時事問題
2011.09.12
「節電の夏」 〜節約は日米共通の生活スタイル?
皆さんお元気ですか、井之上 喬です。
9月11日は、10年前に米国で同時多発テロが起きた日。そして今年3月11日の東日本大震災発生から6ヶ月目です。
政府は9日、東京電力と東北電力管内に発動していた電力使用制限令を全面的に解除しました。
記録的な猛暑が続いたこの夏の電力危機をなんとか回避できたのは、70余日にわたって企業や家庭が節電に努めたことによります。同時に大震災を起因に福島原発事故がもたらした電力危機は、生活スタイルのさまざまな面に影響を与えることになりました。
この電力使用制限令解除にタイミングを合わせるかのようにダイキン工業が、9月8日に「節電の夏を過ごして変わったもの、変わらなかったもの」について意識調査の結果をリリースしています。その発表から節電の夏を過ごした人々の意識や行動の変化を簡単に紹介します。
84.3%と高い節電意識
先ずは「節電意識」についてですが、「今年に限らず、今後も意識して節電したい」の回答は84.3%と高い節電意識が認められました。
この数字から節電が一過性の緊急対策ではなく、日常的に意識すべきものとして定着しつつある傾向が伺えます。
「今夏の節電をきっかけに、夏の避暑対策に対する意識や考えが変わりましたか?」については、全体で41.8%の人が「変わった」と回答。
具体的には、エアコンでの避暑対策を見直し、昔ながらの打ち水やすだれ・よしず、対策グッズの活用など、避暑対策が多様化する傾向が見られました。性別で比較すると「変わった」と回答した男性の34.3%に対し、女性は49.4%と上回っています。
また、「今年の夏、実施したエアコンの節電対策は?」については、「使用を控える」(57.7%)、「扇風機と併用する」(53.4%)「使用時間を短くする」(41.8%)など、エアコンの稼動を減らす傾向が顕著に出ており、エリアでみても、東北・関東エリアはその他エリアよりも高くなっていました。
今年の夏も異常気温でしたが、電力危機にあっても節約精神を発揮し昔ながらの避暑法を取り入れ、工夫しながら自然を生かすなど、何か奇妙な充実感があったように思います。
この調査は、インターネットによるアンケート調査で2011年9月3日と4日の両日、全国20?70歳代の男女624名を対象に実施。詳細を知りたい方は以下のURLにアクセスしてみてください。
http://prw.kyodonews.jp/prwfile/release/M000081/201109089037/_prw_fl1_2501Boif.pdf
大きな問題を解決する小さな発想
米国はあの9・11に続き、アフガン紛争、イラク戦争とテロ掃討を大儀名分に超大な財政支出を行うなかで2008年、大型の金融危機リーマン・ショックに襲われました。
リーマン・ショック以降、消費の冷え込んだ米国で消費者の新たな消費トレンドを解説したマーケティング本、『スペンド・シフト』については8月1日号のこのブログでも紹介していますが、そこで見えるのは日米で共通する節約意識の高まりです。
『スペンド・シフト』では、強力なダブルパンチを受けて夢から醒めた米国の消費者が、借金による消費やモノの過剰と決別して、節約と投資へと向かっていると述べられています。
また、『スペンド・シフト』が伝えようとしている米国の変化について「大きな問題を解決するには小さな発想が求められる」といったキーワードがあります。
つまりこれは、米国の都市(デトロイトなど)の衰退や金融危機、信頼の喪失といった大きな問題の多くは、小さな問題の集まりとして眺めることによって対処への道筋が開けるはずだという考え方によるものです。
この考え方は、例えば地元で買い物することでその利益が還元され、地域の活性化に繋がる。個々の消費者が借金を押さえて倹約に努める姿勢が健全な金融システムを取り戻す道筋となるといったもの。
テロと金融破綻が混乱(カオティクス)を招いた米国と、失われた20年と自然災害により混乱を生じた日本とではその要因は異にするものの、それぞれの経済や社会生活を立ち直らせていくためには、節電とか節約といった小さな発想の積み重ねが大事であることを感じ取ることができます。
こうした小さな発想の積み重ねから生まれる新たな生活スタイルや価値観を広く社会で共有化させていくことも、私たちパブリック・リレーションズ(PR)に携わるものの使命のひとつではないでしょうか。
そして私たちには、リーマン・ショック後の金融問題や福島原発問題、そして世界中を襲っている異常気象など、人類が投げかけられているさまざまな課題をしっかり見据えて行動することがいま問われていると思うのです。