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2014.05.29

「ゴジラ」実現にかけた坂野義光さんの思い〜誕生60年、日米でリメーク版公開

皆さんこんにちは、井之上 喬です。

戦争と核の恐怖を背景に「ゴジラ」がスクリーンに登場して60年。今年リメーク版(3D)がハリウッドで完成し、5月16日に日本を除く全世界で公開されました。初日興行収入が3850万ドルに達し、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の3690万ドルを上回り、2014年の初日興行成績の最高に記録を塗り替えたとのことです。

アイアンマン、ソー、ハルク、キャプテン・アメリカなど世界を沸かせたスーパーヒーローたちが共演した『アベンジャーズ』の続編となる『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』よりもゴジラの人気や迫力が勝っていたようです。

『ドラえもん』に次ぐ『ゴジラ』人気

封切約一週間の5月25日時点での興行収入は1億4877万ドル。全世界では3億1537万ドルに上り、世界中に大きな話題を振りまいています。製作費も当初の80億円を大幅に上回り160億円という大規模の映画になりました。

日本でも7月25日に公開される予定。日本でのリメイク版公開を記念して、ゴジラの原点とういうべき第一作のデジタルリマスター版を6月7日から全国の劇場で上映するほどの張り切りようです。

1998年に米国で公開された『GODZILLA(ゴジラ)』は、いざ公開されるとその姿はエイリアンとティラノサウルスを掛け合わせたようなビジュアルで、これまでの日本版ゴジラにはほど遠く、世界中のゴジラファンの怒りを買い、さんざんな酷評を受ける結果となったようです。

今回、ハリウッドによるリベンジともとれる異例の再リメイク版では、ストーリーはともかくゴジラがどのようなビジュアルとなって登場するのかが大きな見どころとなっています。

これまで日本でゴジラは、1954年から2004年の間に28作品製作され、キングギドラやモスラなど数々の怪獣を登場させています。国内の観客動員数は累計9975万人で、邦画のシリーズ物では『ドラえもん』に次ぐ興行実績を残しているとのこと。

たしか私がまだ小学生の頃、兄たちと一緒に地元の映画館へゴジラを観に行った記憶があります。水爆実験で目覚め、安住の地を追われ日本に出現したゴジラが、東京の街を破壊し尽す映像を思いだします。

坂野さんなしでは実現しなかった作品

日本人にとって嬉しいことは、今回のハリウッド版新ゴジラ製作に『ゴジラ対ヘドラ(1971年)』を監督し、環境問題にいち早く警鐘を鳴らした坂野義光さんがエグゼクティブプロデューサーとして名を連ねていることです。

映画を製作したハリウッドの「レジェンダリー・ピクチャーズ」は10年間で「ダークナイトシリーズ」や「インセプション」など30本を超える映画を製作する全米の急成長企業。

坂野さんは若い東宝時代、海外でも人気の高い『蜘蛛巣城』『どん底』『隠し砦の三悪人』などの黒澤明映画で助監督をつとめた日本映画界の重鎮ですが、2004年に東宝から「ゴジラ」の映画化権を取得した後、レジェンダリーのトーマス・タル会長と協力してこのプロジェクトを実現させました。偶然タル会長が幼年時代に坂野監督の『ゴジラ対ヘドラ』を観て深い感銘を受けたことから話が進んだといいます。

また、渡辺謙さんも出演日本発のオリジナルゴジラの映画化を盛り上げています。先日の朝日新聞(5/25朝刊)では、『ゴジラ』(1954年)第一作で主演を務め、その後も多くのゴジラ映画に顔を出している俳優の宝田明さんが往時を語っていたのが新作に期待を持たせています。

坂野さんは公開に先立って今月8日、ハリウッドで催された米国版ゴジラの試写会「ワールドプレミア」に招かれたそうです。映画では原発事故シーンも描かれていて、まだ30代のイギリス人の気鋭ギャレス・エドワーズ監督の「人間はコントロールできないものを扱うべきじゃない」とのコメントに強い共感を持ったとのことでした。

現在、東電福島第一原発事故が引き越した汚染水漏れで第2の「ヘドラ」が登場する「ヘドラ対ミドラ」という「ゴジラ対ヘドラ」の続編を企画中です。

実は、坂野さんと私は25年来の友人です。四半世紀前の話になりますが、オーストラリアに住むやはり私の友人ジル・ジャーマン(故人)から『源氏物語』の国際合作映画を製作する企画を聞き、大変興味を持ちました。

映画の内容は、11世紀と現代をパラレルで進行させるという極めて独創的な内容。ジャーマン氏の急逝で企画はまだ実現していませんが、日本での製作責任者になっていただいたのが坂野義光さんでした。

また、ある企業の創業10周年を記念した短編映画製作プロジェクト(シナリオ、監督、俳優を公募し、5作品を製作)では、まとめ役を引き受けていただくなど、私に映画の世界を垣間見させてくれたひとです。

こうした坂野さんとの関わりもあり、7月25日の日本公開を今から楽しみにしています。『源氏物語』の国際合作映画の製作の夢が一歩近づいた感じがします。

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