パブリック・リレーションズ

2006.03.17

実務家に求められる10の能力3.文章力を伴ったコミュニケーション技術

こんにちは、井之上喬です。
皆さん、いかがお過ごしですか。

良い文章に出会ったとき、私たちは心を動かされます。聖書や名著に不思議な力があるように、名文は私たちの内面に変化をもたらす何かをもっています。同じ内容の文章も書き方によって相手に与えるインパクトは大きく異なってきます。愛の手紙やお世話になった人へのお礼の手紙などを書き記すとき、自分の気持ちを伝える言葉を持つことは、そのひとの人生をより豊かにしてくれます。

これまで、実務家に必要とされる10の資質や能力として「統合力」 「判断力」を紹介しましたが、今回は、「文章力を伴ったコミュニケーション技術」と題して、読み手をひきつける文章を書くポイントをお話したいと思います。

広報担当者やパブリック・リレーションズの実務家は、様々なリレーションズを通して戦略的に設定された目標や目的を達成していく仕事です。具体的に行動する上で企画書やプレス・リリースの作成など、文章を書くことが要求される場面が数多くあります。したがってプロフェッショナルとして質が高くかつ説得力のある文章は、相手の理解と共感を得るのに有効です。

読み手をひきつける文章とは、伝えたいメッセージがわかりやすく表現され、読み手をひきこむスパイスがちりばめられている文章です。ここで一番大切なのは読み手の視点です。

まず最初に、文章を書く目的と用途つまり「読み手は誰」で「いつ」「どんな状態で使用するのか」を明確にします。

目的や用途が明確になったら資料や素材を準備し、流れを考え、実際に文章を書く作業に入ります。

準備段階では5W1Hなどの事実情報を集め、伝えたいメッセージなど盛り込みたい項目を整理します。ここでのポイントは、伝えたいメッセージを明確にし、それを支える正確な事実情報を網羅していくことです。

読み手の思考にあわせた「流れ」で魅せる工夫

次に文章の構成や流れを組み立てていきます。
一般的に用いられているのは「起承転結」の流れです。「起」で問題を提起し、「承」で起を受けて話を広げ、「転」で別の分野に話を転じ、「結」で結論や解決策を示します。たとえば、「(起)A社に対し新しいPRプログラムのプレゼンテーションを行った。(承)当初は予算面で難色を示したが(転)質の高いプログラムが評価されて(結)提示したフィーでの受注に成功した。」のような短い文章も「起承転結」で構成することが可能です。また、問題解決策を提示する文章やクライアントへの報告書などには、結論を最初に示すことも読み手をひきつける有効な方法です。

そのほか文章構成には、先週「判断力」で紹介した「演繹法」にみられる大前提から小前提を導き結論づける三段論法や共通項でグループ化し、グループ内の類似性から結論を導く「帰納法」などもあります。

文章の流れを組み立てる作業には、読み手の思考に合わせて話を展開(相手の視点)していくと共に、読み手を飽きさせないスパイスやハイライトを各所に配置することにより双方向性コミュニケーションが可能な環境を作り出します。

文章の内容と流れを決めたら、スタイルを選択し各々のルールやマナーに従って書いていきます。

ビジネス文で文体やスタイルを決めるときには、コンピューター画面で見やすい文章と印刷物として読みやすい文章が異なるように、その目的や用途によって使い分けができなければなりません。e-メールでは硬すぎない表現で画面を通して見やすい短めの表現や改行などに気を遣うのに対し、郵便による手紙では、拝啓・敬具などの冒頭や末尾の言葉のルールに沿ってより丁寧な表現で書くことが求められます。

また、プレス・リリースや記者会見でのスピーチ原稿などメディア向けの文章作成に関しては、日本の記者は質の高い文章を求めてくるので、より正確な表記や表現に気を配る必要があります。新聞社が発行する、用語手引書などを利用して正確な表記をチェックすることもひとつの方法です。

プレス・リリースの文体は、「ですます調」「である調」どちらも使用します。アメリカのプレス・リリースは新聞記事スタイルで作成されるので、最近の傾向として外資系企業では「である調」を使用するのが一般的です。一方、日本の企業は通常「ですます調」で作成しているケースが多いですが、このようなスタイルの違いも現場の知識として知っておく必要があるでしょう。

全体を書き終えたら、「構成はどうか」「誤字や脱字はないか」「漢字とひらがなのバランスは適当か」「魅力的な文章になっているか」など細かい点にも気を配りながら納得するまで推敲しましょう。以前に比べ、コンピューターの発達で編集機能が格段にアップしたので、大胆な編集作業が気軽にできるようになりました。その分、本文の作成により神経を使うことができ、短時間で内容のある文章作成が可能となっています。

 

前向きでポジティブな態度がコミュニケーションによる目標達成を加速する

文章はコミュニケーションのツールです。何より効果的に行うには、相手にメッセージを伝えたいという前向きでポジティブな気持ちや態度が大切です。また、そのような相手への想いが、わかりやすい文章を書くための大きな原動力になると思います。

ネット社会の到来で情報がますます氾濫する中、e-メールの急速な普及などにより文字表現によるコミュニケーションは以前よりはるか増えています。人をひきつける文章はコミュニケーションの潤滑油となり、目的達成に大きく貢献する力を発揮します。日々の実践をとおして、自分なりのスタイルを確立していただきたいと思います。その努力は、皆さんの人生に大きな成功をもたらすことになるでしょう。

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