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2014.09.11

「2014年版世界競争力報告」から〜日本は総合順位を前年より3つ上げて6位に

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

世界経済フォーラム(World Economic Forum)がこのほど発表した144の国・地域を対象に行った調査「2014年版世界競争力報告」(9月3日)によると、日本は総合順位を前年の9位から3つ上げて6位となったとのこと。

世界経済フォーラムは、ビジネス、政治、アカデミアや、その他の社会におけるリーダーたちとの連携を通して、世界、地域、産業分野における課題を設定し、世界情勢の改善に取り組む独立した国際機関で、スイスのジュネーブに本部を置いています。

同フォーラムの活動として、スイスのダボスで開催される年次総会がよく知られています。この総会は、約2500名の選ばれた知識人やジャーナリスト、多国籍企業経営者や国際的な政治指導者などのトップリーダーが一堂に会し、健康や環境などを含めた世界が直面する重大な問題について議論する場を提供しています。

日本のランクアップは「アベノミクス」効果が反映

「2014年版世界競争力報告」のランキングは世界144の国・地域について、社会基盤、教育水準、マクロ経済環境、市場の効率性などを数値化して比較するものです。

日本は世界競争力において経済成長が右肩上がりであった80年代後半から90年代前半にかけて1位だったこともありますが、評価基準が現行のものになった05年以降では、2010年と今回の6位が最高だそうです。

日本が今回、ランクアップした要因については、企業の活発な研究開発投資、鉄道網の発達、顧客重視の文化などが高い評価を得たほか、知的財産権の保護などでポイントが前年の11位から7位、「監査の力と報告基準」が25位から11位に上がるなど安倍政権の安定した政権運営がプラス材料になっているようです。

かつて日本は長年、首相の交代が頻繁で政策が不安定であることが懸念材料とされてきました。現在では日本がビジネス環境や技術革新の分野で高い競争力を保っている一方で、調査項目の1つである「政府債務」では、データが存在する143ヵ国・地域の中で最下位となり新たな懸念材料が浮かび上がってきました。

「政府債務」とは、国が抱える債務の総額。国債・政府短期証券の発行残高と、国の借入金の合計額で、GDPや国の収入と比較して深刻度の目安となる数値です。財務省が公表する日本の政府債務は、平成25年(2013)12月末現在で約1018兆円。名目GDPの約2.13倍に相当するといわれます。

この「政府債務」の問題が改善されない限り、さらなる上位へのランクアップは難しいようです。

世界1位は6年連続でスイス。

首位はスイスで2位シンガポール、3位は米国という結果になっています。これに4位がフィンランド、5位がドイツ、そして6位が日本という結果でした。

近隣国では韓国26位(前年25位)で中国28位(同29位)と前年よりそれぞれランクを1つ上げています。ロシアが53位、南アフリカが56位、ブラジルが57位、そしてインドが71位となっています。

世界経済フォーラムでは、国際競争力を「国家の生産力レベル」と定義しており、生産力向上には国の科学技術開発力が欠かせません。その科学技術開発力の水準を示す指標のひとつに、政府や民間企業が投入する研究開発費の総支出や研究員数があります。

文部科学省が発表した「科学技術要覧(2013年版)」に掲載されている「世界主要国の研究開発費の比較(2011年IMF為替レート換算)」によると、日本の開発費は17兆4000億円に達しており、米国(33兆1000億円)次いで2位。これに中国、ドイツ、フランスが続いています。

研究者の総数は、米国、中国に次いで日本は3位。しかし、人口1万人当たりの研究者数では、日本が66.2人でトップとなっています。2位は韓国の58.0人で、米国、英国、ドイツと続きます。

世界第一級といわれる製品には、日本企業が提供する部品によって成立している製品が多く見られます。例えばアップルのi-Phone。組立は中国で行なっているものの、液晶を含めた主要パーツの50%以上が日本製。また、携帯電話に必須の部品とされるセラミックコンデンサーは、村田製作所をはじめTDK、太陽誘電など日本企業が世界の80%のシェアを占めているといわれます。

自動車部品でも電動可倒式リモコンドアミラーなどに組み込まれる小型モーターの90%は、マブチモーター製。鉄に比べて強度は10倍、重量は4分の1という炭素繊維は、東レ、帝人、三菱レイヨンの3社が世界生産の70%を占めているとのことです。

このように日本の産業は、多様な分野で極めて高レベルの技術力をもちながらも国際的に日本は「技術で勝利するも、ビジネスで負ける」というレッテルが張られているようです。

世界競争力でも研究開発の分野においても優位にあるわが国が、「科学技術立国」として世界を凌駕していくためには、技術力を生かすマネジメントとともにグローバルビジネスのインフラともいうべきパブリック・リレーションズ(PR)の導入が不可欠なのではないでしょうか。

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