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2016.08.12
リオ五輪所感〜平和だからこそオリンピックを楽しめる!
皆さんこんにちは、井之上 喬です。
このブログを書いている今日(8/11)は、新たに国民の祝日に制定された「山の日」。夏休みの旅行先や家庭でリオからの五輪中継に一喜一憂されている方も多いのではないでしょうか。
リオ五輪では開催前からの大統領の職務停止、スタジアムなど競技施設工事の遅れやインフラの未整備、宿泊施設不足、国家的な財政問題、そして治安や伝染病感染リスクなど、ネガティブな情報が大きく報道されていました。
オリンピック難民チーム
開催さえ危ぶまれたリオ五輪の開会式で私が感動するシーンがいくつもありましたが、紙面の関係もあり2つだけ紹介します。
一つは、選手団の入場行進。選手が手にした「種」を一人ずつ会場に置かれた銀色のオブジェに植えていく行動が見られました。やがて葉を茂らせた木々が現れ、緑の五輪マークが夜空の下に浮かび上がりました。
この映像による演出を手掛けた映画監督のF・メイレレス氏は「地球全体が、人類が(自然破壊の)脅威にさらされている。自分たちの星を攻撃することはやめなければいけない。それがメッセージだ」と話したといいます。環境問題に真正面から光を当てた演出はとても新鮮でした。
二つ目は、今回初めてとなるオリンピック難民チーム、略してROT(Refugee Olympic Team)の登場。難民チームは。国際問題となっている難民問題への働きかけの一環であり、十分な環境がない難民となっている選手を支援し、世界のすべての難民に希望のメッセージを送ろうと構成されたチーム。
参加選手は10名で南スーダン、シリア、エチオピア、コンゴ民主共和国から参加している。オリンピック大会旗を掲げた難民チームがスタジアムに入場すると、大きな歓声と拍手とともに会場中で力強く温かいスタンディングオベーションが巻き起こりました。
開会式に出席したP・グランディ難民高等弁務官は、次のような趣旨のコメントを残しています。
「この巨大なスタジアムの大観衆が、難民の選手たちを一体どんなふうに迎えるのだろうかという期待と不安があった。しかし、選手団の入場が3か国語でアナウンスされると、人々は皆立ち上がって拍手を送ったのです。それは世界中の連帯の力強さを物語るものであった。」
感動的な開会式の余韻にひたる間もなく、8月21日までの17日間に及ぶ競技がすでに始まっています。様々な思いを胸にリオ五輪に臨んだ難民チームの一人一人にエールを送るとともに、その競技ぶりをこれからも見守っていきたいと思っています。
過去3回の夏季オリンピックが戦争で中止
今回のリオ五輪は31回目の夏季オリンピックとなります。そのうち3回は戦争で中止となったため実質28回目の開催となるとのこと。
1916年の開催予定だった第6回ベルリン(ドイツ)大会は 第1次大戦のため中止。1940年には第12回東京大会が 日中戦争を理由に開催を返上。続いて1944 年の第13回ロンドン大会が第2次大戦で中止となった歴史があります。
夏季五輪だけでなく冬季五輪についても1940 年の札幌大会と1944 年のコルチナ・ダンペッツオ(イタリア)大会が、いずれも 第二次大戦のため中止となっています。
また、東西冷戦下にあった1979年12月のソ連によるアフガニスタン侵攻を受けて、ソ連と政治的に緊張関係のあった米国のカーター大統領が、翌80年7月20日から始まるモスクワ五輪のボイコットを西側諸国に呼びかけるということもありました。
この結果、最終的な参加国数は80カ国(84年のロサンゼルス五輪は140カ国)となり、スポーツと政治の関わりが鮮明になる契機となった点も含め、近代五輪の歴史上の汚点として残っています。
オリンピック憲章「オリンピズムの根本原則」の2では、「オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励することを目指し、スポーツを人類の調和の取れた発展に役立てることにある。」と宣言しています。
世界の現況を俯瞰すると、タリバンやイスラム国(IS)による相次ぐテロ事件、トルコのクーデター、紛争や貧困に苦しむ中東やアフリカから欧州へ流入を続ける難民、そして米国では相次ぐ警察官による黒人射殺事件が頻発しています。
日本においても尖閣諸島沖での中国公船の活動や北朝鮮のミサイル発射実験などもあり、一触即発の危機を孕む事象が世界を覆っています。
日本は、リオ五輪の会期中の来週15日に71回目の終戦記念日を迎えます。終戦記念日が「戦没者を追悼し平和を祈念する日」とされているように、オリンピック憲章においても平和な社会を奨励することを目指しています。
前述のように、過去に戦争のため何回もオリンピック中止の憂き目を見てきましたが、いうまでもなく世界が平和であるからこそ、私たちはオリンピックを楽しむことができます。
私の会社(井之上パブリックリレーションズ)のミッションステートメントには、「パブリック・リレーションズ(PR)を通し、平和で希望のある社会づくりをめざします。」という一文を掲げています。
私たちは、パブリック・リレーションズ(PR)の専門家として2020年の東京五輪がより平和的な環境の中で実施できるよう寄与していきたいと思います。