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2014.09.25

50歳を迎えた東海道新幹線、新幹線ビジネスは世界で通用するか〜絶え間なき技術革新の歴史を世界に発信しよう

皆さんこんにちは井之上 喬です。

50年前の1964年(昭和39年)の秋、東京オリンピック開催を前に東京に新たな交通機関が開業しました。1つは9月17日開業の東京モノレール、そしてもうひとつは10月1日開業の東海道新幹線でした。

特に東海道新幹線の開業は、東京と大阪を結ぶ日本の大動脈としてビジネスの世界を一変させただけでなく、日本人の生活を大きく変えるきっかけになってと言っても過言ではないでしょう。高速、安全そして大量輸送を可能にした、世界に誇るSHINKANSENモデルも確立することになります。

ビジネス、生活などでさまざまな恩恵を

週刊ダイヤモンドは、9月20日号で「新幹線50周年 魅惑のJR・鉄道」と題する特集を組んでいます。その中からいくつかを紹介します。

まずは新幹線がもたらしたものとして、1)ビジネス:現在1日約34万人のビジネス客を運び、時間短縮効果は数十兆円に。2)GDP:建設費だけでも数千億円がかかり、その時点でGDP押し上げに貢献しているが、他の経済需要創出効果も莫大。3)観光:東海道新幹線は平日約8万人、週末は約17万人も観光客を運ぶ。4)環境:二酸化炭素排出量は飛行機の5分の1、自家用車の8分の1。

当時の国家予算の1割に相当する約3000億円の建設費を投じ、「ピラミッド、万里の長城、戦艦ヤマトに次ぐ無用の長物」と揶揄された東海道新幹線ですが、50年経った今、私達はさまざまな恩恵を受けていたことに気づきます。

また、「新幹線って何がスゴいの?」では、過密ダイヤの安全を守る総合指令所。揺れないから快適な乗り心地。折れない車輪と耐久性高いレール。電気も生み出す超強力なブレーキ。社内はとにかく静か。飛行機がかなわない超大量の乗客数。速度と騒音に有効超ロングノーズ。自動で速度調整する賢いATC(自動列車制御装置)など日本の直接の鉄道技術だけでなくコンピュータ制御技術、素材技術、エネルギー技術、電子部品技術など様々な日本の最先端技術の塊が新幹線と言えるようです。

2015年春のダイヤ改正では、東海道新幹線の最高速度が23年ぶりに270Kmから285Kmに上がるそうです。

驚かれる方も多いかと思いますが、山陽新幹線は300Km、東北新幹線は320Km。カーブの多い東海道新幹線では、直線でスピードを上げてもすぐにカーブで減速する必要があり、スピードを抑えないと乗り心地が悪くなるマイナス面が大きかったようです。

しかし、車体傾斜システムの開発などでカーブをうまく回れるようになり、1992年のアルミ車体を駆使した「のぞみ」が達成した270Kmを23年ぶりに上回り最高速度が285Kmになるとのことです。

ただし、東京―新大阪間の最短時間は2、3分縮まる程度とのこと。新たな50年に向けた新幹線の技術開発はさらに加速されることでしょう。

日本発インフラ技術として輸出に成功する鍵は?

環境問題に配慮した高速、大量輸送手段として、高速鉄道は世界でも注目されています。日本以外でもイタリア、フランス、ドイツ、スペイン、中国、韓国、台湾などで高速鉄道が運行中であるのに加え、米国、ブラジル、アルゼンチン、英国、ロシア、インド、タイ、インドネシア、マレーシアなどでも計画が進んでいるようです。

安倍政権も日本が誇るインフラ技術の1つとして新幹線技術輸出に力を入れており、今年5月に就任し8月末に来日したインドのモディ首相に対してトップセールスを行ったとの報道が流れていました。

日本にとっては2007年に開通した台湾新幹線以来の新幹線輸出のまたとない案件となり、関係企業の期待も大きいようです。

しかし、日本でこれほど成功している“新幹線ビジネス”がなぜ世界に通用しないのか。いくつか考えられる点としては、携帯電話の世界で言われ一般化しているガラパゴス化ではないでしょうか。

成功体験が先にあり、グローバル化に乗り遅れてしまう懸念。そして、製造業を中心とする日本企業に根深い文化である“良いモノを作れば、(割高であっても)どこでも売れる”神話、この点が新幹線ビジネスにもあるような気がします

日本の新幹線技術の強みは、車体などのハード技術に加え、開業以来1人も死者を出していない安全運行など、付加価値性の高いソフト(運用)面も含めた、システム全般で実績を誇示できることにあるのではないでしょうか。

あとは計画を持っているそれぞれの地域の技術水準、地形、文化などを事前に調査し基本的なSHINKANSEN技術を現地向けにカスタマイズするマーケティングに基づいたビジネス戦略が必要になっているのではないでしょうか。

9月24日の日本経済新聞にベルリンで開催された世界最大規模の鉄道見本市「イノトランス」でのJR東日本冨田社長のコメントとして「世界のあらゆる企業から優れた技術を積極的に取り入れていく」と、閉鎖的な日本市場の開放に向けた取り組みと、海外市場への積極的な参入意欲を見せたと報道しています。

日本の多くの企業のなかにみられることですが、日本市場での長きにわたる受け身の情報発信から抜け出せず、グローバル化の流れのなかでの情報発信合戦に出遅れたと嘆いている広報担当者の声を耳にします。

グローバル市場で必要なことは、受け身ではなく多様なステークホルダーに対してリレーションシップ・マネジメントを行う、広報を抱合したパブリック・リレーションズ(PR)が必要です。

今からでも遅くありません。まずは、日本発の優れた技術、良いサービスを企業トップ自らが世界に向けて、積極的にStory telling(ストーリテリング)することからはじめたらどうでしょうか。

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