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2012.01.09

今年は美術展の当たり年 〜中国からも門外不出の至宝が日本へ

こんにちは、井之上 喬です。
皆さんはどのような新年を過ごされましたか?

私は、東京の自宅で映画を見たり好きな本を読んだり、のんびりした正月を過ごしました。

また新年7日には久しぶりに「七草粥」をいただきました。皆さんもご存じのとおり、「せり」、「なずな」、「ごぎょう」、「はこべ」、「すずな」、「すずしろ」、そして「ほとけのざ」といった春の七草を使ったおかゆが七草粥。飽食のあとのおかゆは胃袋を休めるのにも格好の食べ物といえます。

日本で七草粥の習慣が始まったのは古く、平安時代の文献にその記録が残っているといわれます。もともとは中国で無病息災を祈る行事だったようですが、実は現代の栄養学的に見ても大変健康によい食事だそうです。あっさりさっぱりの七草粥からは、お節料理とは違った新鮮な季節感を味わうことができます。

さて、2012年は美術展の当たり年のようです。昨年末の日経MJのコラム欄「オトナ行動学」(12/23)で「専門家によれば12年は美術展の10年に1度の当たり年」と紹介されていました。

「10年に1度の当たり年」となったのは、昨年の大震災の影響で延期になった企画が復活したことも一因となっているようです。それにしても日本に居ながらにフェルメールやセザンヌ、レンブラント、ルーベンスらの作品が見られるのは嬉しいことです。

中華文明の粋を凝縮

年頭を飾るのが日中国交正常化40周年と東京国立博物館140周年を重ねた特別展「北京故宮博物院200選」(東京国立博物館・平成館:1/2-2/19)。

故宮とは主に中華文明の美術品や装飾品、資料などを収蔵・展示する博物館のことをいい、北京の故宮博物院には約180万点のコレクションが収蔵されています。この特別展は、それらの貴重な文物から約半数が国宝級といわれる選りすぐりの名宝200点が出品。

圧巻は中国・北宋時代(960-1127年)の絵巻で、神品と讃えられこれまで中国国外で公開されたことのない門外不出の『清明上河図』(せいめいじょうかず)。

全長約5メートル、縦24センチの画面のなかに郊外の川べりの風景や荷を満載した船、街道、大小の店、行き交う馬やかごなどが墨と淡彩で描かれ、その様は中国の風俗画の最高峰といわれています。なお、『清明上河図』の公開は1月24日迄です。

昨年12月、私の経営する会社(株式会社井之上パブリックリレーションズ)の中国事業支援室が、中国セミナー「中国最新メディア事情」を開催しました。その際に講師として招いた朝日新聞国際編集部次長の野嶋剛さんの著書に『ふたつの故宮博物院』(新潮社2011)があります。

「故宮は不思議な博物館である。まったく同じ名前の博物館が、中国(北京)と台湾(台北)にそれぞれ存在している。」と野嶋さんは著書の冒頭で語っています。

故宮の収蔵品の一部(約70万点)を台湾に移送することを決定したのは、当時の中華民国総統であった蒋介石でした。毛沢東率いる中国共産党に敗れ、中国大陸を追われた総統は、1949年に収蔵品とともに台湾(国立故宮博物院)へ逃れたのです。

同書では、戦争と政治に引き裂かれた「故宮」の運命をたどり、日本展の実現に執念を燃やした司馬遼太郎や平山郁夫のエピソードなど水面下の動きを紹介しています。

同書に綴られたふたつの故宮の歴史的秘話に触れることで、「北京故宮博物院200選」がさらに味わい深いものになるのではないでしょうか。

本命はフェルメールか?

それでは故宮展以外の「10年に1度の当たり年」における主な美術展をいささか僭越ながら私の独断と偏見でいくつか紹介します。

●「ボストン美術館―日本美術の至宝」(東京国立博物館:3/20-6/10)
日本にあれば当然、国宝指定を受けるべき『平治物語絵巻』など歴史的名作に加え、長谷川等伯、尾形光琳といった日本美術の秀作約90点を展示。

●「セザンヌ―パリとプロヴァンス」展(国立新美術館:3/28-6/11)
この作品展には、「近代絵画の父」と呼ばれるセザンヌの画業を、彼が作品を残したパリとプロヴァンスとを対比し、芸術的創造の軌跡を捉えようという試みが見られます。

●「マウリッツハイス美術展」(東京都美術館:6/30-9/17)
オランダのマウリッツハイス美術館からフェルメール(2点)をはじめレンブラント(6点)やルーベンスなど17世紀に黄金時代を迎えたオランダとフランドル絵画の名作約50点を公開。なかでも青いターバンを巻いた少女の何か訴えるような表情を描いた『真珠の耳飾りの少女』は、いまから大きな話題となっています。

写真

昨年、東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催されたシュテーデル美術館収蔵「フェルメール『地理学者』とオランダ・フランドル絵画展」へ行き、彼の作品『地理学者』や『牛乳を注ぐ女』を見て感動したことを憶えています。この夏は、『真珠の耳飾りの少女』に私も会いに行こうと思っています。

●「出雲大社大遷宮特別展「出雲―聖地の至宝」(東京国立博物館:10/10-11/25)
また、今年は出雲ゆかりの神話が記された『古事記』が編纂されて1300年の節目の年。そして、来年は出雲大社正遷宮の年にあたります。こうしたタイミングで催される「出雲大社大遷宮特別展にも興味津々。是非出向きたいと思います。

そのほかに「大英博物館―古代エジプト展」(東京・森アーツセンターギャラリー:7/7-9/17)、「リヒテンシュタイン華麗なる侯爵家の秘宝」(東京・国立新美術館:10/3-12/23)、「ベルリン国立美術館展―学べるヨーロッパ美術の400年」(国立西洋美術館:6/13-9/17)などが楽しみです。
元来、日本で開かれる美術展の集客力には定評があるようです。英国の美術専門紙「The Art Newspaper」が毎年発表している、世界の美術展の入場者数ランキング(1日あたり)では、日本国内で開催された美術展はベスト10の常連となっています。

ちなみに2009年特別展のランキングでは、「国宝 阿修羅展」(15,960人/1日)を筆頭に、「正倉院展」、「皇室の名宝」、「ルーヴル美術展」と上位4位までを日本の美術展が独占した実績があります。

こうした世界的な美術品や文化遺産に接して知識を広げていくことは、グローバル・ビジネスに関わるビジネス・パーソンやパブリック・リレーションズ(PR)の実務家にとって大切なことです。

私もできるだけ時間を見つけて歴史的な出会いをするために、これらの美術館へ足を運ぼうと思っています。

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