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2013.04.01

家族力大賞 ’12〜豊かな地域社会を支える「家族力」

家族力大賞 ’12
こんにちは、井之上喬です。

今日4月1日は、私の会社も含め多くの日本企業にとって新会計年度のスタートとなる日です。また、学生の皆さんにとっても新学期、新入学などの時期と重なり、気の引き締まる想いを感じる人も多いのではないでしょうか。

さて、7回目を数えすっかり恒例となった社会福祉法人の東京都社会福祉協議会(古川貞二郎会長:元内閣官房副長官)主催による「家族力大賞’12」(エッセイ・コンテスト)の贈賞式が3月19日、京王プラザホテル43階「ムーンライト」で催されました。

平成19年度から始まった「家族力大賞」。今回も「家族や地域の『きずな』強めよう」をテーマに身のまわりでおこった体験談を募集しました。多くの心あたたまる応募作品の中から15作品が入賞。

私はこの家族力大賞のコンテストの第1回目から運営委員としてずっと関わってきていることもあり、毎年の贈賞式で作者と出会えるのを心から楽しみにしてきました。「あのエッセイを書いた人がこのひとなんだ」と一人ひとり納得しながら入賞者(時として、同行した登場人物にも会えます)とお話しできるのが最高の楽しみです。今回は、15作品の中から私の心に強く残ったいくつかの作品を紹介します。

息子の意志が繋ぐ命の灯

私が最も感銘を受けた作品、『ドナーとしての息子を見送って』を先ず紹介します。これは、佐々木直子さんの作品で、運営委員会委員長賞を受賞されています。

佐々木さんの息子の実さんは、「明日は休日出勤する」といって夕食卓に向かい、その日、食卓に出された「みる貝」の酢みそ合えを晩酌片手に「美味しい、美味しい」と沢山召し上がった直後のことでした。

突然、息子さんがせき込んでおう吐し、そのうち黙りこくってしまったので佐々木さんはどうして良いのか迷い、救急車を要請しました。

「明日は休日出勤する」といっていた息子のために通勤カバンと靴などをもって、救急車に同乗して郊外の医療センターに向かいました。

「食べた貝が詰まっていて取り切れず窒息酸欠、脳死のような状態で助かる望みはない」と医師からまったく予期していなかった宣告を受けます。佐々木さんは、あまりの突然の出来事にまさかまさかと耳を疑い、みる貝を出した自分を責め、悔い、眩いで倒れそうになります。

そんななか妹さんが、お兄ちゃんがドナーカードをつくっていたことを思いだします。息子が登録したカードを始めてみる佐々木さん。ドナー・コーディネーターの説明を聞き、佐々木さんは腎臓であれば2人の命を助けられるかもしれないと決断して息子さんの腎臓を提供することに同意するのです。

佐々木さんは文末で今度の出来事について、こう締めくくっています。「見知らぬ人から授かった命の灯が喜びと感謝で元気に燃え続ける。かたや、提供した方の遺族も、この広い空の何処かで命を受け継いで元気に暮らしているであろう人の喜びを自分の喜びとし心の支えとして生きる。」

そして、「打算と欺瞞に満ちた現代、ある意味でこれほど純粋なことがあるだろうか。」と。

まったく想像だにしなかった愛息の死を前に、佐々木さんが下した苦渋の決断。まして腎臓の場合は、死後30分以内に摘出しないと使えなくなるので、臨終の悲しみに浸っている余裕すらありません。

こうした出来事を通して佐々木さんは、大病院でもドナー提供は極めてまれだということです。反面、大きな緊急病院でもドナー受け入れ態勢が整っていないことを憂慮しています。

ちょうど1年前の今日が「通夜」だったという佐々木さんは、作品の冒頭に「息子から沢山の事を教わった」と記しています。そして最後に、「早くからドナーカードと献血手帳の束をもっていた息子を誇りに思い、『頑張ろう』と誓う毎日である。」と結んでいます。

写真中央がドナーのご遺族のお母様(佐々木直子さん)と妹の陽子さん。
左は古川貞二郎会長で右が筆者。

コミュニティこそが大家族

ケイコさん(本名:岩田恵子、東京都港区在住の71歳)は、東アジア系留学生のサポートを軸に、子育て支援や街づくりのお手伝いを通して、2007年自らたち上げたNPOで活動しています。

街中の整骨院で、ガーナからやってきた留学生アンポンサ・エフィアさんと知り合います。2006年に20歳で日本にやってきた彼女は、日本看護師国家試験と保健師国家試験に合格(2011年)するための勉強だけでなく、結婚、出産、離婚も経験します。

ケイコさんとエフィアさん母娘(エッシー1歳)とは、バス停や街中での接点が重なり、親しさも深まり、運命的な関わりを実感するようになっていきます。

「みんなのおばぁちゃん」を自認するケイコさんの思いは「血のつながり」はさして重要ではないようです。コミュニティこそが大家族であり、互いが支えあうことこそ「家族力」の原点だといいます。

岩田恵子さんの「コミュニティこそ家族力」(東京都社会福祉協議会会長賞)は、外国人が登場し、この「家族力大賞」の国際化を感じさせる作品でした。

特に私の印象に残った作品を紙面の関係もあり、駆け足で紹介していきます。

夫の転勤で東京に引っ越し、孤立した子育てに陥った母親が、地域の自主保育グループに出会い、自らも子育てグループの活動に参加するようになった合田美江さんの「『自主保育』地域で子育て」(最優秀賞-東京都知事賞)。

自分の家が町会の班長になったことから地域とのつながりを考え、互いが知り合うことで摩擦が無くなることを繊細な観察力で表現している中学生、矢部茜さんの『地域とのつながりとは何か』(優秀賞-東京新聞賞)。

障害を持つ子を里親として育て、後に養子縁組をして、その子がスペシャルオリンピックスに出場した話をまとめた中谷義人さんの「親になるということは」(東京都社会福祉協議会会長賞)。

故郷からの電話で、30年前に離婚で家を出た父の死を知る当時中学生の末娘。いまは大学生と小学生の母でもある彼女が住む東京で、亡くなった父を火葬場で見送ってくれた3人の元職場仲間から父の足跡をたどることで、人と人とのつながりや絆を感じる高橋ライチさんの「離れていても、つながっている」(運営委員会委員長賞)。

紹介した受賞作以外にも、生きていくことの喜びや力強い作品が見られました。そして、私たちがリレーションシップ・マネジメントと呼んでいる家族や地域社会との絆(きずな)を築いていくためのヒントが沢山ありました。

*上の写真の作品集『家族力大賞 ‘12?家族や地域の「きずな」を強めよう』には、15 編の作品が紹介されています。社会福祉法人 東京都社会福祉協議会 東京ボランティア・市民活動センターが発行元です。非売品ですが、20冊程度であればプレゼント可能だそうです。興味をお持ちの方は連絡してみてはいかがでしょうか。

東京都社会福祉協議会
東京ボランティア・市民活動センター
家族力大賞事務局
Tel:03-3235-1171
Fax:03-3235-0050
E-mail: info@kazokuryoku-gp.jp

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