トレンド

2007.11.03

社会貢献活動を支える熱い思いと使命感〜DEVNET賞贈呈式から

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

私が理事を務める国連開発計画NPO法人日本DEVNET協会(JDA:以下DEVNET)は、国際機関DEVNET ASSOCIATION(本部:ローマ)の一員。同協会は2005年度より「DEVNET賞」を設け、各年度に国際活動の場で著しく貢献した個人や組織の功績を称え顕彰しています。先日、その贈呈式と祝賀パーティが開催されました。

情報交流ネットワークで問題解決

同協会は、会長を務められる片方善治さんが2004年より活動を開始。今年7月、内閣府からNPO法人として認可を受け、技術開発交流と女性活動支援を軸に様々な活動を展開しています。

設立の由来は、1986年。ガリ元国連事務総長らがDEVNET ASSOCIATION をローマに設立。DEVNETとは、Development-Networkを縮めた言葉。そこには情報交流ネットワークを活用し世界が抱える問題解決に貢献しようとの思いが秘められています。現在の参加国は100カ国。約50万社の中小企業が参画。

石田晴久(東京大学名誉教授、工学博士)さんが選考委員長を務める「DEVNET賞」には2つのカテゴリーがあります。技術開発とその支援・普及の業績を称えるTIPS(Technological Information Promotion System:情報支援システム)賞と女性の企業活動や社会活動とその支援・普及の業績を顕彰するWINNER(Women into the New Network for Entrepreneurial Reinforcement:女性起業家支援ネットワーク)賞です。

現地への熱い思いと使命感

2007年度TIPS賞は、山梨日立建機の雨宮清さんが受賞。同社の社長でもある雨宮さんは1994年のカンボジア視察中、現地で地雷被害を受けた母子の悲惨な姿に遭遇し、対人地雷除去機の開発を決心。建設機械をベースに安全な地雷除去機の研究に没頭。ロータリーカッタ式の地雷除去機の開発に成功しました。99年カンボジアで試作機の稼動テストを行い、現地地雷処理機関で絶大な評価を受けました。

雨宮さんは平和な豊かな大地を取り戻すことで人々の自立、自活が達成されると考え、同機械を耕作機としても利用できるよう改良。これまで同機械はカンボジアを始め、アフガニスタン、タイ、ベトナムなどで使用され、現在52台の除去機がこれらの地域で稼動中です。

更に現地で教育訓練や農地開発などの活動と連携。地雷原から耕作地への転換を実現しました。現在ニカラグアでは跡地にオレンジやコーヒーが栽培され、カンボジアでは学校が設立され、現地の人々の生活を支えています。

そして今年度のWINNER賞は社団法人産業関係研究所の川本貴美枝さんへ贈られました。川本さんは、国際平和基金団体でアフリカにおける砂漠化防止や食料安定供給のための植林事業、井戸掘削業に従事。また現在、モンゴルでの救援プロジェクトの一環として貧困にあえぐ子供のための「大地の家」建設などを積極的に推進。長期的に現地で孤児の教育活動を行う女性指導者と共に奉仕活動を展開しています。

川本さんの話の中でとても感動的だったことは、何年か前の冬、モンゴルで大寒波のために200万頭に及ぶ家畜が死亡したとき、首都ウランバートルの街のマンホールや警察の留置所にはホームレスの孤児であふれかえっていたそうです。そんな逆境のなかでも子供達の輝く目を見たときに「この子達を何とかしたい。彼らの住む家を作ってあげたい」との思いが彼女の心を揺さぶったといいます。それ以来この「大地の家」の建設活動に奔走しています。

これら2つの活動に共通するのは、現地の人々の視点に立った活動を真摯にそして継続的に行なっているという点です。援助や奉仕活動には様々な難問や困難に立ち向かう粘り強さが要求されます。お二人の受賞のスピーチからは、現地の子供たちや人々を救いたいとの強い思いが使命感となり、多くの難関を乗り越えるエネルギーとなったことを感じとることができました。そして何かを成し遂げた人には、それぞれの動機が志となって困難にも打ち勝つ原動力となっているようです。

大学の授業でも感じることですが、最近NPOやNGOでの国際活動を志望する若者が増えてきたように思います。しかし今回受賞した市民レベルでの支援活動は一般にはあまり知られていません。継続的に成果を収めるには、日本国内や現地だけでなく、世界に活動状況をリアルタイムで発信し、認知度を高めるパブリック・リレーションズの活動が非常に重要となります。

このような賞を通して、貢献度の高い活動に対する認知度が向上し、世界へ貢献したいと考える、高い志と使命感を持つ人々が一人でも多く輩出されることを願っています。

書籍

注目のキーワード
                 
カテゴリ
最新記事
アーカイブ
Links

ページ上部へ