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2018.03.12
伊・ベネチアでの国際シンポジウムに参加〜「地球温暖化と脱炭素社会」をテーマに開催
皆さんこんにちは、井之上喬です。
3月1日、2日の両日にわたり、アルカンターラ社とベネチア国際大学(VIU)の共催により「変化への対応:地球温暖化と脱炭素社会」(Coping with Change: Global Warming and Decarbonization)をテーマに開催された国際シンポジウムに参加しました。当地へは2015年以来2度目の訪問となります。
会場は、イタリア・ベネチア潟に位置するサン・セルヴォーロ島にあるベネチア国際大学のキャンパス。島までは水上バスで10分程度です。同大学は、1995年に創立されたコンソーシアム(共同利用施設)で、世界中から16の会員大学が参加し、加盟大学からの教員による授業はすべて英語。日本からは早稲田大学が加盟しています。
アルカンターラ社は、高級自動車のシートをはじめとした多様なブランド商品で使用されている素材を提供しているイタリア企業です。今回は第4回目シンポジウムで、2016年の第3回シンポジウム『サステナビリティと企業価値』は東京で開催されました。
当時日本で開かれた初めての国際サステナビリティ・シンポジウムで、日本経済新聞、ベネチア国際大学、早稲田大学の協力を得たものでした。
世界から参画した有識者30名
今回も国際シンポジウムの講演者は、世界各国から、科学者、エコノミスト、研究者、企業経営者、サイエンスライターら約30人。地球温暖化と脱炭素化が人間の生活、企業の行動、情報発信に与える影響を考え、それらに対処するテクノロジーとイノベーションの役割について講演やパネルデスカッションが組まれました。
マッシモ・イングッシオ教授(イタリア学術会議プレジデント、ゲオルク・ケル博士(国連グローバル・コンパクト創立者、前エグゼクティブ・ディレクター、アラベスク・パートナー社会長)、ダニエル・クリンゲンフェルト博士(ポツダム気候影響研究所 所長室事務長)、そしてジョヴァンナ・メランドリ元文化財大臣(Human Foundation Giving and Innovating創立者会長、MAXXI財団チェアマン)ら多数の多国籍企業、国際的な専門家がその知見を述べ、地球温暖化や脱炭素化に関連する問題に対処するためのビジョン、投資例、技術的プログラムを披露しました。
日本からは、田中義和氏トヨタ自動車ミライチーフエンジニア)をはじめ、守谷隆史氏(本田技術研究所、FC開発シニアチーフデザイナー)、古谷博秀氏(産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所 可能エネルギー研究センター長)、千代亮氏(川崎重工業 水素チェーン開発センター シニアスタッフオフィサー)、大聖泰弘氏(早稲田大学、次世代自動車研究機構 特任研究教授/名誉教授)、山根公高氏(山根公高水素エネルギー研究所代表)、がキーノートスピーカーとして招かれました。
トヨタ自動車の田中義和氏は、水素ベースモビリティ構築に向けてのトヨタの取り組みを紹介。
「トヨタでは1992年から燃料電池電気自動車(FCEV)の独自開発を始め、2014年末に販売を開始しました。次のステップは導入コストを下げて、水素自動車の利用をさらにポピュラーにすること・・・」
そのほか日本からのスピーカーはそれぞれの立場から、将来の水素社会の到来を見据えた話が多かったように思います。
私は大会2日目午後のまとめのセッションでパネリストとして参画(写真右)。新技術や新しい運動を社会に伝えるコミュニケーションの役割としてのリレーションシップ・マネジメントの主柱となるパブリック・リレーシヨンズについてお話しました(写真右)。
閉会にあたりボラーニョ会長とウンベルト・ヴァッターニ学長は、今回のシンポジウムは意見交換を続けていくための、また学術界、科学者、世界的な専門家の交流を通じてソリューションを提案するための出発点と考えている、と述べて締めくくりました。
また今回のシンポジウムは日本のプレゼンスに関心が向けられました。日本からの参加者がまとまり、未来のエネルギー、水素(Hydrogen)について具体的に語ったことで世界の関係者に衝撃を与えたのではないかとの印象を持ちました。
左写真:右から3人目が筆者で隣は田中氏、そしてボラーニョ会長
写真右:左が筆者で隣はゲオルク・ケル博士、そして山田厚史氏(朝日新聞元編集委員)
短期的経営を強いられる世界企業にとって、長期的戦略に基づいた日本の参加企業の取り組み姿勢に高い関心が集まったように思います。
閉会翌日、前回乗れなかったゴンドラにようやく乗ることができました。
「グローバル市場ではブランドが競争力の一つとなっています」と前回のブログに記しました。サステナビリティはブランド価値として、また市場ポジショニングにおける差別化要因として、企業の重要な資産のひとつとなるものです。
アルカンターラ社はボラーニョ会長の強いリーダーシップのもとに、2009年以来継続して事業活動で発生したCO2の全排出量を測定・削減・相殺し、イタリア企業として初めて「カーボン・ニュートラル」認証を取得しています。
また、同社はブランド力を高め、世界で成功するためにリレーションジップ・マネジメントをコアとするパブリック・リレーションズ(PR)に注力するグローバル企業の一社ともいえます。