセミナーとなりました。一回目は学会理事長の小林潔司京都大学教授が講師を勤め、「国際技術標準化戦略をめざして」というタイトルでご講演いただきました。

そこには、「技術立国」を普遍的な国家目標に掲げる日本への多くの示唆があります。
また小林教授が、講演の中で強調されていた、「しなやかな標準化」は、グローバルビジネスを考える上での道標であると認識を新たにしました。ぜひ、皆さんともこの考え方を共有したいと思います。

これまでの日本の問題点

研究者としてのキャリアとして土木工学を最初に持つ小林教授は、日本が標準化戦略を考える上で抱える問題点を5つ列挙しています。

ひとつは、技術が優れていれば市場競争力があると考える技術中心主義、2つ目は、フレキシブルな資金調達を考えない資金計画の自己完結主義、3つ目の問題点は、狭い専門性の範囲の中でのみ技術を評価し、市場のニーズを考えない専門家主義、4つ目はシステムを構成するすべての要素に国産技術や技術基準を用いようとする国粋主義、そして5つ目の問題点は、要素技術にこだわるあまりシステム全体の構想力が欠如する要素技術偏重主義にあるとしています。

また、市場競争の形態変化についても言及し、世界はこれまで伝統的競争とされた価格競争や品質競争から、ビジネスモデル間の競争、つまり標準化競争や生き残り競争に移行していると論じています。
また道路交通事業におけるアセット・マネジメントについても語り、ベトナムの大学との連携による道路アセット・マネジメントに関する教育・研究活動について事例を紹介。

いくつかの解決すべき問題があるとしながらも、ベトナムの道路データを用いて、アジアでの京都モデル(日本が開発した標準化モデル)が適用可能であるとし、具体的には、道路建設に加えて維持管理ノウハウをパッケージで行うインフラ支援が可能であるとしています。

そのためには、競争関係にある世界に存立する2つの法体系(中東地域を除く)、即ちヨーロッパ(日本や他のアジア諸国を含む)中心のシビルロー(civil law:大陸法)とアングロサクソン諸国の英、米、加、豪中心のコモンロー(common law:英米法)との比較において、シビルロー型標準化モデルの適用が、それぞれの事情に合わせ開発・維持管理を行うカスタマイズ戦略の実現に適しているとしています。

しなやかな標準化

小林教授は、「単一の技術標準が世界のどこでも画一的に通用するというものではない」とし、前述の「技術標準のカスタマイズは必ずや必要となる」と断言。

さらに技術標準を展開することにより付加価値が生まれるとし、そこに、「標準を活用して実行する付帯事業やノウハウの販売、補完的製品の販売、ブランドや集客力の活用、リクルーティングや社内活性化策としてのブランドの活用、市場情報蓄積による顧客満足の向上等の新しいビジネスチャンスが生まれる」と語っています。

技術が複雑化すればするほど技術を活用するサービスの重要性は増加し、知的所有権をオープン・ソースとする場合、標準化の対象となる製品は無料で提供されるが、それを基盤とした製品の展示・説明や受発注処理、決済、品質保証、メンテナンス、サポート、インテグレーション、コンサルティング、教育・出版、講演、そしてブランド活用などの付帯事業は有効な収益事業の対象となるとしています。

またインフラ技術の場合、コア技術が国際標準であっても、安全・安心技術や健康、快適等の価値を付加するための付帯事業にビジネスチャンスが生まれることもあるとモデル化にる新市場創出の可能性を論じています。

そして日本人から見た「日本的技術開発・経営モデル」で海外展開を一方的に推し進めるのではなく、世界の自由貿易の根底となる国際標準化の流れにいかに合理的に対応していくかが重要としています。

つまり「厳格な標準化(one-size-fits-all standards)モデル」ではなく、それぞれの国の実情に合った新しい「しなやかな標準化(one-finds-own-size standards)モデル」をアジアの国々とのアライアンスに基づいて共同開発すべきと主張。

この、しなやかな標準化モデルを構築するためには、日本企業が得意とする要素技術やアセンブリ技術の発展と、現場での適用能力を思考した新しい経営管理技術やビジネスモデル、そして制度的プラットホームの構築・提案が求められるとしています。

またこれまで主流であった欧米流のquality control(仕様規定)型標準から、quality assurance(性能規定)型標準への移行。それを規範とする新しい技術開発・経営に関する国際標準モデルの具体的な提唱が求められると語っています。

これからは日本型だけを押し通すのではなく、「互いを尊重」しローカライゼーションを推進することによるWin-Win関係の構築が重要であるとしています。

グローバルビジネスを考える上で、パブリック・リレーションズ(PR)は欠かせません。
「互いを尊重する」と言う考え方には「倫理観」「双方向環境」「自己修正」が内在し、私の考えるパブリック・リレーションズと通じるものです。

小林教授の講演の中で、さまざまな分野で標準化を実現させるためには、パブリック・リレーションズが重要であると語っていたのが印象的でした。

小林潔司理事長の講演は、グローバルビジネスを考える上での不可欠な視点が示され、学会として大きな一歩が踏み出せるセミナーとなりました。

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