パブリック・リレーションズ
2006.08.11
この国の新しいかたち〜パブリック・リレーションズでもう一度日本を輝かそう第1回「国家のグランド・デザイン」とは
こんにちは、井之上喬です。
皆さん、お盆のシーズンをいかがお過ごしですか。
1945年8月15日に日本が第二次世界大戦の終戦を迎えてから、61年の年月が流れました。
国民が「復興と発展」という明確な目標へ心をひとつにして戦後の荒廃から立ち上がり、西欧先進国を手本に近代工業化社会を実現し、80年初頭には世界の頂点に立った日本。その頃の日本は、確かにある種の輝きを放っていました。
今年でバブル経済崩壊から15年。この10月には57ヶ月にわたる「いざなぎ景気」の記録を超え、2002年2月から始まった景気の拡大は戦後最長記録を更新することになりそうです。
輝きを失った日本
しかし現在の日本を見ていると、街を歩いている人々の目には輝きがなく、日本全体に喪失感にも似た虚脱感が漂っているように感じられます。
なぜなのでしょうか。
戦後、物質的な豊かさをベースにした経済発展を推し進めてきた日本は、経済大国として先進国を凌駕する存在になりました。そのことは同時に経済至上主義を国家目標に掲げてきた日本にとって次に達成すべき目標を失ったことを意味していました。
そしてその発展の中で日本は、個人や社会における真の強さや幸福をもたらす精神性を養うことを怠ってきました。
国民はその時、再び共有できる新しい目標を渇望していました。しかし社会システムの中に、個人や社会のバックボーンとなる倫理観や冷静に自己を見つめる客観性を育んでこなかったため、新しい目標の創出ができないまま迷走状態に陥ってしまったのです。
バブル崩壊後93年に誕生した細川政権以来、実に6つの政権が新しい時代に対応したシステムの構築に向けて取り組んできました。2001年に誕生した小泉政権においては、公共事業削減や不良債権処理など、ある意味これまで野党が掲げてきた政策を積極的に取り入れ、日本の構造改革を推し進めてきました。しかし今なお、これらの模索から統合的で明確な国家の在り方が描かれるまでに至っていません。
そこで当ブログでは新しいシリーズとして、「この国の新しいかたち」と題し、パブリック・リレーションズの視点を通して政治、経済、社会など各方面から日本の現状を俯瞰し、日本の行く末を考察していきたいと思います。
第一回目は「国家のグランド・デザイン」について考えます。
過去現在を認識して未来を描く
グランド・デザインとは、全体を長期的、創造的に見渡した構想を意味し、国家の行く末を示す全体像です。
国家のグランド・デザインを描くための前提条件は何でしょうか。私はグローバルな視点で現在の日本をとりまく状況を見据えたとき、まず過去の歴史認識を明確に持ち、現状をよく知ることだと考えています。
また国内では国を運営する側を情報発信者として捉えれば、そのパブリックは納税者・有権者である国民と彼らが帰属する組織体です。国民一人ひとりの人生を抱合する要素を多角的な視点で抽出し、国家経営上重要と思われる分野を明確にします。そして分野ごとに情報発信者とそれを取り巻くパブリックを特定し、両者の間に良好な双方向のコミュニケーション環境を創り出していくのです。
一方、国外に目を向けた場合、パブリックは外国の政府機関、国民、組織体などで、日本にとって重要と思われる分野を明確にし、同様に分野ごとの情報発信者とパブリックの特定を行い、良好な双方向コミュニケーション環境を創出していきます。
国家のグランド・デザインを考える上で必要な要素は、経済はもとより、農業、労働・雇用、安全保障、文化・社会、教育など、いわば国民一人ひとりの生活に関わりをもっているもので、その分野は多岐にわたります。従って、ある特定の分野での問題解決に偏っていては、国民全体が広く幸福を追求できる機会をもたらす社会の実現は困難であるといえます。
多角的な複数の視点を持ち、それらを同時並行で総合的にプランニングを行うことが国家のグランド・デザインを考え実施する上では極めて重要になります。
日本には、財政赤字、雇用、少子・高齢化問題、不安定なアジア外交、地球温暖化など、一筋縄では解決できない内外の問題が山積しています。しかし、各分野における優れた戦略を統合的に機能させることができれば、これらの問題への解決策を見い出し、活力ある揺るぎない国家として日本を再生させることは可能だと思うのです。
そのためには自立した個を確立し、高い倫理観と覚醒された人間性に基づいたリーダーの養成は喫急の課題となります。
少し先になりますが、回を分け、パブリック・リレーションズの視点を通して、もう一度日本を輝かすためにはどの分野でどのような取り組みが必要とされるのかに焦点を絞ってお話をしたいと思います。