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2012.12.19

ある企業に見る東日本大震災被災地でのCSR活動〜被災地に継続的な支援を

皆さんこんにちは井之上 喬です。

衆議院選挙も終わり、師走も残すところ10日少し。これからクリスマスや仕事納め、そして年末年始と何かと気忙しいですね。年賀状や新しい手帳など、2013年に向けての準備も怠りなく進めたいものです。

今回はある企業のCSR(企業の社会的責任)活動に触れたいと思います。その企業は、フォーチュン誌の最も尊敬される製薬企業ランキングで2011年、2012年とナンバー1にランキングされている、スイスに本社があるノバルティスです。

その日本法人ノバルティス ファーマ株式会社(三谷宏幸社長)は、社員が参加型を中心にさまざまなCSR活動を日本で展開していますが、なかでも東日本大震災で被災した東北地方での幅広い支援活動が注目されています。

今回は福島県浜通りの小・中学校での音楽教育支援活動をご紹介します。なお、東日本大震災による被災地への支援については、同社のホームページを参照ください。

N響メンバーなどによる現地特別演奏

被災地域における小・中学校での音楽教育支援活動は昨年2011年にスタートし、福島県いわき市内の小学校3校で実施されました。

これは震災前の2010年から患者さんとその家族に本格的なクラシックコンサートを楽しんでもらうことを目的にしてNHK交響楽団に委嘱して行われている「ノバルティス クラシック スペシャル」の一環として開催されたものです。

今年も引き続き福島県浜通りの広野町、楢葉町、南相馬市の小・中学校を対象に「ノバルティス クラシック スペシャル in 福島」として11月と12月にかけて実施しています。

私の経営する井之上パブリックリレーションズは、現場でのメディアの方々の対応を中心にこのCSR活動をPRの立場からサポートしていますが、現地に出向いた社員の感想をお伝えします。

今年もN響主席チェロリストの木越 洋(きごし・よう)氏が率いるハープと弦楽合奏7名のアンサンブルユニットが演奏。

児童・生徒さんの目の前で「エルガーの愛のあいさつ」などクラシックの名曲や、「川の流れのように」、「いい日旅立ち」など馴染みのある歌謡曲の演奏に加え、各校の校歌の演奏や合唱も織り込み、会場の体育館は約1時間室内楽の優しい音色に包まれた、非常に暖かい雰囲気だったようです。
取材した地元のメディアも記事の中で「被災地を思う優しい音色が会場を包んだ」(福島民友12月12日)と表現しています。

今年は事故を起こした福島第1原発を挟む南と北の小・中学校で12月10日と11日に開催しましたが、10日の会場であるいわき市から次の日の南相馬市まで移動するのに原発周辺を迂回しなければならず、雪の影響もあり移動には4時間以上かかったようです。

第1原発北側では最も近い学校で

12月11日にコンサートが開催された南相馬市立大甕小は、福島第1原発の北側では最も原発に近い場所で教育活動を行っている学校だそうです。

この大甕(おおみか)小を訪れた弊社社員は、校庭にある震災で亡くなった児童へのメッセージを刻んだ石碑、台座を残して壊れたままの銅像、そしてLED表示が故障したまま設置されている校庭の放射線測定器(写真)に大きな衝撃を受けたようです。

今回の衆議院選挙の争点からも疎外された被災地。やわらかい雰囲気に包まれたコンサートからの帰路、震災から2年が経とうとしているのに被災地の復興は一向に進んでいないことに強い義憤を感じたといいます。

被災地では日ごとに支援の手が少なくなっているようで、復興には政府は言うまでもなく多くの企業やボランティアなど日本中からの支援が必要だと強く感じたようです。

ノバルティスの企業目的は「人々の命と健康に貢献すること」。同社のCSR活動を見ると事業を通して社会に貢献する、というCSR活動の本来の目的に沿った形で展開できている良い例だと評価できます。
コーポレートPRの中でもCSR活動はますます重要になってきています。

特に今後グローバル化が企業継続の大きなテーマになっている日本企業にとっては、より重要な経営課題になっていると思います。

事業に根付いたCSR活動の継続実行と共に、そうした活動をきちんと情報発信していくことは不可欠なことです。

そのためにはパブリック・リレーションズ(PR)の役割がこれまで以上に求められます。

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井之上喬著「パブリックリレーションズ」(2006年3月、日本評論社刊)は、おかげさまで2012年5月30日付で第6刷が発刊されました。ご愛読ありがとうございます。
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