時事問題
2012.12.12
それでも私は投票にいく〜成熟した民主主義国家のためにあなたの一票を
こんにちは井之上 喬です。
野田政権になってから、解散か継続かはっきりしない衆議院がようやく解散となり、選挙戦に突入しました。
周知の通り衆議院は11月16日午後の本会議で解散され、12月4日公示で同16日投開票という日程。
これに先立つ14日、野田首相は自民党安倍総裁との党首討論の中で、衆議院の定数削減を来年の通常国会までに実現することを確約するならば、16日に衆議院を解散してもよいと安倍さんに迫り、野田さんは「近いうちに国民に信を問う」とした約束を果たすことになりました。
安倍さんは党首討論後に、首相提案に協力する姿勢を示したことで政局は一気に衆議院解散の流れとなりました。解散選挙は、2009年7月に当時の麻生太郎政権下で行われて以来。
「ばか正直解散」か「寄り切り解散」
衆議院が解散するたびに「ナントカ解散」と通称がつき話題になります。最も有名なのが1953年の「バカヤロー解散」。
これは衆議院予算委員会で、当時の吉田茂首相と右派社会党の西村栄一議員との質疑応答中、吉田さんが西村さんに対して「バカヤロー」と暴言を吐いたことがきっかけとなって衆議院が解散されたためといわれています。
「バカヤロー」と書くと大声を出したような印象を与えますが、映像資料には吉田さんが席に着きつつ小さな声で「ばかやろう」とつぶやいた様子しか確認できないようです。
そのつぶやきを偶然マイクが拾い、気づいた西村さんが聞き咎めたために騒ぎが大きくなったというのがどうも真相のようです。
その他にも中曽根政権下の「死んだふり解散」(1986年)、そして小泉政権下の「郵政解散」(2005年)などがよく知られています。今回は、玄葉外相の「ばか正直解散」と公明党山口代表の「寄り切り解散」が挙がっています。
私はどちらかというと、野田さんの小学生時代の通信簿に「正直の上にバカがつく」と書かれ、これを父親から褒められたといったエピソードを背景につけられた玄葉さんの「ばか正直解散」が合っているように思えます。
成熟国家に成長するための道
それにしても、3年前に華々しいマニフェストを掲げて民主党政権が誕生したものの、政権内の乱れや公約の不実行などで民主党は多くの国民に失望を与える結果になりました。
鳩山首相に始まり、菅、野田首相と3人の首相が変わり、自民党政権末期の2006年9月から2009年9月までの安倍、福田、麻生の3首相を加えると実に6年で6人の首相が替わるという事態に国民の失望は極限状態に達していると言えます。
政界再編を暗示させるように、今回の選挙は実に12の政党が選挙戦を争うという前代未聞の状態。外には円高や尖閣、竹島問題、内には東日本大震災の復興の遅れや家電メーカーなどの大企業の業績不振と産業空洞化による失業者増大問題など、日本はさまざまな深刻な問題を抱え、国家の統治能力に緊急警報が発せられています。
12の政党が届け出た4日の第46回衆院選公示では、480の議席を1504人もの候補者で争う混戦模様。
選挙後の政権の枠組みをめぐる連立の駆け引きなども混乱の度を深め、国民にはますます理解不能な選挙戦となっています。各政党の公約の差異もあいまいで、何を基準に誰を選んだらよいか、迷うところです。
私の知人の政治ジャーナリストは、これまで解散を13回、衆議院総選挙を14回経験し、そのたびに、この選挙が明日の日本にとっていかに大事かを書き続けてきたといいます。
その彼が、「掛け値なしにこのたび行われる総選挙は重要」で、「だれを、と考える前に、どの政党が中心になって政権を作ってほしいかを考える」ことが大切とアドバイスを寄せています。
しかし国民の中には、期待した政党から何度も裏切られ「投票する政党がない」あるいは「投票しても何も変わらない」と考えている人が多数いることも否定できません。
先日のタクシーの運転手さんがそうでした。その若い運転手さんは、投票日には誰に投票しますか?という私の問いに対して、「投票したいところがないから選挙には行かない」と疲れ切った表情で答えました。「12も政党があって、何処がやってくれるのかわからない」。
そんな運転手さんに1つだけ質問しました。「今何に一番困っていますか?」と彼が抱える最大の問題について聞いたところ、「収入が少なくて生活が成り立たない」と答えてきたのです。
私は彼に、そうであれば「経済を良くすると主張する候補者や政党に投票したら?」、ともかく「投票にだけは必ず行ったほうがいいですよ」と彼に投票を促し下車しました。車を降りるときその運転手さんは、「何とか頑張ります」とあいまいな返答をして去っていきました。
この運転手さんの言葉が暫く私の頭から離れませんでした。政治に期待して「投票しても何も変わらない」。
政治に裏切られた有権者の喪失感が充満する日本。選挙の投票先を決めてない多くの有権者はいまこんな気持ちなのかもしれません。
しかし、私たち国民が選んだ政治家が機能しないからといって、そこで諦めてしまったら元の木阿弥です。ただ組織票を有する政党を利する結果を招きかねません。成熟した民主主義国家に成長していくために通過しなければならない道なのでしょうか。
政党が乱立し、候補者も絞りにくい今回の選挙戦においてこうした若者の選挙離れや浮動票の拡がりが懸念されています。こうした混迷する政情だからこそ、あなたの一票が大事なのです。投票に行く、棄権しないことが大事です。
パブリック・リレーションズ(PR)は、目的達成のためのリレーションシップ・マネジメントです。自らの誤りを正し、外部環境を整えながら新しい目標に向かて、さまざまなステークホルダーと戦略的な関係構築活動を行う仕事です。
また、発信情報を整理して、情報を戦略的に伝える機能も持ち合わせています。選挙キャンペーンといえば広告が主体になっていますが、PR手法をダイナミックに選挙キャンペーンに導入することを政党は真剣に考えるべきではないでしょうか。そのためには常日頃からPRがしっかり実践されていなければければなりません。
7日午後5時過ぎ、宮城県三陸沖を震源とする地震があり東北から関東の広い範囲で震度5弱(M7.3)を観測しました。私にはこの地震が、各政党や候補者が「3・11被災地の復興をどう考えているのか?」を問う天の声にも思えました。
さて、16日の投開票では、国民の判断がどのように下されるのでしょうか。日本の未来のために、少しの希望にかけて私も投票所に足を運ぼうと思います。
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井之上喬著「パブリックリレーションズ」(2006年3月、日本評論社刊)は、おかげさまで2012年5月30日付で第6刷が発刊されました。ご愛読ありがとうございます。
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