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2015.10.15

NASAが「火星に水が流れている新たな証拠」を発見〜宇宙開発の革新的な技術やアイデアのコンペも

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

米航空宇宙局(NASA)は先月28日、火星に液体の水が流れている新たな証拠を発見したと発表しました(9/29朝日新聞)。

同時に探査機が撮影した「水が形成したとみられるしま模様を示す写真」が紹介されていました。新聞やテレビでこの報道に接し、改めて火星に興味をもった人も多いことと思います。

火星の生命探査の歴史

望遠鏡による火星観測に強い関心がもたれるようになったのは、19世紀後半から20世紀にかけてといわれます。火星の自転周期がほぼ24時間であることや四季の変化があることから、火星が地球に似ているという認識が生まれたようです。

当時は、明るい地形が陸地、暗いエリアは海と思われ、季節による色の変化は植物によるものと考えられたようです。やがて、火星表面にスジ状の構造が確認されると、これは火星に住む知的生物が建造した運河であるとする説まで登場してきました。

私が子供の頃、「火星人」といえばタコに似た生物をイメージしたものです。

これは、イギリスのSF作家によって書かれた1897年の小説『宇宙戦争』の中にタコのような宇宙人が登場しますが、そのイメージがそのまま定着したというのが有力な説のようです。

タコのような「火星人」はともかく、地球のすぐ隣の惑星に何か生物体が存在するかもしれないという想いに私は興奮し、火星に対する興味を深めていきました。

生物の存在を打ち砕いたのはマリナー4号でした。1965年にマリナー4号が撮影した火星の表面には、生物のいない荒涼とした砂漠が広がっていたこと。また、火星には生命にとって有害な紫外線を遮断する磁場が存在しないこと、加えて気圧が低く液体の水は存在できない等々、いずれも生物体の存在を否定する根拠が挙げられました。

その後も火星探査は続きます。1971年には、マリナー9号が火星周回軌道に到達。周回軌道上から約350日に及ぶ火星探査によって7000点以上の画像が得られたのです。

マリナー9号に送れること数日、ソビエト(当時)のマルス2号、3号が火星周回軌道に到達。米ソによる火星探査の競争が始まった時期です。
1976年には、バイキング1号が火星への軟着陸に成功。火星は高等な生物にとっては厳しい環境であっても、バクテリアのような生命体であれば火星にいるかもしれないという期待がもたれました。

1996年には火星からの隕石に生物の痕跡が発見され、NASAの研究者(デイヴィッド・マッケイ博士)が、火星起源の隕石に生物の痕跡らしき形状を確認したとサイエンス誌に発表。

2000年には火星からの隕石にバクテリアが生成する結晶が確認されました。 2002年、火星にメタンの存在確認、そして水の痕跡が2004年に発見され、2006年には数年前の新しい水流が、翌2007年には南極の氷が発見されます。

こうした発見を通して、火星での生命体の存在に期待が高まる中でのNASAの「火星に水が流れている新たな証拠」の発表は、「火星ファン」にとってまさに心躍る出来事でした。

火星での居住施設の設計コンペで日本人建築家たちが最優秀賞

もう一つ、「火星ファン」の私をワクワクさせるニュースが最近ありました(10/10朝日新聞夕刊)。

NASAが、2030年代に火星で建設する宇宙飛行士用の居住施設の設計コンペを行っていて、ニューヨーク在住の日本人建築家、曽野正之さん(45歳)たち「Clouds AO と SEArch チーム」の作品が最優秀賞に選ばれたというものです。

コンペは、宇宙開発の革新的な技術やアイデアを一般から募る試みの一つ。NASAが35年ごろに計画する有人火星探査で、宇宙飛行士4人が1年間、火星に滞在すると想定し、安全で快適に暮らせる施設(約93平方メートル)を募集したもの。火星にある材料で宇宙飛行士の到着前にできていることが条件となっていたようです。

最優秀賞に選ばれた曽野さんたちは、火星の極地に大量にある氷に注目。ロボットが地下から削り取った氷を溶かして3Dプリンターに流し込み、壁などを作ることにした。居住空間は、厚さ5センチの氷壁をドーム状に二重に覆い、内部は4階建てで、キッチンやトイレ、寝室などが備わっているとのこと。

氷壁を採用したことで、昼は外光が差しこみ、夜は砂漠の一角に明かりがともったように見えるといいます。「人類が火星に到達した記念碑となる文化的で美しい施設を提案したかった」と話しているとのこと。
実際に建設されるには技術審査などに合格する必要があるようですが、何とも夢の拡がるニュースではないでしょうか。

私は今、ベネチア(イタリア)のマリオットグランドホテルで、このブログをしたためています。ベネチア国際大学が主催するシンポジウムで講演するために、一昨日、到着しました。

次回のブログでは、風光明媚なベネチアでのシンポジウムの様子や私の講演内容について紹介したいと思います。

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