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2013.09.05

「0.07秒」の記者会見〜できるだけ正確にそして早めの対応が肝

皆さんこんにちは井之上 喬です。

9月になったというのに東京は厳しい残暑が続いています。また、埼玉や千葉、そして昨日は栃木の一部で竜巻の被害が、また西日本や中部地域などでは記録的な大雨の被害が報道されるなど、これまでの日本では考えられないような異常気象が頻発しています。

先週のブログでもお話ししたように、地球は深刻な病いを抱えているとしか言いようがありません。人間の考えが及ばない自然の領域ですがとても心配です。

なぜイプシロンの打ち上げが中止になったか?

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、8月27日に鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げ予定だった新型の固体燃料ロケット「イプシロン」は、打ち上げ予定のわずか19秒前に異常を検知し打ち上げを中止しました。

イプシロンとはどんなロケットなのか?毎日新聞社が発行している10歳からのニュース学習誌「月刊Newsがわかる」の9月号を参考にすると、「固体ロケットとしては7年ぶりの打ち上げで、小惑星の探査機「はやぶさ」を運び世界最高と評されたM(ミュー)5の後を継ぐ」

また、「打ち上げも機体もシンプルさが特徴だが、なかなかどうして、新時代を予感させる期待のエースなのだ」と、イプシロンを紹介しています。

イプシロンは、これまでの日本のロケット技術のいいとこ取りをして、開発費用と開発期間の短縮を図った固体燃料ロケットで、開発期間は2006年に引退したM5の7年から3年に短縮されるとともに、打ち上げ費用はM5の75億円からほぼ半分の38億円に削減。

さらに最先端の人工知能を搭載し自己点検機能も搭載し「安くて手軽、パソコン1台で打ち上げ?」と、1955年の糸川英夫博士による日本のロケット開発の歩みの中でも新たなタイプのロケットとしてイプシロンは期待されています。

8月30日のJAXAの記者会見の記事を見ると「イプシロンの打ち上げ中止は0.07秒の遅れが原因」とあったので、素人ながら非常に驚くとともに不思議に思いました。

1回のまばたきに要する時間が0.3秒だそうですから発表された0.07秒がいかに短いかがお分かりになると思います。おそらくそのまま打ち上げていたとしても、順調に進んでいたのではと思われます。

今回の原因はと言えば、どうやら管制室のコンピュータが起動信号を発信、機体側のコンピュータがこれを受けて起動し、センサーを使って機体の姿勢を測り、計算処理しその結果を受けた管制室のコンピュータが発射の可否を自動診断するシステムのプログラムの中に問題があったようです。

本来であれば送信側と受信側で演算遅延とか送信遅延が発生することを加味しなければならないところを、考慮せずにタイマー設定で互いにゼロ秒にしてしまったことが0.07秒の遅れとなり打ち上げ中止となったようです。(書いていても難しいですが)

結果的には一般人には難しいですが、ある意味でヒューマン・エラーだったようです。

記者会見はメッセージ発信に大きな威力を発揮

記者会見の席上でJAXAのスポークスパーソンは、「ずれを見落としていたということか?」と言う記者の質問に、「はっきり言うとそうです。そもそも、ずれがあることに思いが至っていなかったので見つけられなかった。ずれに気付ける人がいなかった」と率直にヒューマン・エラーだったことを認めたようです。

率直に問題を認めたこの対応は、当たり前に見えるかもしれませんが組織ではなかなか難しいことだと思います。

パブリック・リレーションズ(PR)において、情報を内外に伝えるための記者会見は通常ニュースバリューの高い新製品や新技術を多くの記者に発表する場として非常に効果的です。

また今回のJAXAのような緊急で危機管理的な状況の中での記者会見は、記者の関心も高く当然のことながら発表内容には正確性を期した細心の注意が必要になってきます。

当日は新型ロケット「イプシロン」の打ち上げを見ようと、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所周辺には見物客1万5000人を詰めかけていました。子供の夏休みの宿題や絵日記のテーマにと、遠方から現地を訪れた親子づれも少なくなかったようです。

記者会見でのコメントには、こうした人たちに対する配慮はあったのでしょうか。将来、宇宙を目指すことになるかも知れない子供たちが納得できる分かりやすい説明は行われたのでしょうか、気になるところです。
一般的にメディアへの初動対応(メディアへの第一報提供までの時間)は、危機発生後30分以内が勝負といわれています。事故が人命に直結する航空業界では、米国系の会社のように7分で対応できる体制をとっているところもあります。

記者会見はパブリック・リレーションズ(PR)の中のメディア・リレーションズで対応されるものです。
これまで多くの危機管理的な状況での記者会見を経験してきましたが、緊急の際の記者会見の鉄則は、出来るだけ早く、出来るだけ最新のそして正確な情報を企業のトップや担当責任者から真摯に公開することに尽きると思います。

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