皆さんこんにちは、井之上喬です。
このところの温かさに誘われ、東京でも3月17日、桜(ソメイヨシノ)の開花宣言がありました。平年より9日、昨年より4日早く、観測・統計を始めた1953年以降で最も早かった2002年と2013年の3月16日に次ぐ3番目の早さだそうです。
皆さんの地域の桜の開花はいかがですか?
女性取締役登用で54カ国中49位の中東並み
東京での桜開花宣言の前日、3月16日の日本経済新聞に、個人的に非常にショッキングな見出しが目につきました。「日本、女性取締役登用に遅れ 中東並みの低水準 女性取締役が1人以上の比率、54カ国中49位」というものです。
(この調査は、100社以上の上場企業のデータが取れる54カ国を対象に、取締役会に1人以上の女性取締役がいる企業の割合が高い順にランキングしたもの。)
記事のポイントを紹介しますと、日本経済新聞がQUICK・ファクトセットの協力を得て調査したところ、女性取締役が1人以上いる上場企業の比率は日本が20.2%と、54カ国中49位にとどまったとのこと。何と、女性の社会進出が制限されている中東諸国と並ぶ水準で、女性取締役の積極登用を求める社会的要請とは裏腹にお寒い現状が浮き彫りにされ企業は早急な対応を迫られていることを示しています。
ランキングをみると首位はノルウェーで89.4%。インドが88.4%、中国が86.2%、イスラエル84.3%と続き、役職の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入が進んでいる欧州だけでなく、中国やインド、タイなどアジアでも上位に入る国が目立っています。
日本は主要経済国では最下位で、日本より下位にはヨルダン19.8%、クウェート16.1%、アラブ首長国連邦14.0%など中東諸国が並んでいます。
日本で女性取締役の登用が遅れているのはこれまでも指摘されていますが、1986年に男女雇用機会均等法が施行されたが、総合職で採用された女性の多くが離職した現実もあるのではないでしょうか。
サステナブルな視点からも女性登用を急げ
女性取締役の登用は喫緊の課題になっています。グローバルで環境、社会配慮などに取り組む企業を評価する「ESG投資」の流れは一気に強まっており、米国の機関投資家は女性取締役がいるかどうかを議決権行使の判断目安の一つに採用しているとのこと。
ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉。ESGに関する要素はさまざまですが、例えば「E」は地球温暖化対策、「S」は弱者や女性従業員の活躍、「G」は取締役の構成などが挙げられます。
その大きなうねりのなか、厚生年金と国民年金の年金積立金を管理・運用する機関である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、投資するために企業の価値を測る材料として、これまでのキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報に加え、非財務情報であるESG要素を考慮するESG投資を重視しています。
2017年10月、GPIFは投資原則を改め株式にとどまらず、債券など全ての資産でESGの要素を考慮した投資を進めていく、と宣言し日本でも一気にESG投資が注目されているのはご存知の通りです。
しかし、今回の日本経済新聞の調査結果は政府の肝いりがあるにもかかわらず、まだまだ世界から評価されるには程遠い現実にあることをまざまざと示しています。
記事は非常に興味深い点も指摘しています。それは、女性取締役の登用と収益力には一定の相関関係があるとのこと。ボストン・コンサルティング・グループによると、女性取締役の割合が20%以上の企業は10%未満の企業よりも自己資本利益率(ROE)が4ポイント高いということです。その理由としては、海外に積極進出するなどして収益を伸ばしている企業ほど、女性取締役の登用に前向きなためとみられる、と分析しています。
日本経済が好調な今こそ、企業はサステナブルな企業経営の観点からもグローバル水準で高い評価を得られるような、大胆な女性登用策に取り組むことが求められているのではないでしょうか。
このような環境でもパブリック・リレーションズ(PR)を活用し、企業がステーク・ホルダーとの関わりを通して、取り組み成果をしっかり社会に伝えていくことが大切です。