時事問題

2010.10.14

ノーベル賞の光と影 〜政府は若年研究者育成に積極的取組みを

こんにちは井之上 喬です。

先週は明るいニュースが流れました。ノーベル化学賞を2人の日本人が受賞しました。
北海道大学の鈴木 章名誉教授と米国パデュー大学の根岸英一特別教授。これで日本のノーベル賞受賞者は18人となります。

受賞の理由は「パラジウム触媒を活用する有機合成におけるクロスカップリング反応」だそうです。反応しにくい炭素原子同士をレアメタルのパラジウム触媒で結合する技術を確立。

その応用は、エレクトロニクスでは液晶テレビ、また製薬業界では高血圧症や糖尿病性腎症の治療薬などで行われていて、幅広い分野で不可欠で画期的な手法として高い評価を得ているそうです。

日本の若手研究者は外へ出よ

各紙にお二人のインタビュー記事が掲載されていますが、10月8日の日本経済新聞のインタビュー記事で印象に残ったところをご紹介しましょう。

鈴木氏は「後進を指導するとき、重箱の隅をつつく研究はするなと強調している。先人の研究をヒントにしてもいいが、まねはいけない。自分で考えることが大切だ」と、また根岸氏は「日本は化学だけでなく電気や自動車など、理学、理工学を基礎とした産業はまだ世界の一流国だ。」
「だがこのままではいけない。私の研究室でも中国人の学生は意欲的で優秀だ。日本の若手研究者には外国に出て、日本がどういう国か見て欲しい。中から見ただけで自分たちを判断すると研究も甘くなり生産性も落ちる。外に出て苦労、苦難を体験するのも必要だ」と語っています。

これらのメッセージからは、研究者は競争の激しい海外に積極的に出て、独創的な技術を磨き、日本や世界の発展に貢献しなければならないという強い願望が感じられます。

しかしその一方で、同じ日本経済新聞8日付けの社会面には「海外研究派遣 ピークの半分に」とする見出で、日本から海外へ飛躍する日本人研究者の減少を驚きの数字で報じています。

これは文部科学省が、日本の国公私立大学や公的研究機関に所属する研究者を対象に調査・発表したもの。海外に1カ月以上滞在する研究者は2009年度で3739人、実にピークだった2000年度の7674人から半減。また1年以上の滞在となるとわずか373人と全体(2000年度)の4.9%に過ぎず、「内向き志向」が強くなったと懸念しています。

先日TV番組で、ある東大名誉教授が今回の受賞について、「この分野は研究者が多く、日本の他の研究者も受賞者と同等なレベルにあった…」とコメントしていました。

自らの研究成果を多くの人に理解してもらうために、積極的に世界に英語で発信するなど、パブリック・リレーションズ(PR)的な手法を身につけることの重要性を感じます。

教育機関の公的支出、日本は最下位

この9月に経済協力開発機構(OECD)が教育機関への公的支出の国内総生産費(GDP)比に関する調査結果を発表しました。

2007年の幼稚園から大学までの調査では、日本はわずか3.3%。比較可能な主要28カ国中で最下位。
一方で教育費の私費負担割合では日本は33.3%と各国平均の17.4%の約2倍と高い数字を示しています。つまり公的支出の不足を、各家庭が埋め合わせている格好になっています。よく言われていることですが、所得格差が教育格差を生む傾向をデータがはっきり示しています。

民主党政権になってからは、高校の授業料実質無償化や教員増などの政策が実施されており、公的支出は今後増加していくものと考えられていますが、教育に対する日本の取組みはお寒い限りです。
先週、幕張メッセで開催されたコンシューマー・エレクトロニクスの展示会「CEATEC」でのパネルディスカッションでも、こんな発言がパネリストからありました。

「ゆとり教育時代のエンジニアと一生に仕事をする機会が増えてきました。一言で言って円周率3で勉強してきたエンジニアに不安を抱いています。会社でも学校でも、世代を超えて一丸となって新しい教育体制の確立に取組まないと日本は世界に取り残されてしまいます!」。

全く同感です。中国やインドなど巨大な新興国が台頭する中、今こそ崩壊した日本の教育の復興に取り組み、個が強い、人間力のある人材の養成が求められています。
政府の強い指導力が望まれるところです。

 

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