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2015.12.03

世界に類のないお年玉つき年賀はがき〜時代を反映する賞品の数々

皆さんこんにちは井之上 喬です。

師走を迎え、年賀状づくりに余念のない方も多いことかと思います。今年の年賀状の引受開始は12月15日(月)からで、地域によって違いはありますが25日(木)までに投函すると元旦に配達されるということです。私の会社では、年賀状のデザインも決まり、丁度、印刷があがってきたところです。

以前のブログ(2011年12月6日)でも年賀状の「むかし」と「いま」を紹介しましたが、今回はその続編的な内容で、お年玉つき年賀はがきの変遷を中心に紹介したいと思います(出典:フタバ株式会社が運営するサイト「年賀状博物館」)。

「当面の間」中止となった年賀郵便

今では、当たり前になっているお年玉つき年賀はがきの制度が始まったのは、1949年(昭和24)。前回のブログでも記しましたが、このお年玉つきという発想は、「官ではなく、民から」でたものだそうです。京都在住の林正治さん(当時42歳)のアイデアによるもだといわれています。

その背景には、1940年(昭和15)に、年賀郵便の取扱いが「当面の間」中止となり、翌41年(昭和16)の太平洋戦争突入以降は、さらに自粛の声が高まり、逓信省自らが「お互に年賀状はよしませう」と自粛を呼びかけるほどの状況がありました。終戦の年(昭和20)の正月には、どの家にも年賀状はほとんど届くことはなかったそうです。

林さんは、年賀状に賞品の当たるくじをつける、料金には寄付金を付加し社会福祉に役立てるといったアイデアをもとに、自ら見本となるはがきやポスターまでつくり、郵政省に持ち込んだといいます。

郵政省の会議では「国民が困窮している時代に、送った相手に賞品が当たるなどと、のんびりしたことを言っていられる状態ではない」との反論もあったそうですが、紆余曲折を経た後、採用が決定。世界にも類を見ない制度はこうして実現することとなったのです。

発売と同時に、この初めての年賀(専用)はがきは大きな話題を呼び、大ヒットします。戦後復興に向ける国民の思い、そして、伝統的な日本文化に基づく新年への祝賀の思い、そんな希望に満ちた気分に、この「夢のお年玉」はフィットしたのでしょう。

この年、年賀状の取扱量は大きく伸びます。これが起爆剤となり、年賀郵便の取り扱いは急伸し、1955(昭和30)年には戦前の記録を更新。その後も、同じペースで増え続けて1997年(平成9)には約37億通とピークを迎えることになります。

来年は最高額(10万円)の賞品

以前のブログにも記しましたが、第1回(1949年)のお年玉つき年賀はがきの賞品は特等が「ミシン」で1等が「純毛洋服地」、2等が「学童用グローブ」、そして3等が「学童用こうもり傘」でした。

この時代の庶民の夢のひとつに、ホームメイドで洋服をつくることがあって「ミシン」や「純毛洋服地」が賞品に選ばれたようです。当時の収入に比べ、既製服が高価だったということなのかも知れませんね。

また、「学童用グローブ」や「学童用こうもり傘」のように視線が子供に向けられているのも、ベビーブームの反映と考えられているようです。

その後、毎年の最高賞品(1966年以降は特等が廃止になり、1等が最高賞)を見ていくだけでも、時代の移ろいを感じることができます。

1956年(昭和31)には電気洗濯機、60年(昭和35)にはフォームラバーマットレス、65年(昭和40)以降はポータブルテレビや8ミリ撮影機・映写機セットなどが続き、84(昭和59)年には電子レンジが、86年(昭和61)にはビデオテープレコーダーが登場します。

平成に入ってからは、海外旅行や最新式テレビ、パソコンなど数点の中から1点を選ぶ形式に変わります。バブル景気とその崩壊、そして、その間に進行した消費の多様化を反映した結果でもあるようです。

80年代に入ると写真年賀状の普及が進み、印画紙に家族などの写真と賀詞をいっしょに現像したはがきが急増します。

平成に入っても増加を続けた年賀郵便は1997(平成9)年の約37億通をピークに、微減傾向が続いています。これは、景気の長期低迷が続いたことやインターネットの普及で電子メールが盛んになったことなどが、その理由が挙げられています。

しかし、現在でも国民1人あたり約35通の年賀状が出されているというのは驚きですね。

ちなみに来年のお年玉年賀はがきの賞品は、1等が旅行・家電・現金(10万円)などで2等がふるさと小包など、そして3等はお年玉切手シートとなっています。

年賀状は、長い日本の伝統を背景に、日本の大衆が育ててきた文化ともいうべきものです。また、パブリック・リレーション(PR)の視点からは、関係者とのより良い関係性を維持、発展を図るリレーションシップ・マネジメントの有用なツールとして捉えることもできます。

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